緘黙になる太郎を見ていると

太郎が3年後に言葉にしたことを、文章に表せるかといったらあやしいところです。いまだに放課後等デイサービスの先生がつきっきりで作文作成を手伝ってくださっているからです。

社会科見学のことだけでなく、日常の中で何年も前の出来事をつい最近のことのように話し出すことが時々あります。太郎には頭の中にはたくさんの気持ちや感覚が記憶されているんだろうと思っています。

言語化につまっている太郎に歯がゆさを感じることも以前は多々ありました。それは言語化につまるだけではなく癇癪も伴っている時期でした。

太郎の癇癪がおさまってきた頃にはある程度の「YES」「NO」のやり取りができていたので、私も落ち着いて接することができるようになりました。緘黙になる太郎を見ていると胸がつまることもありますが、「今の太郎はどういう状況なのだろう」と私が見守ることで、太郎の気持ちも変わってくるのではないかと思い、客観的に太郎と自分の状況を見るように心がけています。

執筆/まゆん
(監修:森先生より)
発達障害のある方の中には、頭の中での情報が多すぎて処理に時間がかかり、周りから見るとフリーズしているように見えることがあります。本人の中である程度パターン化して蓄積されているケースでは問題がなくても、「こぼしてしまった時」など、あまり経験がないアクシデントに遭遇するとパターン化されていないために情報処理に時間がかかってしまいます。

さて、その意味で、作文はかなり複雑な課題となります。基本的には初めての経験に対して、まず事実関係を本人の中で整理して、その中で書くべきことを選別しないといけません。そしてその事実に対しての感想を書くわけですが、「作文向き」でないといけないわけです。
たとえば学校行事で工場見学に行った場合、本人としては「〇〇線の電車に初めて乗った、電車内のこんな出来事が印象に残った」「工場の案内をしてくれた人の口癖がこんなふうで面白かった」など、実際には大量の事実と感想があるわけです。しかし、作文として提出するには、その中から先生の期待する事実と感想を選び出して「工場見学の感想文」らしく仕上げないといけません。これは、特に発達障害のある子どもにとっては重い作業です。

たとえ感想を述べることが苦手であっても、本人の中ではしっかりと記憶に残っていて、多くのことを感じているので、安心して見守りましょう。
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https://h-navi.jp/column/article/35029626
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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