自閉症息子、爆笑してたのに「全然楽しくなかった」!?外出が「嫌な出来事」として上書きされそうになったワケ【専門家のASD児お出かけアドバイスも】
ライター:taeko
ASDのある小3ミミ。最近は動画サイトで関西弁を少し覚えて家や学校でも使っていました。ミミは関西弁に興味がある?それなら…!と本物の関西弁を体感させたいと思い、お笑いライブに連れて行こうと計画!早速1ヶ月後にあるお笑いのチケットを取りました。
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
ASD息子とお笑いライブへ!?
ASDのある小3ミミ。最近は動画サイトで関西弁を少し覚えて家や学校でも使っていました。ミミは関西弁に興味がある?それなら…!と本物の関西弁を体感させたいと思い、お笑いライブに連れて行こうと計画!早速1ヶ月後にあるお笑いのチケットを取りました。
ライブ当日。ミミがきっかけでライブに行こう!と思い立ったので、「ミミのおかげだよ、ありがとうね」と伝えました。そして2人でいざ出発。
会場までは電車で40分ほど。乗り物があまり好きではないミミは途中から靴を脱いで座席に足をのせていました。エレベーターに乗るときも、混んでいるのが好きではないので「嫌だなぁ」と言っていて不安だったのですが、ライブが始まると大きな声で笑うミミ。
「めっちゃ面白いね!」と話しかけてくることもあり、楽しめているようで良かった!と思いました。ライブは前半1時間、休憩が入り後半1時間ほどあり、ミミは途中でちょっとお疲れ気味に…途中で帰ろうかとも思ったのですが、ところどころで笑っていたので最後までいることにしました。
ライブ当日。ミミがきっかけでライブに行こう!と思い立ったので、「ミミのおかげだよ、ありがとうね」と伝えました。そして2人でいざ出発。
会場までは電車で40分ほど。乗り物があまり好きではないミミは途中から靴を脱いで座席に足をのせていました。エレベーターに乗るときも、混んでいるのが好きではないので「嫌だなぁ」と言っていて不安だったのですが、ライブが始まると大きな声で笑うミミ。
「めっちゃ面白いね!」と話しかけてくることもあり、楽しめているようで良かった!と思いました。ライブは前半1時間、休憩が入り後半1時間ほどあり、ミミは途中でちょっとお疲れ気味に…途中で帰ろうかとも思ったのですが、ところどころで笑っていたので最後までいることにしました。
ライブが終わり、息子の言葉は…
ライブが終わり今の時間を知ったミミは開口一番「もうそんな時間!?」と驚き、「え~終わった。休みが終わった~」と不満そうでした。あんなにもライブを楽しんでいたのに?ミミに話を聞くと「ゲームをやる時間がなくなっちゃった!」とのこと。
そういえばミミに始まる時間は伝えていたけど終わる時間は教えていませんでした。ミミは大好きなゲームをする時間がなくなったと思い機嫌が悪くなってしまい…。
「あーあ、ゲームの時間がなくなる」「お笑いなんてなければいいのに」と怒りの矛先をライブの方へ…。私は「お笑い芸人さんは頑張っているんだから悪くないよ、私が帰りの時間を伝えずにミミを連れてきたのが良くなかったね。ゲームできなくなっちゃってごめんね」と伝えると「全然楽しくなかった。休みが終わっちゃったよ」と何度も言いました。
さすがに悲しくなってきた私は「ごめんね。でもあんまり何度もそういわれると悲しいな」と伝えると「なんで悲しいの?」と全然分かっていない様子。
帰り道もぶつぶつと不満を口にするミミに「ミミも笑っていたのに」というと「ウソ笑いだよ」と。ミミは特性から、空気を読んだりするのが苦手です。そして長い時間の移動も頑張ってくれて疲れていることも分かっているのですが、ミミとの距離をとても遠く感じてしまいました。親子だけど私は私でミミはミミ。別の人間なんだな…とすこし物悲しい気持ちになりました。
そういえばミミに始まる時間は伝えていたけど終わる時間は教えていませんでした。ミミは大好きなゲームをする時間がなくなったと思い機嫌が悪くなってしまい…。
「あーあ、ゲームの時間がなくなる」「お笑いなんてなければいいのに」と怒りの矛先をライブの方へ…。私は「お笑い芸人さんは頑張っているんだから悪くないよ、私が帰りの時間を伝えずにミミを連れてきたのが良くなかったね。ゲームできなくなっちゃってごめんね」と伝えると「全然楽しくなかった。休みが終わっちゃったよ」と何度も言いました。
さすがに悲しくなってきた私は「ごめんね。でもあんまり何度もそういわれると悲しいな」と伝えると「なんで悲しいの?」と全然分かっていない様子。
帰り道もぶつぶつと不満を口にするミミに「ミミも笑っていたのに」というと「ウソ笑いだよ」と。ミミは特性から、空気を読んだりするのが苦手です。そして長い時間の移動も頑張ってくれて疲れていることも分かっているのですが、ミミとの距離をとても遠く感じてしまいました。親子だけど私は私でミミはミミ。別の人間なんだな…とすこし物悲しい気持ちになりました。
その後、ライブの思い出は?
帰宅後、早速ゲームで遊ぶミミ。仕方なく普段より長い時間OKにしたら機嫌も直ったようです。そして数日たったある日…雑談の中でお笑いライブ中のネタをミミが言ってきました!それ、ライブのネタだよね?と聞くと「うん、ちょっと楽しいところもあったよ」と。
私はホッとしました。少しでも楽しかった記憶が残っていて良かった…。でも次に何かに誘うときには事前準備をしっかりして、ミミの気持ちと時間を大事にしようと思った出来事でした。
私はホッとしました。少しでも楽しかった記憶が残っていて良かった…。でも次に何かに誘うときには事前準備をしっかりして、ミミの気持ちと時間を大事にしようと思った出来事でした。
執筆/taeko
(監修:初川先生より)
お笑いライブに親子で行ったエピソードをありがとうございます。楽しい時間を過ごしていたはずなのに、ちょっとしたこと(本人にとっては重大なことですが)で、一気に「楽しくなかった」と語られる出来事、多くの保護者の方には思い当たる節があるのではないでしょうか。
ミミくんはASDがあるので、taekoさんのほうで、移動中やライブ中もミミくんの「体力ゲージ」、つまりコンディションを細やかに観察されていますね。これはとても大事なことです。楽しいイベント(お笑いライブ)だからこそ、移動の多少の困難もライブ中の疲れも我慢できる…大人だからこそできる芸当で、子どもの場合、特に発達的な特性の強いお子さんの場合は特に、コンディションによって「楽しさ」が左右されます。楽しいこともつらいことになってしまう可能性もあるので、様子の変化は気を配っておきたいですね。
さて、ミミくんは休日のルーティン的なお楽しみのゲームができないことで一気に悲しくなってしまいました。今まで楽しく過ごしていたとしても、注意が「ゲームができない」に向くと、オセロで一気に白黒反転するかの如く、「全部楽しくなかった」と捉えてしまいます。これは実際の楽しさがどうであったかというよりも、現在の「ゲームできない」という出来事についての悲しさの度合いだと理解しましょう。楽しみにしていたライブ、ライブ中も笑っていたなどの実際のミミくんの様子や事実がどうであるかは本人には今は重要事項として捉えられず、今の今は「ゲームできない」で頭がいっぱいで、そこそこ楽しめたライブとゲームのできなさを総じて、“だいたいこのくらい楽しかった”のようにくるっとまとめて理解することが苦手なのだと思います。
なので、そこについて話し合いをしてもなかなかお互いが納得できるところへ行くのは難しいです。それよりも、「そうね、いつもの休日のようにゲームできなくて悲しいね」に焦点を絞って話をしたほうがイライラや悲しみは早く収まるだろうと感じます。
こうしたイレギュラーなイベントで、ルーティンの楽しい時間を取れないかもしれないときは、例えば前もってスケジュール提示をしておくことがよさそうです。「このイベント(お笑いライブなど)は、このくらいの時間がかかって、いつものゲームは同じ時間帯にはできないけれど、どうしようか」を紙に整理しながら事前に話しておきたいですね。別日に少しだけ長くゲームをする、あるいは、その日はちょっと夜更かしを許して「今日はスペシャルだよ」と例外であることをしっかりと伝えたうえで、同じ時間を取る。イベントも、ルーティンのゲームも、どちらも楽しめることで、ようやくイベントの楽しさが(ゲームを邪魔したものと上書きされることなく)純粋な楽しさとして感じられるように思います。
(監修:初川先生より)
お笑いライブに親子で行ったエピソードをありがとうございます。楽しい時間を過ごしていたはずなのに、ちょっとしたこと(本人にとっては重大なことですが)で、一気に「楽しくなかった」と語られる出来事、多くの保護者の方には思い当たる節があるのではないでしょうか。
ミミくんはASDがあるので、taekoさんのほうで、移動中やライブ中もミミくんの「体力ゲージ」、つまりコンディションを細やかに観察されていますね。これはとても大事なことです。楽しいイベント(お笑いライブ)だからこそ、移動の多少の困難もライブ中の疲れも我慢できる…大人だからこそできる芸当で、子どもの場合、特に発達的な特性の強いお子さんの場合は特に、コンディションによって「楽しさ」が左右されます。楽しいこともつらいことになってしまう可能性もあるので、様子の変化は気を配っておきたいですね。
さて、ミミくんは休日のルーティン的なお楽しみのゲームができないことで一気に悲しくなってしまいました。今まで楽しく過ごしていたとしても、注意が「ゲームができない」に向くと、オセロで一気に白黒反転するかの如く、「全部楽しくなかった」と捉えてしまいます。これは実際の楽しさがどうであったかというよりも、現在の「ゲームできない」という出来事についての悲しさの度合いだと理解しましょう。楽しみにしていたライブ、ライブ中も笑っていたなどの実際のミミくんの様子や事実がどうであるかは本人には今は重要事項として捉えられず、今の今は「ゲームできない」で頭がいっぱいで、そこそこ楽しめたライブとゲームのできなさを総じて、“だいたいこのくらい楽しかった”のようにくるっとまとめて理解することが苦手なのだと思います。
なので、そこについて話し合いをしてもなかなかお互いが納得できるところへ行くのは難しいです。それよりも、「そうね、いつもの休日のようにゲームできなくて悲しいね」に焦点を絞って話をしたほうがイライラや悲しみは早く収まるだろうと感じます。
こうしたイレギュラーなイベントで、ルーティンの楽しい時間を取れないかもしれないときは、例えば前もってスケジュール提示をしておくことがよさそうです。「このイベント(お笑いライブなど)は、このくらいの時間がかかって、いつものゲームは同じ時間帯にはできないけれど、どうしようか」を紙に整理しながら事前に話しておきたいですね。別日に少しだけ長くゲームをする、あるいは、その日はちょっと夜更かしを許して「今日はスペシャルだよ」と例外であることをしっかりと伝えたうえで、同じ時間を取る。イベントも、ルーティンのゲームも、どちらも楽しめることで、ようやくイベントの楽しさが(ゲームを邪魔したものと上書きされることなく)純粋な楽しさとして感じられるように思います。
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