【障害者総合支援法】自立支援給付とは?対象者・申請方法などを分かりやすく解説します!【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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障害者総合支援法が定めるサービスには、「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つの種類があります。自立支援給付は、障害のある人が日常生活や社会生活のために必要なサービス(介護、訓練、医療など)を利用する際に、その費用の一部を国や地方公共団体が支給する制度です。この記事では、自立支援給付の概要、対象者、申請方法などを分かりやすく解説します。

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監修: 渡部伸
行政書士
親なきあと相談室主宰
社会保険労務士
慶應義塾大学法学部卒後、出版社勤務を経て、行政書士、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。現在、渡部行政書士社労士事務所代表。自身も知的障害の子どもを持ち、知的障害の子どもをもつ親に向けて「親なきあと」相談室を主宰。著作、講演など幅広く活動中。
目次

障害者総合支援法の自立支援給付とは?

障害者総合支援法は、地域社会における共生の実現に向けて、障害のある人の日常生活・社会生活を総合的に支援するために2013年に施行されました。従来の障害者自立支援法を改正し、障害福祉サービスの充実や、対象となる障害者の範囲を拡大した点が特徴です。

障害者総合支援法が定めるサービスには、「自立支援給付」「地域生活支援事業」の2つの種類があります。

自立支援給付は、障害のある人が日常生活や社会生活のために必要なサービス(介護、訓練、医療など)を利用する際に、その費用の一部を国や地方公共団体が支給する制度です。障害の種類や程度に応じて、利用できるサービスが異なります。

一方、地域生活支援事業は、障害のある人が自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう、市町村を中心として地域の実情に合わせて実施される事業です。例えば1人では移動が困難な人を対象にしたガイドヘルパーによる「移動支援」や、手話通訳者や要約筆記ができる人の派遣などを行う「意思疎通支援」といった事業が挙げられます。

障害者総合支援法の詳しい解説やサービスの内容などは以下の記事を参考にしてください。この記事では、障害者総合支援法で定められる「自立支援給付」と「地域生活支援事業」のうち、自立支援給付について概要・申請方法・利用負担額などを解説します。
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自立支援給付の対象者

自立支援給付の対象者は、身体障害・知的障害(※)・発達障害を含む精神障害の人、障害者総合支援法で指定されている難病の人など、一定の障害のある人が対象となります。障害の種類や程度によって、利用できるサービスや支給量が異なります。
※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5-TR』では「知的発達症(知的能力障害)」と表記されていますが、障害者総合支援法においては「知的障害」と表記しているため、この記事では「知的障害」という表記を用います。
18歳未満の障害のある子どもを対象とした支援は、主に児童福祉法で定められていますが、一部障害者総合支援法に基づく自立支援給付も利用対象です。

◇障害児(18歳未満の障害のある子ども)も対象の自立支援給付の例
・居宅介護(ホームヘルプ)
・同行援護
・行動援護
・重度障害者等包括支援
・短期入所(ショートステイ)
・計画相談支援
◇参考:障害福祉サービスの利用について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001327493.pdf

自立支援給付の種類

自立支援給付には、介護給付、訓練等給付、相談支援、自立支援医療、補装具があります。介護給付と訓練等給付を合わせて「障害福祉サービス」といい、それぞれ利用の流れは異なります。住まいの場としての入所支援と日中活動する生活介護など、必要なサービスを組み合わせて利用することもできます。
自立支援給付全体像
自立支援給付全体像
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◇参考:図表1-1-24 自立支援給付の種類|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-01-24.html
◇参考:障害福祉サービスについて|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html

自立支援給付と地域生活支援事業の違いって?

自立支援給付は、障害のある人が介護や訓練などのサービスを利用する際に、その費用の一部を国や地方公共団体が支給する制度です。一方、地域生活支援事業は、障害のある人が自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう、市町村を中心として地域の実情に合わせて実施される事業です。

自立支援給付は、主に全国共通の制度となりますが、地域生活支援事業は、地域ならではのニーズに合わせた柔軟なサービス提供が可能です。
◇参考:地域生活支援事業|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/chiiki/index.html

障害者総合支援法の自立支援給付、利用の流れ・申請方法

自立支援給付の利用手続きはサービスごとに申請方法が異なります。それぞれの申請方法を詳しくご紹介します。

障害福祉サービス(介護給付、訓練等給付)の利用手続き

障害者総合支援法に基づく自立支援給付のうち、「介護給付」「訓練等給付」は、「障害福祉サービス」に位置付けられます。「介護給付」と「訓練等給付」は申請の流れが一部異なります。

介護給付を希望する場合は、障害のある人の特性や心身の状態に応じて、標準的に必要な支援の度合いを表す「障害支援区分(以下、支援区分)」の認定を受けることが必要になります。※介護給付のうち「同行援護」については、支援区分の認定が不要な場合があります。

訓練等給付を希望する場合には原則として支援区分の認定は不要ですが、共同生活援助(グループホーム)を利用する場合には、支援区分認定が必要な場合があります。

支援区分は、6段階に分かれ、もっとも支援の必要性が高い区分が「6」、以下「5・4・3・2・1」と続き、もっとも支援の必要性が低い場合は「非該当」となります。この支援の必要性の区分によって、適切なサービスが利用できるようになっています。一部のサービスは支援区分が低いと利用できないこともあります。

以下が申請からサービス利用までの流れです。

1. 市区町村の窓口(保健福祉センター・障害福祉課など)へ申請
申請の際には、支給申請書のほかマイナンバーカードや本人確認書類、障害者手帳など障害の状態が確認できる書類などが必要となることがあります。事前にお住まいの自治体のホームページなどで必要書類を確認するとよいでしょう。

2. 【介護給付の場合】障害支援区分の認定調査
市区町村の認定調査員による面接が行われ、全国共通の質問票から心身の状況に関する80項目や普段の生活の状況などについて聞き取り調査が行われます。
参考:障害支援区分|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kubun/index.html
3.【介護給付の場合】障害支援区分の認定

・一次判定
認定調査の結果と医師の意見書に基づき、コンピューター判定が行われます。

・二次判定
一次判定の結果と状況調査、医師意見書などを踏まえ、市区町村が主催する「審査会」で二次判定が行われます。

・障害支援区分の認定
二次判定の結果に基づき、非該当、区分1~6の支援区分で認定が行われます。
◇参考:障害支援区分に係る研修資料について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000481907.pdf
4.サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の提出
支援区分の認定と並行して、市区町村から福祉サービスの利用等に関する計画(サービス等利用計画)の案を提出するように求められます。
サービス等利用計画案は市区町村から指定された特定相談支援事業者が作成しますが、申請者自身による作成も可能です(申請した方自身が作成する計画をセルフプランと呼びます)。

5.支給決定
支援区分やサービスの利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえてサービスが支給決定され、受給者証が発行されます。

6.サービス担当者会議・サービス等利用計画の作成
指定特定相談支援事業者は、支給決定された後にサービス担当者会議やサービス事業者等との連絡調整を行い、サービス等利用計画を作成します。(セルフプランの場合には、サービス等利用計画の作成・提出は不要です。)

7.サービスの利用開始
申請した方はサービスを提供する事業所と利用契約を結び、サービスの利用を開始します。サービス利用開始後には、利用状況の検証や計画の見直しのために一定期間「モニタリング」が行われます。
障害福祉サービスの利用に関する、申請から利用開始までのフロー図
障害福祉サービスの利用に関する、申請から利用開始までのフロー図
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自立支援医療の利用手続き

障害者総合支援法に基づく自立支援給付の一つである「自立支援医療」は、医療費の自己負担額を軽減する医療制度です。自立支援医療には、育成医療・更生医療・精神通院医療があります。

◇自立支援医療の支給対象
育成医療:身体障害のある子ども
更生医療:身体障害のある18歳以上の大人
精神通院医療:精神疾患があって継続的な通院が必要な人

利用手続きは、市区町村の窓口で行います。自治体によっては郵送で申請できることもあります。
◇参考:自立支援医療|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/index.html

補装具費の利用手続き

障害者総合支援法に基づく自立支援給付の一つに、補装具の購入などの費用を支給する制度があります。

補装具とは、主に身体の機能を補完または代替し、長期間継続して使用されるものとされています。具体的には、義肢や装具、視覚障害者安全つえ、眼鏡、補聴器、人工内耳、補聴器、車椅子、歩行器などが挙げられます。補装具費の給付を受けるためには、障害のある子どもの保護者または障害のある本人が、お住まいの市区町村に申請します。

市区町村の身体障害者更生相談所の判定などに基づき、補装具費の支給を受けることができます。補装具の種類によっては、判定が不要だったり、判定方法に要件や制限があったりするため、まずはお住まいの市区町村の窓口に相談するとよいでしょう。
◇補装具費支給制度の概要|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yogu/aiyo.html

障害者総合支援法の自立支援給付、利用者負担額は?

障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)の利用者負担

障害者総合支援法に基づく自立支援給付のうち、「介護給付」「訓練等給付」は、「障害福祉サービス」に位置付けられます。

障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用した際の利用者負担は、原則として「1割」です。ただし、世帯ごとの前年の収入に応じて負担額の月額上限が定められているため、その金額以上の自己負担は生じないことになっています。生活保護を受けている世帯や市町村民税が非課税の世帯については、利用者負担はありません。

世帯の範囲には、障害がある大人(18歳以上)の場合は利用する本人と配偶者が含まれ、本人と配偶者の前年の収入に応じて負担額を決定します。親の収入は本人の前年の収入には換算されないことになっています。障害がある子ども(18歳以下)の場合は、保護者の属する住民基本台帳での世帯が範囲となります。※施設に入所している18、19歳は子どもの種別に含まれます

月額上限負担額の目安として、下記を参考にしてみてください。

■障害者の利用者負担
(1)生活保護受給世帯・・・0円
(2)市区町村民税非課税世帯・・・0円 ※3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が約300万円以下の世帯が対象
(3)収入が約670万円以下の世帯・・・9,300円 ※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く
(4)収入が約670万円以上の世帯・・・37,200円 
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、(4)に該当

利用するサービスによっては、食費、光熱費、交通費、家賃などを実費で負担することがあります。ただし市町村民税非課税世帯の場合、食費等の実費負担やグループホーム利用者の家賃についても、減免や助成を受けられることがあります。
参考:障害者の利用者負担|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html
参考:障害福祉サービスの利用について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001327493.pdf

自立支援医療の上限負担額

自立支援医療の場合には、利用者の負担が過大になりすぎないよう、世帯の所得水準などに応じてひと月当たりの負担に上限額が設定されています(月額の総医療費の1割がこれに満たない場合は1割)。また、入院した際の食事療養費や生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担になります。

自立支援医療は、更生医療・精神通院医療・育成医療の3種類がありますが、生活保護受給世帯と市町村民税非課税世帯については、3種類共通で以下のような自己負担となっています。

・生活保護世帯・・・0円
・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円以下・・・2,500円
・市町村民税非課税世帯で本人収入が80万円より大きい・・・5,000円

市町村民税課税世帯については、年収や利用する医療、高額な治療が長期必要かどうかなどによって自己負担額が変わってきます。
◇参考:自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000885754.pdf

補装具費の利用者負担額

補装具費の利用者負担額は原則1割です。ただし世帯の所得に応じて負担上限額が設定されています。

・生活保護世帯・市町村民税非課税世帯・・・0円
・それ以外の世帯・・・37,200円

また、補装具費については障害者本人または世帯が一定所得以上(市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万以上)の場合、給付対象外となります。

また、例えば補装具を購入することで、生活保護の対象となる場合には、利用者が負担する費用が生活保護の対象とならない範囲まで負担上限月額を引き下げることになっています。
◇参考:補装具費支給制度の概要|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yogu/aiyo.html
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