3歳児健診で「療育に通って」と言われてから9年。ASD息子の子育て、実は家庭内療育してたかもと思ったワケ

ライター:丸山さとこ
3歳児健診で「療育に通って」と言われてから9年。ASD息子の子育て、実は家庭内療育してたかもと思ったワケのタイトル画像

私が療育というものを知ったのは、3歳児健診で療育園をすすめられたときでした。「療育とは何だろう?」と思い養育者向けの書籍を読んだ当時の私が感じたことや、知らず知らずに行っていた「療育的な関わり」について書きました。

監修者井上雅彦のアイコン
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

「療育って何?」からスタートした9年前

私が療育というものを知ったのは、3歳児健診で療育園をすすめられたときでした。
Upload By 丸山さとこ

療育を初めて知ったのは3歳児健診のときでした

今思えば、息子コウの発達の凸凹は2歳ごろから現れていたのだろうと思います。たまに「あれ?」とひっかかることもありました。ですが、「男の子は言葉が遅いから大丈夫」「気にしすぎないで。お母さんはおおらかでないと!」などと人から言われていたこともあり、「ちょっと変わった子だな」程度に思って過ごしていました。

そんな私が療育というものを知ったのは、3歳児健診で療育園をすすめられたときでした。本を読み療育園に通うことで療育について少しずつ知っていった私は、『あれ?ごく当たり前のことが書いてあるな…?』と首をかしげました。

家庭内で意識せずに行われていた『療育的な関わり』のこと

療育について知り始めたころの印象は「意外と普通?」

当時読んだ本が「これから発達障害や療育について知っていきたい親」のための入門書だったのもあるかもしれませんが、「子どもの反応を見る → 予測を立てて関わる → 子どもの反応をフィードバックする」という関わり方は、私にとって拍子抜けするほど普通のことに思えました。
「あれ?意外と普通のことが書いてあるんだな…?」と思いながら発達障害児についての本を読む私
Upload By 丸山さとこ
これは、私自身にASDとADHDがあり普段の生活の中である程度工夫をしていため、療育の入門本に書いてあった関わり方を感覚的に理解しやすかったのもあるかもしれません。

産まれたばかりの乳児のお世話は手探りで

また、それに加えて『産まれたばかりの乳児の世話を手探りで行った経験』も関係あったのではないかと思います。まだ首も座らないフニャフニャのコウを世話しながら、泣く・寝ない・上手く飲めない・何をしたいのか何を考えているのか全く分からない乳児という存在を前におののいた覚えがあります。
新生児だったころのコウを抱きながら戸惑う私
Upload By 丸山さとこ
「赤ちゃん(コウ)自身も何をしたら自分が快適になるのか、まだ分からないんだろうな」と考え、「一緒に頑張ろうな~」と声をかけながら関わっていきました。

そうするにつれて、コウが『今どんな感じか・何を要求しているか・何に興味を持っているか』が少しずつ分かるようになってきました。そのような観察や試行錯誤の繰り返しが、結果的に”療育的な関わり”となっていたかもしれません。

遊びの中で行っていたハイタッチも療育だったのかも?

今振り返ると、コウとの付き合いが始まった乳幼児期に「意識的に行った療育的な関わり」として一番にあげられるものは、ハイタッチだったのではないかと思います。

乳幼児のころから目線が合いにくいコウでしたが、彼の視線に割り込むと(多分、邪魔だという理由で)機嫌が悪くなり怒っているような様子になるので、彼が見ているものの近くや後ろでさりげなく存在をアピールしたり、ハイタッチして目線を合わせたりしました。
ハイタッチしてコミュニケーションをとりつつ目線を合わせたりしました。
Upload By 丸山さとこ
手を挙げることやハイタッチはコミュニケーションにも有効でした。子どもの絵本や手遊びには手をあげるポーズが多く、コウが「手を挙げる」行動を模倣するようになったことで、それらの遊びが行いやすくなりました。

たまたまバンザイしたときに手のひらへのタッチをすることで「親の手の動きに反応して手のひらにタッチする」を覚えてハイタッチができるようになったコウは、「タッチする度に位置が変わる手のひらにタッチする」という単純な手遊びも喜んで行うようになりました。
ハイタッチができるようになったコウは、手遊びも楽しめるようになりました。
Upload By 丸山さとこ
最初は「動く手のひら」を目で追うのが難しかったり、手のひらの向きが変わると混乱したり、タッチすることばかりに夢中になりよろけそうになったりしていました。そのときどきのコウに合わせて難易度を調節することで、楽しく遊びながら、

『今日の調子はちょっと不安定だな』
『こんなこともできるようになったんだな』
『判断が早くなったな』
『難しいことを面白がるようになったな』


などとコウのコンディションや変化を感じることができました。コウだけでなく私自身も遊びを通して気持ちの切り替えができ、親子ともども楽しめる良い遊びになりました。

また、当時のコウは物への興味が強くあまり人間には興味を示していませんでしたが、ハイタッチは「手のひらという遊び道具」を通して少しずつ「手のひらの持ち主」にも目を向けるきっかけになったのではないかな?と感じます。

今でも続く「療育的な関わり」の、変わることと変わらないこと

その後も、「いくつ?」と聞かれたら「3歳」と答えるような、質問に対して答えるというやりとりを『セリフを言う人の肩に触れる』ことで教えたり、遊具で遊ぶ練習など、いろいろ療育的な関わりをしていきましたが、そんなコウももう中学生。これからは直接サポートすることは段々と減っていくだろう…と思っていました。そんな矢先、先日行われたスクールカウンセリングにて

「コウ君のようなお子さんは、中学生や高校生になってからもほかの多くのお子さんよりサポートは必要であり続けることが多く、今のところコウ君もそうである可能性は高いです」

とハッキリ告げられ、心の中で泡を吹きました。とはいえ、次第に「療育的な関わり」というよりも、成人の神経発達症(発達障害)がある人に対するような配慮をしていく形になっていくのかなと思っています。
コウには段々と「療育」ではなく「成人の神経発達症(発達障害)がある人に対するような配慮」をするようになっていくのかなと思っています。
Upload By 丸山さとこ
コウに対する療育的な関わりが当たり前のこととなった今振り返ると、具体的な手法やノウハウや例など、書籍やWebから得られる情報は10年前より各段に増えたなと感じます。それらの情報を取り入れて何とか回している日々の中、「今日はもう何をやってもダメだ…!」となることもあります。

そんなとき、生まれたての赤ちゃんだったコウに振り回されたあの疲労困憊の日々を思い出すと、少しだけ初心に戻れそうな気がするこのごろです。コウが中学生になったことで、乳幼児期が遠い思い出になったのかもしれません。

執筆/丸山さとこ
(監修:井上先生より)
丸山さんもおっしゃっているように小さいころの支援と思春期になった今必要とされる支援とは質的にもかなり違ってきていると思います。本人なりに考えて行っていることに対して、すぐに否定しないでいったん受け入れてから一緒に考えていくことなど、本人が自分で問題解決し自立していくのに必要なステップが親御さんとの関わりの中に含まれていると思います。

苦手なことに出合ったときにこうやればうまくいくというような方法や環境を、一緒に探していくことで、「困ったときは人に聞いてみてもいいかな」という援助希求や「まあなんとかなるさ」という自信につながっていくとよいですね。
ASD息子中学入学!「配慮されすぎた指示は苦手」「根性論は不要」WISC結果持参で臨んだ、二者面談の意義のタイトル画像

ASD息子中学入学!「配慮されすぎた指示は苦手」「根性論は不要」WISC結果持参で臨んだ、二者面談の意義

もしかして次男も発達障害⁉ 手がかからない、健診でも指摘ないけれど。保育園の先生に療育をすすめられてのタイトル画像

もしかして次男も発達障害⁉ 手がかからない、健診でも指摘ないけれど。保育園の先生に療育をすすめられて

ADHDの息子の乳児期、想像を絶する大変さでした…のタイトル画像

ADHDの息子の乳児期、想像を絶する大変さでした…

赤ちゃんも言葉も苦手な広汎性発達障害の娘。弟の存在が育んだ察する力、伝える力!のタイトル画像

赤ちゃんも言葉も苦手な広汎性発達障害の娘。弟の存在が育んだ察する力、伝える力!

3歳児健診で、再検査をすすめられて。「私の関わり方のせい?」原因探しで思い悩んだあの日のタイトル画像

3歳児健診で、再検査をすすめられて。「私の関わり方のせい?」原因探しで思い悩んだあの日


追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。