自閉症の子「クレーンばかりで発語なし」、言葉を引き出すために必要な4つの段階ーー言語聴覚士の支援例から【マンガ専門家体験】

ライター:専門家体験談
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専門家の先生がみてきた子どものエピソードをもとに、分かりやすくマンガ化してお届けする新企画。今回は、ほぼ発語がない自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとのコミュニケーションに悩む保護者のエピソードをお届けします。

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監修: 西野将太
一般社団法人日本言語聴覚士協会理事 学校教育部長
医療・福祉機関(医療型入所施設)に勤務後、現在は訪問看護ステーションにて訪問リハビリ業務や保育所等訪問支援での療育や園や学校への巡回指導にも携わっています。子どもの発達支援に取り組みながら、日々子どもや家族から学ばせてもらっています。地域支援として園や学校等との連携や、家族支援(きょうだい含む)にも取り組んでいます。

「クレーンではなく言葉で伝えてくれたら…」自閉スペクトラム症のある子どもの保護者

発達障害の専門家が出会った子どもたちや、その保護者の抱えていたリアルな「困った!」をもとに、対応策などをドキュメントタッチで解説します。今回は、ほぼ発語がない自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとのコミュニケーションの悩みにまつわるエピソードです。
ほぼ発語がない、自閉スペクトラム症と知的障害のある4歳半の子ども。母は「クレーンばかりで何を伝えたいのか分からなくてつらい」「ほかの子みたいに言葉で伝えてくれたら」「せめて指さしでも…」と思い悩んでいる様子。
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言語聴覚士のもとを訪れた親子。「まずはお子さんのコミュニケーションを受け止めてあげませんか」と言われる。発語や指さしにつなげていくためのアドバイスも受ける。
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言語聴覚士のアドバイスを実践する母。絵カードもつくってみる。しばらく経ったある日、「ちいいいい」と言えるようになり喜ぶ母の様子。
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マンガ/taeko

解説:クレーンも言葉も、コミュニケーション手段の一つーー言語聴覚士

今回は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとのコミュニケーションに悩む保護者のエピソードをもとにマンガ化してお届けしました。

発達障害のある子どもの保護者の方から「クレーンではなく、言葉で伝えられるようになってほしい」というご相談をよくいただきます。マンガでも描いていますが、大切なのは「クレーンも指さしも言葉も、コミュニケーション手段の一つである」という考え方です。

ポイント1.今、子どもが手段としているコミュニケーションを受け入れる

ポイント2.子どものコミュニケーションについて、場面と手段を整理して、伝えたい意図を確認する
例えば、場面:お腹が空いている 手段:保護者の手を取って冷蔵庫の前に誘導する など。

ポイント3.指さしや発語といったコミュニケーションにつなげるために、同じ物を見て、ことばで伝えることや顔(表情や口形)への注目の機会を増やす
同じ物を見て言葉を伝えたり、物を指さしながら名前をはっきり言って口の動きを見せるようにしましょう。

ポイント4.絵カード等を活用することで、要求やコミュニケーションにつなげていく
マンガのように、物が近くにない場合にも伝える手段として有効です。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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