発達障害娘、泣いて通う習い事…辞めさせる?障害に気づかなかった頃

ライター:よしだ
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わが家の長女は現在中学1年生。小学校5年生の時に軽度の知的障害・ASD・場面緘黙と診断されています。今回は、長女の小学校低学年の頃の習い事についてお話しします。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

小学1年生:字がきれいに書けない!

長女が通っている小学校では、低学年の国語の課題と言えば「字を正しくきれいに書く」ことがメインでした。しかし、長女にとってはこれがとても難しかったのです。

1年生のひらがなの書き取りでは、長女の書く文字は芯がないというか、なんだかフニャフニャした字形になっていました。担任の先生にも毎回訂正をされていて、書き取り用のノートは真っ赤になっていました。でもこの時の私は、長女に知的な障害があるとは全く気づいておらず、「字はきれいな方がいいかな……」といった程度にしか考えていませんでした。
漢字の書き取りでは、毎回訂正の赤字がいっぱいで……。
漢字の書き取りでは、毎回訂正の赤字がいっぱいで……。
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そこで私は長女を硬筆の習い事に通わせることにしました。長女本人の意思ではなく、無理やりだったので本人のやる気はもちろんゼロ。長女は講師の先生とお話をするのにもかなり緊張していて、数ヶ月通っても一向に上達しませんでした。

ある日、硬筆の習い事に行く前につらそうな表情をしている長女を見て、なんだかかわいそうな気持ちになってきました。別に小学校低学年の今頑張らなくても、成長していけば次第に字をきれいに書けるようになるかもしれない。本人がきれいに書きたいと自覚を持ったら書き方が変わるかもしれない。そう思って私は長女の硬筆の習い事を退会させることにしました。もう行かなくていいと知った時の長女のうれしそうな顔………。本当につらかったのだなと思いました。

現在中学1年生になった長女ですが、相変わらず書く文字はフニャフニャとしています。字をきれいに書くことがいいこと、きれいに書きたいと本人が思える日が来た時にはまた練習を頑張るかもしれませんが、今はまだこのような状態です。
わが子には「きれいな字を書けるようになってほしい」と願うのも親心だけど……。
わが子には「きれいな字を書けるようになってほしい」と願うのも親心だけど……。
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小学2年生:算数の習い事が続かない

長女は4歳の頃から自学自習形式の塾に通っていました。受講していた科目は算数と国語で、最初は簡単なひらがなや点つなぎからスタートする教材でした。最初はゲームのようで面白かったようですが、だんだんと難易度が上がるにしたがって、通うのを嫌がるようになりました。

長女がとくに難しく感じるようになったのは算数で、単元の難易度は小学2年生の足し算くらいだったと思います。塾だけが特に早い進度ではなく、学校の授業と同程度の進度でしたが、長女にとってはつらかったようです。とうとう、習い事の日は泣き出すようになってしまいました。

ここでもう少し言い聞かせて習い事を続けていたら、もしかしたら算数を好きになっていたのかもしれませんが、小学2年生の頃に退会しました。私の中で、泣いてでも頑張らせた方がいいのか、判断がつかなくなってしまったのです。現在は知的障害の診断を受けたので「算数の習い事、そりゃあ難しかっただろうね、つらかったね」と思いますが、当時はこれでいいのかとモヤモヤしたことを覚えています。
当時小学2年生の長女は、算数の習い事に行く前になると、泣き出してしまうようになって……。
算数の習い事に行く前になると、とうとう泣き出してしまうようになって……。
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現在中学1年生の長女が通っている習い事は、バイオリンと個別の学習塾の2つです。学習塾については毎回文句を言いながらも通っています。塾には行きたくはないけれど本人の中で「中学生は勉強するもの」という認識があるので仕方なく、といった感じでしょうか。いっぽうでバイオリンは本人が希望して始めた唯一の習い事で、こちらは楽しそうに通っています。

本来の習い事とはこういう楽しいものをやるべきなんだろうなと思いつつ、「もう少し勉強にも興味をもってほしいな」と親としては願ってしまいます。


(監修:初川先生より)
長女さんの小学校低学年時の習い事についてのエピソードをありがとうございます。
字をきれいに書けるようになるために硬筆を習うことで上手に書けるようになる子もいますが、お手本を見て、自分の書こうとしている升目の同じところから書き始めて、お手本と同じようにマス目の4分割したどこを線が通って、どう曲がったり止めたりして……と字をきれいに(お手本にならって)書くというのは手と目の動きを協応させたり、視覚的な認知や俯瞰する力などが問われるなかなかのマルチタスクです。
単に回数をこなせば上手になるわけでもなく、いらこさんがご指摘のように本人のモチベーションもだいぶ必要だろうなと感じます。場合によっては、家で大きな紙に大きく練習したほうが上達の近道になる場合もあるかもしれません。

算数や国語など教科学習に関する自学自習の塾も、繰り返して習熟する段階の内容で、かつ、繰り返して学ぶことが向いているお子さんには良いと思います。ただ、そもそもつまずきがある場合は、そこを乗り越えるのが困難なセッティングではあるので、どこかで壁にぶつかることもあるだろうと思います。

習い事は本人にとって得られるだろう良きことと、精神的・体力的負担などとのバランスを見ながらご検討いただければと思います。
特に低学年の時期は、学校に行って帰ってくるだけでへとへとのお子さんもいると思います。コンディションの悪い状態ではどれほどいいことをしたところで、なかなか良い時間とならない場合もあります。体力や余力のある小学校高学年くらいから始めてうまくいった方もおられます。
興味関心、必要性、お子さんの状態やモチベーションなどさまざまな点からぜひご検討ください。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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