自傷行動とは?自閉症・知的障害のある人に見られる自傷行動の原因・対処法・相談先まとめ

自傷行動とは?自閉症・知的障害のある人に見られる自傷行動の原因・対処法・相談先まとめのタイトル画像

「頭を床や壁にぶつける」「自分で自分をたたく」「自分の腕を噛む」などの自傷行動が、知的障害や知的障害のある自閉症の人にみられることがあります。その原因は何なのでしょうか?またどう対応すればよいのでしょうか?この記事では自傷行動の背景や、自傷行動が起きた場での対応方法、予防法、そして困った時の相談先を紹介します。

6077ad2b372d5a152de8191d73e3e4480c620035 s
発達障害のキホン
165682 View
5a9f9be3a4c4f2b420bb57b06f1121b9c3f754e5 s
監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
目次 知的障害・自閉症のある人の自傷行動とは 自傷行動の背景にある3つの要因 なぜ自傷行動をしてしまうの? 自傷行動を防ぐための3つのステップ 自傷行動の原因別対処法 自傷行動が起きた、その場ではどう対応すればよい? 悩んだら早めに専門家に相談を 一人ひとりに合わせた工夫で自傷行動をなくしていきましょう

知的障害・自閉症のある人の自傷行動とは

「自傷行動(自傷行為)」とは、自分で自分を傷つける行動のことです。自分を傷つける行動にはさまざまなケースや要因がありますが、知的障害のある人や、自閉症で知的障害のある人に見られることもあります。この記事では、知的障害や自閉症に関連して起きる自傷行動(以下自傷行動とする)について解説します。

知的障害や自閉症に関連して起きる自傷行動は、年齢や特性によってさまざまな行動がみられ、それぞれの場合で原因や対処法が異なります。特によく見られるのは、下記のような行動です。

・頭を床や壁にぶつける
・頭や顔を手でたたく、ひっかく
・自分の手をかむ
・髪の毛やまゆ毛を抜く
・体をかきむしる など

また自傷行動とまでは言わないまでも「自分の爪を噛んで食べてしまう」こともあります。

これらは、思春期以降にみられることのあるリストカットや根性焼き、自殺企図から自分を傷つける行為などのいわゆる「自傷行為」とは意味合いが異なり、原因や対処法も変わってきます

自傷行動の背景にある3つの要因

知的障害のある人や自閉症の人が自傷行動を起こしてしまう理由は、一人ひとり違うためそれぞれで観察し、把握する必要がありますが、その子どもの刺激に対する過敏さ/鈍麻さ、コミュニケーションの困難さ、そして余暇の過ごし方が乏しいこと(時間の過ごし方が分からない)などが背景にある場合が多いようです。

なぜ自傷行動につながっていくのか、それぞれ見ていきましょう。

コミュニケーションの困難

自傷行動を起こす背景の一つに、周囲に気持ちを伝えることが困難ということがあります。

気持ちの伝え方を覚えるスピードは一人ひとりに個人差があります。知的障害や自閉症のある人は、言語やコミュニケーションの発達に遅れが認められる場合もあり、発話が困難であったり、身振り手振りでうまく伝えるのが苦手であることで、その伝わらないもどかしさのため、またはその意志や要求を伝えるための手段としてしまうため、自傷行動を含む困った行動を起こしやすくなると言われています。
言語発達遅滞とは?言葉の遅れ、言葉が出ない原因、家庭でできるトレーニング、相談先まとめ大公開!のタイトル画像
関連記事
言語発達遅滞とは?言葉の遅れ、言葉が出ない原因、家庭でできるトレーニング、相談先まとめ大公開!

刺激への「敏感さ」と「鈍さ」

感覚過敏/感覚鈍麻といわれる刺激を感じる感覚の偏りも、自傷行動が起こりやすくなる要因となります。仮に同じ環境であっても、ある人はそこにいて何も感じなくても、別の人はその環境から受ける刺激に強い不快を感じている、ということがありえます。

例えば感覚が人一倍敏感だと、日常生活を送る上で強い刺激を受けやすくなってしまいます。周りの物音が大きく聞こえたり、光(太陽やテレビ画面など)が眩しく見えたりするなどにより、疲れたり、不快やイライラを感じやすくなります。

逆に感覚が鈍いと、普段の刺激に物足りなさを感じてしまったり、自傷行動の痛みを感じにくくなってしまったりしている可能性があります。
感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?発達障害との関係、子どもの症状、対処方法まとめのタイトル画像
関連記事
感覚の過敏さ(感覚過敏)、鈍感さ(感覚鈍麻)とは?発達障害との関係、子どもの症状、対処方法まとめ

余暇の過ごし方が乏しい

やることがなくなった時、暇のつぶし方がわからないことで手持ち無沙汰になってしまう場合があります。自閉症の場合は興味の範囲が狭かったり限定されていたりして、余った時間をどう過ごすかという手段が乏しいことも自傷行動の要因になりえます。

なぜ自傷行動をしてしまうの?

この章では知的障害や自閉症のある人の自傷行動の主な原因例を示しますが、このほかにもさまざまな原因があり一人ひとり異なります。そのため個別の評価(アセスメント)と対応が重要です。
発達障害の療育のベース「応用行動分析学(ABA)」とは?ABA療育の効果や実例、利用方法まとめのタイトル画像
関連記事
発達障害の療育のベース「応用行動分析学(ABA)」とは?ABA療育の効果や実例、利用方法まとめ

周囲の注意をひきたい/ものや活動の要求を叶えたい

周囲の人と支障なくコミュニケーションできる子どもであれば、苦痛や拒否、要求などを適切に表現して伝え、助けを求めることができるでしょう。

しかし、言葉が出にくかったり、対人関係が苦手な子どもの場合は、泣き叫んだり、暴れたり、周囲からすると困った行動を通してしかコミュニケーションする方法がありません。

・注目を引きたい、かまってほしい(注目)
・何か物が欲しい、活動をやりたい(要求)
・活動をやめたい、場所を避けたい等、いやだという気持ちを伝えたい(拒否)

などを伝えたいがために、他の困った行動と同様にコミュニケーションの手段として自傷行動をしている可能性があります。

つまり「自分を傷つける」ことによって結果的に要求を叶えたり、嫌なことしなくてすんだりといった経験によってコミュニケーションの手段として自傷行動が習慣化してしまっていることが考えられます。例えば子どもが手持無沙汰のときに、自傷行動をすると母親が駆けつけて抱きしめてくれた(手持無沙汰な状況が解消してかまってもらえた)など、親にとってはやめさせようとしてしたことが、子どもにとっては「自傷行動のごほうび」になっていることもあるのです。

自傷行動はそれぞれの子どもの状況において別々の原因がありますが、こうした経験が重なることで、その子の場合、自傷行動がかまってほしいときに行うコミュニケーション行動として学習され、定着してしまっている可能性があります。

不快な刺激を紛らわせたい

特に感覚過敏/鈍麻の傾向がある人だと、様々な刺激によって不快を感じやすくなると言われています。自傷行動から生まれる痛みによる刺激は、先に感じていた別の不快な刺激を紛らわせる働きがあるのではないかという仮説もあります。

余暇の過ごし方が乏しくて手持無沙汰を解消したい

感覚が鈍い子どもの場合や自閉症のある人で興味の範囲が狭いひとの場合、余暇が乏しく手持無沙汰になりがちです。例えば感覚あそびとして、なんでも触って回る、コップの水をうつしかえる、絶えず人や洋服を触っているなどの行動が見られることがあります。それがつめをかんだり、髪の毛を引っ張って抜いたり、腕をかんだりといった自傷行動としてあらわれることもあるのです。

刺激を求めて起こす自傷行動は、特に子どもが手持ち無沙汰になっている状況で起こりがちだと言われています。何もすることがない環境、あるいは何をしたらいいのかがわからない環境(余暇の過ごし方が乏しい)で、自傷行動によって引き起こされる強い感覚刺激で暇を潰してしまうということがあると言われています。

その他の原因

自傷行動を引き起こす原因は他にも存在しています。

・楽しくなって過剰に興奮してしまった……自傷行動は遊びが「楽しすぎる」のような、テンションが上がり過ぎたりポジティブな感情の高まったりした場合にそれが引き金になることもあります。

・パニックや発作などの衝動で……パニックや癇癪(かんしゃく)を起しているときに、自制できない衝動的な行為として、自分を傷つけてしまうことがあります。

中には、てんかんに起因しているものもあります。「てんかん」といえば、倒れこんでしまうなどの大発作がイメージされやすいですが、てんかん発作には精神的に影響するものもあります。発作により神経細胞が興奮し、パニックになり自傷行動につながる場合があります。てんかんに起因する自傷行動の場合、「点滅する光」や「騒音」などが引き金となりえます。
てんかんとは?原因や発作の種類、発達障害との関係や支援制度について紹介します!のタイトル画像
関連記事
てんかんとは?原因や発作の種類、発達障害との関係や支援制度について紹介します!

自傷行動を防ぐための3つのステップ

本人は望んで自傷行動を選んでいるわけではなく、今のところ「他に方法がない」ためにしかたなくやってしまう場合が多いです。周囲に求められることは、子どもが自傷行動をしなくてすむよう、環境を用意したりそれに代わるスキルを学習することです。

自傷行動は、してしまう原因も対処法も、子ども一人ひとりのケースによって異なります。そのため、その子がなぜ自傷行動に至るのかを考え、その子に合った自傷行動を防ぐための方法を見つけることが重要なのです。

今回は、その方法を3つのステップで紹介します。

ステップ1. 自傷行動が起きた状況を記録する

一人ひとりの子どもの自傷行動の原因を調べるためにはいつ・どこで・だれと・どのような状況で、子どもがどんな自傷行動を起こすのか、その結果として子どもにとってどんな状況が生じているのかを観察することが大切です。着目するのは「状況」「行動」「結果」の3つです。それぞれを紙などに記録し、行動の前後の状況を把握します。

・状況……いつ・どこで・だれと・どんな状況だったか(子どもが自傷行動を起こす前に何が起きたか/起きていたか)
・行動……どのような自傷行動を起こしたか
・結果……自傷行動を起こした結果、状況はどのようになったか

例(回避・拒否)
・状況……食事中、お母さんが嫌いな食べ物を口に入れた
・行動……頭をテーブルに打ち付けた
・結果……食べなくて済んだ

この例では、「食べたくない」という拒否を伝えるための自傷行動であることがわかります。自傷行動を起こしている理由を推測することで、対応が考えられるようになります。このように、まずはその自傷行動が起きた状況を把握し、記録することが最初のステップです。

リンク先に、記入するのに便利な行動観察シートがあるので、活用するとよいでしょう。

ステップ2. 自傷行動をしなくてもすむようプランを考える

最初のステップで、自傷行動につながった状況を把握したら、自傷行動をしなくてすむにはどうしたらいいか、考えます。

先ほどの、嫌いな物を食べたくなくて自傷行動をしてしまう場合について考えてみましょう。

◇自傷行為が起きない工夫・環境調整をする
・少し食べたら好きな物を食べられるようにする
・お母さんも一緒に同じものを食べる
・無理強いはしない
・好きなテレビを観ながら食べていいことにする
・小さく切る
・どうしても食べられないものは出さない

◇どうしたらいいか、望ましい行動を教える
自傷行動が起きないように工夫する一方で、自傷行動の代わりとなる適切な行動やスキルを教えることも重要です。例えば、拒否の伝え方を教え、食べたくないときテーブルに頭を打ち付けるのではなく、するべき適切なコミュニケーション行動に置き換えます。

例えば
・「いやだ」のサインを教える
・絵カードで拒否を教える
・「“いらない”って言おうね」などと、自分の意思を伝えるための言葉を教える

このように、子ども本人にとってできるだけ負担や我慢することが少ない方法を、家庭でたくさん考えてみましょう。

ステップ3. プランを実施し、うまくいかなければプランを見直す

ステップ2で考えた中から家庭で実施しやすい方法を選んで、やった結果どうだったか記録をとりながら一定期間やってみます。

家庭でプランを実施する際はその目的を家族や周囲に説明し、共有することが大切です。毎回対応が変わったり人によって対応が変わらないようにします。例えば、頭を床に打ち付けて「母親以外の人だったら要望が通った」ということになると、その行動は繰り返されてしまいます。家族もその周囲も、子どもに対して一貫した対応を心がけましょう。

子どもが自傷行動ではない方法でうまく過ごすことができたら、すぐに褒めてあげましょう。「トークンエコノミー」と言われるシールやポイントを使って褒めるのもおすすめです。わかりやすく褒めることで子ども自身がうまくできたことを実感しやすくなり、望ましい行動を増やすことにつながります。
子どもが自分で考えて動けるようになる「トークン表」とは?のタイトル画像
関連記事
子どもが自分で考えて動けるようになる「トークン表」とは?
考えた計画を実施しても、すぐさま効果が現れないこともあります。一定期間やってみてもうまくいかなかった場合は工夫やプランを見直したり、望ましい行動のレベルを達成しやすいものに下げたりして、もう一度実践してみましょう。

自傷行動の原因別対処法

当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。
Column title

あわせて読みたい関連記事

Question history

発達障害のキホンを知る

【図解】発達障害とは?もし「発達障害かも」と思ったら?分類・原因・相談先・診断についてイラストでわかりやすく解説します!のタイトル画像

【図解】発達障害とは?もし「発達障害かも」と思ったら?分類・原因・相談先・診断についてイラストでわかりやすく解説します!

発達障害は外見からはわかりにくい障害です。定義や特徴も複雑で、イメージしにくいかもしれません。この記事ではイラスト図解で、発達障害にはどん...
発達障害のこと
41638 view
2018/08/28 更新
ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状の分類と年齢ごとの特徴 、診断方法や治療まとめのタイトル画像

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?症状の分類と年齢ごとの特徴 、診断方法や治療まとめ

ADHDは不注意、多動性、衝動性の3つの症状がみられる発達障害のひとつです。注意欠如・多動性障害とも呼ばれます。子どもの20人に1人、成人...
発達障害のこと
4393757 view
2017/08/30 更新
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?のタイトル画像

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、自閉症やアスペルガー症候群などが統合されてできた診断名です。コミュニケーションに困難さがあり、限定さ...
発達障害のこと
2124810 view
2016/09/29 更新
【図解】学習障害(LD)とは?イラスト図解でポイントを解説!のタイトル画像

【図解】学習障害(LD)とは?イラスト図解でポイントを解説!

学習障害(LD)がある子どもはどのような状態で、何に困っているのかご存知ですか?イラスト図解とポイント解説で、学習障害とはどんな障害なのか...
発達障害のこと
20419 view
2018/09/06 更新
Area search

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。