2歳10ヶ月、食事に関する勉強を始めて

まゆみに自閉スペクトラム症と知的障害の診断がついたことをきっかけに、食育についてちゃんと学びたいと思った私は乳幼児食指導士の資格を取りました。食事環境や栄養バランスの大切さを学び、発達障害児の偏食に対してもアプローチ方法を学ぼうといくつかの本で知識を得た中、まゆみに有効な方法が3つありました。1.熱々のまま出すこと、2.素材別に分けて出すこと、3.調理に参加させてみることです。
自閉スペクトラム症と知的障害がある娘のまゆみの偏食改善に有効だった方法。1、熱々のまま出す。2、素材別に分けて出す。3、調理に参加させてみる。(イラスト、にれ)
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1については、思えばまゆみは冷めたものは食べようとしない子どもでした。これまではうどんを食べている途中でも麺が熱くなくなったら席を立っていましたが、冷めた時点でもう一度温めると食事を再開してくれるようになりました。

2、3は根本が同じところから来ているようで、まゆみは料理の成り立ちについて自分の中で納得がいくと食べやすくなるようでした。それまで「手の込んだ料理ほど食べないのはなぜ?」と不思議に思っていたのですが、一品の中に多く素材が使われている料理は元の素材がイメージしづらいために、まゆみの目には「得体のしれないもの」と映っていたのかもしれません。
今でも食べられないものの方が多いですが、素材別に分けて盛ったり、一緒に料理をすることで「元の素材が何か」が分かって食べてくれやすくなりました。

3歳、お弁当を持って療育へ行くようになってさらに変化が

まゆみが3歳になるころ、単独通所の療育に通い始めました。お弁当を持っていき、先生がマンツーマンでついてくださって一緒にお昼を食べるのですが、療育先からお弁当づくりで出された条件が2つありました。1.食べきれる量であること、2.本人の苦手なものを何か一品入れることです。

1は完食して褒められることが達成感につながり食事に前向きになるため、2は自宅外で母親以外の人と食事することで食べられるようになる食材があるかもしれないため、との理由です。また、苦手なものを選ぶポイントは、「絶対にこれは嫌いだろう」というものではなく、「食べず嫌いで敬遠しているけれど味は気に入るかもしれない」というラインのおかずを選ぶことです。

先生方の頑張りと、まゆみ自身の頑張りによって、通い始めた当初よりも食べられるおかずが増え、4歳になった今ではお弁当に持たせるとハンバーグ、焼き魚、お好み焼き、煮物、ピーマン、ミニトマト、枝豆なども食べてくれるようになりました。中にはかなり苦戦するものもあるようですが、先生に励まされるとまゆみも頑張って口に入れてくれるそうです。

偏食について思うこと

かつては娘の偏食でノイローゼ気味になっていたが、ゆるく考えるようになったら不思議と食べられるものも増えてきた。偏食についてはまゆみの「食べたい」「食べたくない」に寄り添いつつ、「これもどう?」とゆるくすすめ続けていきたいと思います。(イラスト、にれ)
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一時はまゆみの健康を思ってノイローゼ気味になるほど悩んだ偏食問題ですが、発達障害のある子どもは何かしらの理由があって食べられないものがあるということを知り、今は「野菜を食べないなら果物からビタミンを取ればいい」「肉を食べないなら唯一食べられる焼き鮭でタンパク質を補えばいい」とゆるく考えるようになりました。不思議なことに、そう考え始めてからの方がブロッコリーやキュウリ、焼き鯖やマグロカツ、エビフライなど食べられるものの幅が広がりました。食べないだろうと決めつけず、また無理に食べさせようともせず、「食卓に出ているものを期待せずすすめる」というスタンスにして私も肩の力が抜けたのが良かったのかもしれません。

親が手を加えることで食べられない理由が解消されて食べられるようになるものならラッキーで、まゆみは基本的に食べないものは食べないのです。食べられる食材が増えてきた今だからこそそう思えるのかもしれませんが、偏食についてはまゆみの「食べたい」「食べたくない」に寄り添いつつ、「これもどう?」とゆるくすすめ続けていきたいと思います。
執筆/にれ
(監修:初川先生より)
偏食をめぐるにれさんの奮闘の歴史をありがとうございます。お子さんの偏食に悩む保護者の方は多くいらっしゃることと思います。研究の歴史を読んでいるのかと思うほどに整理され、なんと素敵な試行錯誤なのだろうかと思いました。にれさんほどには実験的に突き詰めて考えることはなかなかできずとも、トライアンドエラーをするにあたっての着眼点や親としての心構えなど、参考になったと思われる方も多いのではないでしょうか(私もなるほどと思いながら読みました)。

ASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さんですと、口の中の食感が混ざっているとそれを気持ち悪いと感じる場合がある(だから混ぜご飯やサンドイッチは、一緒に一口で口に入れるより、それぞれ食べたほうが食べやすい)など、さまざまな経験則や知見も蓄積されてきていますね。調理した挙句に、知らない姿で出てくるよりも、その過程を見せてあげると安心して口に運べるというのも、見通しがないと行動しづらいという特性的な面との整合性もあり、いかにしてお子さんが安心して食べるかが大事であるんだなと感じます。頑張ってつくった食事を食べてくれないのは、そこに他意はないと分かっていても、保護者としてはつらくなりますね。「食べられないものがある」、ただそれだけで、それ以上に過剰な意味づけをせず(例 「お母さんのことが好きじゃないから食べたくない」のではない)、お子さんの食行動の育ちを見守っていただければと思います。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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