自傷行動を防ぐための3つのステップ

本人は望んで自傷行動を選んでいるわけではなく、今のところ「他に方法がない」ためにしかたなくやってしまう場合が多いです。周囲に求められることは、子どもが自傷行動をしなくてすむよう、環境を用意したりそれに代わるスキルを学習することです。

自傷行動は、してしまう原因も対処法も、子ども一人ひとりのケースによって異なります。そのため、その子がなぜ自傷行動に至るのかを考え、その子に合った自傷行動を防ぐための方法を見つけることが重要なのです。

今回は、その方法を3つのステップで紹介します。

ステップ1. 自傷行動が起きた状況を記録する

一人ひとりの子どもの自傷行動の原因を調べるためにはいつ・どこで・だれと・どのような状況で、子どもがどんな自傷行動を起こすのか、その結果として子どもにとってどんな状況が生じているのかを観察することが大切です。着目するのは「状況」「行動」「結果」の3つです。それぞれを紙などに記録し、行動の前後の状況を把握します。

・状況……いつ・どこで・だれと・どんな状況だったか(子どもが自傷行動を起こす前に何が起きたか/起きていたか)
・行動……どのような自傷行動を起こしたか
・結果……自傷行動を起こした結果、状況はどのようになったか

例(回避・拒否)
・状況……食事中、お母さんが嫌いな食べ物を口に入れた
・行動……頭をテーブルに打ち付けた
・結果……食べなくて済んだ

この例では、「食べたくない」という拒否を伝えるための自傷行動であることがわかります。自傷行動を起こしている理由を推測することで、対応が考えられるようになります。このように、まずはその自傷行動が起きた状況を把握し、記録することが最初のステップです。

ステップ2. 自傷行動をしなくてもすむようプランを考える

最初のステップで、自傷行動につながった状況を把握したら、自傷行動をしなくてすむにはどうしたらいいか、考えます。

先ほどの、嫌いな物を食べたくなくて自傷行動をしてしまう場合について考えてみましょう。

◇自傷行為が起きない工夫・環境調整をする
・少し食べたら好きな物を食べられるようにする
・お母さんも一緒に同じものを食べる
・無理強いはしない
・好きなテレビを観ながら食べていいことにする
・小さく切る
・どうしても食べられないものは出さない

◇どうしたらいいか、望ましい行動を教える
自傷行動が起きないように工夫する一方で、自傷行動の代わりとなる適切な行動やスキルを教えることも重要です。例えば、拒否の伝え方を教え、食べたくないときテーブルに頭を打ち付けるのではなく、するべき適切なコミュニケーション行動に置き換えます。

例えば
・「いやだ」のサインを教える
・絵カードで拒否を教える
・「“いらない”って言おうね」などと、自分の意思を伝えるための言葉を教える

このように、子ども本人にとってできるだけ負担や我慢することが少ない方法を、家庭でたくさん考えてみましょう。

ステップ3. プランを実施し、うまくいかなければプランを見直す

ステップ2で考えた中から家庭で実施しやすい方法を選んで、やった結果どうだったか記録をとりながら一定期間やってみます。

家庭でプランを実施する際はその目的を家族や周囲に説明し、共有することが大切です。毎回対応が変わったり人によって対応が変わらないようにします。例えば、頭を床に打ち付けて「母親以外の人だったら要望が通った」ということになると、その行動は繰り返されてしまいます。家族もその周囲も、子どもに対して一貫した対応を心がけましょう。

子どもが自傷行動ではない方法でうまく過ごすことができたら、すぐに褒めてあげましょう。「トークンエコノミー」と言われるシールやポイントを使って褒めるのもおすすめです。わかりやすく褒めることで子ども自身がうまくできたことを実感しやすくなり、望ましい行動を増やすことにつながります。
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子どもが自分で考えて動けるようになる「トークン表」とは?

考えた計画を実施しても、すぐさま効果が現れないこともあります。一定期間やってみてもうまくいかなかった場合は工夫やプランを見直したり、望ましい行動のレベルを達成しやすいものに下げたりして、もう一度実践してみましょう。

自傷行動の原因別対処法

自傷行動の原因別対処法

自傷行動をしなくて済む工夫としては具体的にどのようなものがあるでしょうか。

自傷行動が起きなくて済むように環境調整や工夫をするほか、自傷行動をしなくて済むスキルや自傷行動の代わりとなる行動を子どもに教えることも効果があります。

以下に自傷行動の原因別に、子どもが取り組みやすい行動、そして自傷行動を防ぐツールを紹介します。

自傷行動がコミュニケーションの手段だと思われる場合

◇コミュニケーションスキルをつける
注目を引きたい、要望・拒否を伝えたいという時に自傷行動が起きている場合、気持ちを伝えるための別のコミュニケーション手段を使えるよう促します。

言葉で気持ちを伝えるのが難しい場合、絵カードやコミュニケーション支援アプリを使って視覚的に気持ちを伝える方法を教えるとよいでしょう。「今、自分は○○という気持ちなんだ」ということが周囲に伝わるだけでも、子どもは楽になることが多いようです。

「困ったら相談する」ことを教えることも効果的です。「『困った』って言うんだよ」など、具体的なセリフで教えるとよい場合があります。
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自傷行動の原因が嫌な刺激の場合

◇嫌な刺激を避け落ち着く方法を教える
感覚過敏が自傷行動につながっている場合、その刺激を避けるスキルを教えるとよいでしょう。

イヤーマフやフードをかぶって刺激を遮断したり、別の部屋に行く、その場所に行かないなどの対処法を教えます。人が嫌な音などを出す場合、「やめて」などというコミュニケーションスキルを教えてもよいでしょう。

いやな刺激がシャットダウンできる環境があるとよいでしょう。子どもそれぞれにとって落ち着ける方法を考えましょう。

また、不安になったときに、落ち着き方を知っていると、子ども一人でも対応しやすくなります。
以下に落ち着くための方法の例を挙げます。方法は向き不向きがあるため、子どもと一緒にどんな方法が一番安心できるか考えることができればなおよいでしょう。

・子どもが好きな匂い袋を嗅ぐ
・つぶやくと落ち着く言葉を覚える(魔法のことば等)
・(家庭/園の場合)特定の落ち着く場所を決め、不安になったときに行くようにする
・布団や毛布にくるまる

暇つぶしの手段としてしている場合

◆手持無沙汰のときにできる余暇スキルを教える

自傷行動の刺激が子どもにとってプラスに働いている場合、無理やり自傷行動をやめさせることは効果的ではありません。禁止するのではなく、自傷行動とは別の刺激を得られるおもちゃを与える、あるいは不安を感じたときに落ち着く方法を教えることで自傷行動を防ぎます。
抱き枕やストレスリリーサーと呼ばれる握るおもちゃ、噛むおもちゃなどもありますので、試してみるとよいでしょう。
子どもは何もすることがないと不安になったり、イライラしやすくなったりします。その為、「余暇をどう過ごすか」は子どもの生活の質に大きく影響します。時間が空いたときには何をして遊びたいかについて、子どもと一緒に話し合ったり、選択肢を提示することも大切でしょう。

・パズル
・ぬり絵やホワイトボードでのお絵かき
・DVDをみる
・ゲーム など

自傷行動が起きた、その場ではどう対応すればよい?

自傷行動が起きるタイミングは、予測できるものばかりではありません。子どもが自傷行動を起こした時にどのように接するべきか前もって知っておくことで、焦らずに対応しやすくなります。

安全を確保する

自傷行動が起きた時は、まずはケガなどをしないように安全を確保します。頭を床や壁にぶつけるなどの自傷行動の場合、クッションや枕を子どもと物の間に挟みケガを防ぐ措置を取りましょう。事前の工夫としても周りに危険な物をおかないようにするなどの配慮をしておくとよいでしょう。

過剰な反応を避ける

自傷行動は感情の高まりがきっかけとなっていることが多いため、なるべく早く止めるためには、子どもの気持ちを落ち着かせることが鍵となってきます。

過剰に大きな声で叱ったり、子どもが痛く感じてしまうほど体を押さえつけて止めると感情を更に刺激してしまいます。また、自傷行動をしている最中に、それを止めるためにやさしい言葉をかけたり、抱きしめたり、おやつを上げたりして要求をとおすことは、子どもに「自傷行動をするといいことがある」と思わせてしまうので逆効果です。

ここは冷静に、けがなどをしないように安全を確保した上で、先に用意した本人が落ち着けるグッズやリラックスできる場所に誘導し、自傷行動が止まるまで待ちましょう。

落ち着けたことを必ず褒める

自傷行動が止まり、子どもが完全に冷静さを取り戻したタイミングで落ち着けたことをしっかり褒めるようにしましょう。「別の部屋に行って落ち着けたね」「我慢できて偉かったね」などと褒めてあげることで子どもは安心感を抱き、更には「自傷行動をやめた方がいいことがあるんだ」と感じやすくなり、予防にもつながります。
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