LD・SLD(限局性学習症)とは?タイプ別の特徴や原因、診断基準、支援方法などを解説【保存版!発達ナビLD・SLDコラム一覧/専門家監修】
ライター:発達障害のキホン
LD・SLD(限局性学習症)は、学習において困難さがみられる発達障害の一つです。学校教育が始まる就学期になって診断されることがほとんどですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である手を使った微細運動の困難などがあることでその兆候に気づかれることもあります。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
LD・SLD(限局性学習症)とは?
LD・SLD(限局性学習症)は、読み、書き、計算などの学習において困難さがみられる発達障害の一つです。行政や教育現場では学習障害と呼ばれることもあります。
言葉は聞けているのに意味の理解が難しかったり、文章を1行ずつ読むことができなかったりと日常生活や学校生活で困難が生じることがあります。
学校教育が始まる就学期になって気づかれることが多いですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である手先を細かく動かす微細運動に困難があることでその兆候が表れていることもあります。
LD・SLD(限局性学習症)は困りごとの種類により、
・読むことやその内容を理解することの困難さ(読字不全)
・書くことの困難さ(書字表出不全)
・数の理解や計算をすることの困難さなど(算数不全)
の3つに分けることができます。
※『DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)』以前ではそれぞれ「読字障害」「書字表出障害」「算数障害」と呼ばれていましたが、『DSM-5-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版改訂版)』より「読字不全」「書字表出不全」「算数不全」と名称が変わりました。
■LD・SLD(限局性学習症)と知的障害との違いは?
学習への困難がある障害として、知的障害(知的発達症)もよく挙げられます。
2つの違いとして、知的障害(知的発達症)はIQ(知能指数)で表される知的能力の遅れにより読み、書き、計算などの学習に遅れが生じます。対してLD・SLD(限局性学習症)では、IQとは関係なく学習に困難が生じるという違いがあります。
言葉は聞けているのに意味の理解が難しかったり、文章を1行ずつ読むことができなかったりと日常生活や学校生活で困難が生じることがあります。
学校教育が始まる就学期になって気づかれることが多いですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である手先を細かく動かす微細運動に困難があることでその兆候が表れていることもあります。
LD・SLD(限局性学習症)は困りごとの種類により、
・読むことやその内容を理解することの困難さ(読字不全)
・書くことの困難さ(書字表出不全)
・数の理解や計算をすることの困難さなど(算数不全)
の3つに分けることができます。
※『DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)』以前ではそれぞれ「読字障害」「書字表出障害」「算数障害」と呼ばれていましたが、『DSM-5-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版改訂版)』より「読字不全」「書字表出不全」「算数不全」と名称が変わりました。
■LD・SLD(限局性学習症)と知的障害との違いは?
学習への困難がある障害として、知的障害(知的発達症)もよく挙げられます。
2つの違いとして、知的障害(知的発達症)はIQ(知能指数)で表される知的能力の遅れにより読み、書き、計算などの学習に遅れが生じます。対してLD・SLD(限局性学習症)では、IQとは関係なく学習に困難が生じるという違いがあります。
LD・SLD(限局性学習症)の原因は?
LD・SLD(限局性学習症)の原因は、脳の中枢神経系の機能障害だと言われていますが、明確には特定できていないのが現状です。
少なくとも保護者の育て方や愛情不足、勉強の教え方などがLD・SLD(限局性学習症)の原因ではないことは分かっています。
少なくとも保護者の育て方や愛情不足、勉強の教え方などがLD・SLD(限局性学習症)の原因ではないことは分かっています。
LD・SLD(限局性学習症)の診断基準、治療法について
ここでは、LD・SLD(限局性学習症)の診断基準を簡単に紹介します。
以下の学習の困難が1つ以上、6か月以上続いていることが基準となっています。
・文字を読むことの困難がある
・文字が読めても意味理解に困難がある
・文字を書くことに困難がある
・数学的な概念の理解や計算に困難がある
・推論することに困難がある
実際にはさらに詳細な診断基準のもと、子どもの様子や検査結果、保護者、学校関係者からの情報などを踏まえて判断されます。
LD・SLD(限局性学習症)の診断を受けるのは、小学校入学以降が多いですが、読み書きなどを習い始める年中に診断を受ける場合もあります。実際にある調査においては診断時期は6歳~9歳が多いですが、4歳、5歳で診断を受ける子どもも若干いるという結果も出ています。
現在、LD・SLD(限局性学習症)の根本的な治療法はありませんが、環境調整や一人ひとりの特性に応じた対処をすることで困りごとの軽減を図っていきます。
例えば、一行ずつ順番に文章を読めない子どもには定規や下敷きを当てながら読むという工夫をしたり、漢字の読みが苦手な子どもにはプリントにフリガナをつけるなどがあります。詳しい対処法は第4章で紹介します。
以下の学習の困難が1つ以上、6か月以上続いていることが基準となっています。
・文字を読むことの困難がある
・文字が読めても意味理解に困難がある
・文字を書くことに困難がある
・数学的な概念の理解や計算に困難がある
・推論することに困難がある
実際にはさらに詳細な診断基準のもと、子どもの様子や検査結果、保護者、学校関係者からの情報などを踏まえて判断されます。
LD・SLD(限局性学習症)の診断を受けるのは、小学校入学以降が多いですが、読み書きなどを習い始める年中に診断を受ける場合もあります。実際にある調査においては診断時期は6歳~9歳が多いですが、4歳、5歳で診断を受ける子どもも若干いるという結果も出ています。
現在、LD・SLD(限局性学習症)の根本的な治療法はありませんが、環境調整や一人ひとりの特性に応じた対処をすることで困りごとの軽減を図っていきます。
例えば、一行ずつ順番に文章を読めない子どもには定規や下敷きを当てながら読むという工夫をしたり、漢字の読みが苦手な子どもにはプリントにフリガナをつけるなどがあります。詳しい対処法は第4章で紹介します。
LD・SLD(限局性学習症)の特徴
LD・SLD(限局性学習症)は主に読み、書き、計算に困難が生じますが、それぞれ以下のように分類されています。
・読字不全
・書字表出不全
・算数不全
・読字不全
・書字表出不全
・算数不全
読字不全
読字不全とは、文字を「読む」ことに困難がある状態のことを指します。ディスレクシア、読字障害、識字障害、読み書き障害、難読症などと呼ばれることもあります。
文章を正確に読むことが難しい、すらすら読むことが難しい、読むことができても内容を理解することが難しいなどの困難を抱えることがあります。
具体的には以下のような困難があります。
・文字を一つひとつ拾って読む逐次読みをする
・文字間や行間が狭いと読みづらくなる
・文末を正しく読むことができない
・文字を読んでいるとひどく疲れる など
文章を正確に読むことが難しい、すらすら読むことが難しい、読むことができても内容を理解することが難しいなどの困難を抱えることがあります。
具体的には以下のような困難があります。
・文字を一つひとつ拾って読む逐次読みをする
・文字間や行間が狭いと読みづらくなる
・文末を正しく読むことができない
・文字を読んでいるとひどく疲れる など
ディスレクシア(読字不全)とは?症状の特徴や生活での困りごとは?
書字表出不全
書字表出不全とは、文字を「書く」ことに困難がある状態のことを指します。ディスグラフィアと呼ばれることもあります。
文字をマスや行から大きくはみ出して書いたり、鏡文字になってしまうなどの特徴が見られることがあります。
ほかにも以下のような困難があります。
・字や文章を書くことに苦手意識がある
・「ね」と「ぬ」など似た文字の書き分けが難しい
・「を」と「お」など似た読みの文字の書き分けが難しい
・画数が多く複雑な漢字を書くこと難しい など
文字をマスや行から大きくはみ出して書いたり、鏡文字になってしまうなどの特徴が見られることがあります。
ほかにも以下のような困難があります。
・字や文章を書くことに苦手意識がある
・「ね」と「ぬ」など似た文字の書き分けが難しい
・「を」と「お」など似た読みの文字の書き分けが難しい
・画数が多く複雑な漢字を書くこと難しい など
「書くのが苦手」はディスグラフィア(書字表出不全)かも?症状、原因、困りごと、対処法まとめ【専門家監修】
算数不全
算数不全とは、算数や数式など「数字に関する能力」に困難がある状態のことを指します。ディスカリキュリアと呼ばれることもあります。
数字や数式の扱いや、考えて答えにたどり着く推論が苦手などの症状が見られることがあります。数字に関する能力にのみ障害がある人が多いため、算数の学習を始めてから発見される場合が多いと言われています。
具体的には以下のような困難があります。
・数字の概念(1の次は2など)の理解が難しい
・暗算ができない、または時間がかかる
・繰り上がり、繰り下がりなどの概念の理解が難しい
・文章題から計算方法を推論することが難しい など
数字や数式の扱いや、考えて答えにたどり着く推論が苦手などの症状が見られることがあります。数字に関する能力にのみ障害がある人が多いため、算数の学習を始めてから発見される場合が多いと言われています。
具体的には以下のような困難があります。
・数字の概念(1の次は2など)の理解が難しい
・暗算ができない、または時間がかかる
・繰り上がり、繰り下がりなどの概念の理解が難しい
・文章題から計算方法を推論することが難しい など
算数障害とは?チェックリストや症状、診断、対処法まとめ【専門家監修】
LD・SLD(限局性学習症)の併存症
LD・SLD(限局性学習症)に多い併存症としてADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)が挙げられます。それぞれ紹介します。
ADHD(注意欠如多動症)
ADHD(注意欠如多動症)は、話を集中して聞けない、なくしものが多いといった「不注意」、体を絶えず動かす、思いついたことをすぐしゃべる、順番を待てないなどの「多動性」「衝動性」の特性があり、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。LD・SLD(限局性学習症)との併存率は30~40%とも言われています。
ASD(自閉スペクトラム症)
ASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。知的障害(知的発達症)を伴うこともあり、LD・SLD(限局性学習症)との併存率は約26%とされています。
うつや不登校など二次障害につながることもある
LD・SLD(限局性学習症)があることで、うつや不登校など二次障害が生じる可能性もあります。
LD・SLD(限局性学習症)の影響で勉強がうまく進まなかったり、叱責をうけたりすることが重なることで思い悩むことが、抑うつ状態や不登校のきっかけともなり得ると言われています。
LD・SLD(限局性学習症)の影響で勉強がうまく進まなかったり、叱責をうけたりすることが重なることで思い悩むことが、抑うつ状態や不登校のきっかけともなり得ると言われています。