自己肯定感の低い赤ちゃんはいない

――分析して、自分自身も子どものことも周りのことも俯瞰して見て、フラットなところで見られるようになるというのが特別支援教育の考え方なんでしょうね。私も、長女(※重度の障害があり、特別支援教育を受けている)が生まれるまでは、そんなことを全然考えたこともなかったです。

平熱 障害のある子どもたちって、周りが思ってるほど、自分のことを別にかわいそうなんて思っていないと、しょっちゅう感じるんですよね。障害がないとされてるわたしたちの方がよっぽど自己肯定感が低くて、よっぽど生きづらいんじゃないかと思うことは、本当によくあります。

――自己肯定感は、つぶされなければ伸びる、ということも書かれていますね。
「自己肯定感はつぶさなければ伸びる」「特別支援教育、全人類に効果あり」熱血じゃないからこそ響く?Twitterフォロワー数7万人の平熱先生がつぶやきに込めた思いをーー発達ナビ編集長対談の画像
「自己肯定感は伸ばさなくても、つぶさなければ伸びるのよ。」(P8より)
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平熱 自己肯定感が低い赤ちゃんって、多分いないですよね。それは、つぶされることがないから。赤ちゃんは基本的に、何かひとつできれば褒められます。失敗しても仕方ないと思われる。じゃあ、いつごろから自己肯定感が下がるようになるのかというと、比較されるようになるときからじゃないかと思うんです。「あの子はできるのに自分はできない」ということを、自分が認識する以上に周りに言われる場面が増えてくる。たとえば歌が好きで歌っていただけなのに音痴だと言われるとか。「あの子はできるのにどうしてあなたはできないの?」と言われて周りにつぶされてしまうのです。

ひとまとめにするのはよくないですが、わたしの体感だけで言えば、中等部以降で特別支援学級から特別支援学校に来た生徒は、けっこう自己肯定感をつぶされてくることが多いと感じます。その一方で、小学部入学時から特別支援学校にいる子どもは、いい意味であんまり周りを気にしない子どもたちが多く、周りの子どもが好きなことに対してとやかく言わない。高等部の子どもが「戦隊もののヒーローが好き」と言ったら、一般的には「もう小さい子どもじゃないんだから」と言われてしまうところだけど、「カッコいいよね!」と言われる環境で育っていくんですよね。だから小学部からずっと特別支援学校に在籍していた子どもは、自己肯定感がそんなに低くないように見えます。

周りの人ができているからわたしもできなくちゃ、なんて思う必要はないんです。昨日できなかったことが今日できたらそれを自分の中で褒めればいいだけなんだと、特別支援学校で教えてる中で思いますね。

特別支援教育の話、日々のなかで気楽に読んでほしい

平熱先生と、取材するLITALICO発達ナビ編集長
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――最後に、発達ナビ読者へのメッセージをお願いできますか?

平熱 日々の仕事に家事にいろんな用事に、かつ、ちょっと育てづらいお子さんを育ててるというそれだけで、おそらく毎日パンパンだと思うんですよね、皆さん。時間的にもメンタル的にも体力的にも。そんな日常の中に、さらに新しい知識とか情報を入れるって本当に大変だと思います。この本は、どこから読んでもいいし、1見開きだけなら数十秒で読めます。なんの意味もないことも書いてますけど(笑)、役に立つこともたまには書いてると思うので、疲れているときにちょっと手にとって見てほしいし、イラストを見るだけでも息抜きになります。気づいたらつまんでいるお菓子くらいの読み方をしてもらえたらいいですね。
むつかしい話、嫌いなんで!(笑)

――今日はありがとうございました!
「ここ塗ってね」と画用紙を指差したわたしの指を丁寧に塗りたくってくれる特別支援学校って最高じゃない?
平熱
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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