ロールシャッハ・テストは誰がどうやって判定するの?

専門機関が実施するテストの場合、回答は精神科医や臨床心理士が判定します。テストの実施者が医師や臨床心理士の有資格者でない場合は、受検者の回答や実施状況を記録し、有資格者に判定を委ねます。
 
ロールシャッハ・テストの回答は、現在の日本においては「包括システム」(またはエクスナー法)という方式で判定されるのが主流です。「包括システム」とは、精神科臨床の場で蓄積した膨大な統計データから実証された人格の傾向を、体系的に網羅したシステムを使い解釈する方法です。

その他に、日本独自の方法を体系化し、受検者の反応や言葉づかいも重視しながら分析していく「片口式」などもあります。
参考:包括システムによる日本ロールシャッハ学会
https://www.jrscweb.com/
参考:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会
http://fjcbcp.or.jp/about/
参考書籍:片口安史/著『新・心理診断法―ロールシャッハ・テストの解説と研究』(金子書房,1987)
https://www.amazon.co.jp/dp/4760825487

ロールシャッハ・テストは信頼できるの?

ここまでの説明を読み、「こんな単純なテストで人の内面がわかるの?」という疑問を持たれた方もいるかと思います。その問いに対しては、創始から90年以上を経た今でも多くの精神科医、臨床心理士、心理学の研究者が議論を戦わせています

まず、心理分析の場でロールシャッハ・テストが活用されている理由として代表的なものをご紹介します。
「心理臨床家がロールシャッハ・テストを行うのは、クライエントを援助する目的で、クライエントの『その人らしさ』を表すパーソナリティを理解するためである。」
(高橋雅春・高橋依子・西尾博行/著『ロールシャッハ・テスト解釈法』P13より引用)
出典:https://amzn.to/2i3BZcK
その一方で、統計データをもとに人格を分析するという手法にそもそも問題があるという意見もあります。なぜなら受検者の生育環境、文化的背景が十分に認識されないことがあり、どれだけ膨大な蓄積があったとしても、統計データとの比較だけで分析するのは不十分だという考えを否定しきれないからです。

また、分析する側にも2つの問題があります。1つは分析に必要な知識や経験を得るのに多大な時間がかかるため、正確な分析ができる人が多くないということです。2つめは受検者と実施者の人間関係が分析結果に影響を及ぼす可能性がある、という点です。
参考書籍:J・M・ウッド、M・T・ネゾースキ、S・O・リリエンフェルド、H・N・ガープ共著、宮崎謙一訳『ロールシャッハテストはまちがっている』(北大路書房,2006)
https://www.amazon.co.jp/dp/4762824836
参考書籍:村上宣寛/著『「心理テスト」はウソでした』(日経BP社,2005)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00HPSTJKW
このように、ロールシャッハ・テストの信頼性に対する議論は国内外を問わず、現在でも折に触れて繰り返されています。ロールシャッハ・テストには普遍性が欠けているという科学的な意見と、長い時間をかけて洗練された手法を熟練した検査者が用いることがクライエント(相談者)理解に役立つという臨床的な意見の対立は、決着の目処が立っていません。

臨床心理の現場では、目の前のクライエントの心にどのようにアプローチし支援をしていくかを考え、実行することが常に求められています。そのために、クライエントの内面を理解する一手段として、まずはロールシャッハ・テストを用いることがある、というのが実情なのです。

ロールシャッハ・テストを受けられる機関

ロールシャッハ・テストは実施に時間がかかり、解釈にも専門的な知識と技術が必要なため、受検できる機関は限られています。受検を希望する場合は発達障害者支援センターや児童相談所から実施できる専門機関を紹介してもらうことをおすすめします

専門機関

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター
・法務省少年支援センター
・児童相談所 など

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所 など

以下のリンクからは、全国の発達障害者支援センターを検索できるので参考になさってください。
発達障害者支援センター・一覧 |出典:国立障害者リハビリテーションセンターホームページ
http://www.rehab.go.jp/ddis/action/center/
特別な理由なくテストを希望する場合には、まず最寄りに実施できる検査機関があるかどうかを調べてください。具体的には、精神科や心療内科を開設している病院、臨床心理士のいるカウンセリングルームなどです。候補の施設に、ロールシャッハ・テストの解釈に精通した医師、臨床心理士がいることを確認し、受検希望の旨を相談してみてください。ただし、多くの施設ではカウンセリングの過程でテストを実施するというケースが多いので、テストのみの受検は可能かどうかは確認が必要です。

日本では保険医療の診療報酬体系にロールシャッハ・テストが組み込まれていますが、テストだけを受けたい場合は保険は効かないことが多いです。費用は保険適用の場合と不適用の場合で異なり、施設ごとの金額設定にも数千円~数万円の幅があるので、こちらも事前の確認をおすすめします。
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