1歳半健診で「様子見」、幼稚園でも困り続出…やっぱり発達障害?3歳児健診に行くと…【小児科医アドバイスも】

ライター:ネコ山
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わが家の5歳の息子はADHDとASDの傾向があり、児童精神科医からはグレーゾーンと言われています。1歳半健診で「様子見」と言われていた息子ですが、発達検査を初めて受けたのは5歳になってからでした。今回はそんな息子の幼稚園に入園してから出てきた困り事と3歳児健診でのお話です。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。

幼稚園入園と同時に表れてきた息子の困り

年少の4月から幼稚園に入園した息子。まず先立って心配だったのがトイレのこと。
トイレトレーニングがなかなかうまくいかず、難航していた息子。なんとか入園式の5日前にトイレで排尿ができるようになり、入園式には布パンツで行けました。
しかし心配事はほかにも……。

まず息子は幼稚園のエントランスにある掲示物が気になって、登園してもなかなか上履きに履き替えられませんでした。
息子の幼稚園にはさまざまなポスターや、かわいらしい壁面飾り、ときには天井にぶら下がるような飾りも掲示してあります。息子は朝登園するたびにそれらに釘付けになり、なかなか上履きに履き替えられませんでした。
幼稚園のエントランスには、さまざまなポスターや、かわいらしい壁面飾り、ときには天井にぶら下がるような飾りも掲示してありました。
ポスターや、かわいらしい壁面飾り、ときには天井にぶら下がるような飾りも掲示してあって……。
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息子の幼稚園は通園バスで登園するのではなく、毎朝幼稚園のエントランスまで保護者が送っていきます。

年少の靴箱の前で私は何度も外靴を脱ぐように促すのですが、息子の耳には入っていないようす。息子に触れながら話しかけたり、大きめの声で声かけしたりしましたが掲示物に見入っている息子は「今それどころじゃないんですけど?」のような表情で掲示物に見入り、取り合ってはくれません。

最終的には先生と一緒に靴の履き替えを促したり、そばにいたお友達と一緒に行こうと声かけするなどをして、毎朝なんとか年少の部屋まで送り出していました。
息子はエントランスの飾りにくぎ付け! いっこうに上靴に履き替えようとはせず…!
飾りにくぎ付け! いっこうに上靴に履き替えようとはせず…!
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壁面飾りや掲示物に夢中で……というと、3歳児のあるあるエピソードのように感じますが、毎朝毎朝幼稚園に行くたびに上履きに履き替えるというただそれだけのことに、親としてこんなにも労力がいるとは思ってもいませんでした。

幸い息子は入園当時、行きしぶったり母親である私と離れることを不安がったりするタイプではありませんでした。行きしぶりや母子分離不安ならまだ理解がしやすいのですが、ただ上履きを履き替えるだけのことでこんなにも手こずるとは思ってもみませんでした。
結局、年少の1年間は毎朝、上履きに履き替えることに時間がかかっていました。

また「今日は幼稚園で何したの?」と聞いても、私が聞きたいような「お砂場した」や「ねんどした」などの活動内容を答えてはくれず、いつも「おにくたべた」とお昼ごはんのメニューを答える息子。
息子は幼稚園でやっていけているのだろうか……不安がつのっていきました。

幼稚園、最初の個人面談では

入園して3ヶ月後に、担任の先生と初めての個人面談がありました。息子は幼稚園でやっていけているのか……不安な気持ちの中、思い切って息子の幼稚園での様子を聞いてみました。

すると、お友達の名前をすぐに覚える、お友達の名前を呼んでコミュニケーションをとっている、絵が上手で同級生はまだ顔だけか頭足人を描くことが多いけど息子は胴体がある絵を描くことができている、など予想以上に担任の先生は息子のことを褒めてくれました。
幼稚園最初の個人面談。担任の先生は息子のよいところを見つけて褒めてくれました。
幼稚園最初の個人面談。担任の先生は息子のよいところを見つけて褒めてくれました。
Upload By ネコ山
担任の先生が息子のいいところを見つけてくれていることに、ひと安心しました。
しかし、毎朝上履きの履き替えがスムーズにいかないこと、また、1歳の頃から多動でその印象が強いことから集団生活でやっていけているのか、私は不安が拭えていませんでした。

思い切って「発達的にはどうですか?」とうかがうと「朝の登園の様子なども、3歳児という幼さからなのか、発達によるものなのかまだ分からない」とのこと。続けて「気になるようだったら発達センターを紹介しますが、まずは3歳児健診を受けてみてもいいかもしれません」と、『受診目安は3歳半過ぎてから』と(私の住む自治体では)なっている、まだ受けていなかった3歳児健診を奨められました。

何も指摘されなかった3歳児健診。しかし幼稚園では……

幼稚園の個人面談から2ヶ月後、3歳児健診を受けました。
1歳半健診では「様子見」と言われた息子。今日こそ、息子の発達について指摘される……。問診票には、発達障害のスクーニングと思われるような内容もあり、息子は多くの項目に当てはまっていました。

医師の診察・問診では、イスに1人で座って問診を受け答えする息子。問診票を提出しましたが、息子は発達について何も指摘されずに3歳児健診が終わりました。
確かにイスに一人で座って、先生とも受け答えできていたので、問題ないとの判断だったのでしょうか……。

担任の先生のその旨を伝えると、少し驚いた表情をしたような気がしますが、それ以上は何も言われせんでした。
私は絶対に発達について指摘されると思っていたので、医師にそれを全く触れられないことに意表を突かれ、むしろ自分が『息子は発達障害』だと思い込んでいただけなのでは……?  ホッとすると同時にうれしささえ感じていました。

しかし、夏休みが終わり2学期に入ると、息子は日に日に幼稚園での癇癪が激しくなっていきました。「やっぱり発達障害があるのかな……」と、私は再び不安になっていくのでした。
執筆/ネコ山

(監修:新美先生より)
掲示物に目を奪われて没頭してしまうというのは、自閉スペクトラム症の特性のあるお子さんでしばしばみられることですね。
ですが、今回のエピソードをうかがうと、朝の登園の時にそれが顕著に目立ったということからは、おそらく視覚刺激に没頭しやすいという特性がある上に、入園して慣れない集団生活の場にこれから入っていくという朝の園のエントランスで、掲示物に没頭することで、ある種の現実逃避というか、尻込みする気持ちの表れともいえるのかもしれないと思いました。

「行きしぶり」というような分かりやすく「行きたくない」と伝えるのではなくても、家を出るときにこだわりが発揮されて時間がかかる、登園の道のりで何かに没頭してしまう、今回のように保護者との別れ際でフリーズしてしまうというようなエピソードの多くは、本人なりの集団生活への不安や抵抗感が反映されていることも多いです。

とはいえ、健診の場ではそうした些細な本人の特性ある行動は気付いてもらえないことも多く、保護者としては振り回されたりやきもきすることも多いですね。
前の記事はこちら
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。


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