提出物が大事な本当の理由とは…?

小学校時代はそんな感じだったタケルですが、中学生になると「どうすれば提出率を上げられるか」を自分で考え始めました。
 
と、いうのも、進学した私立中学校では先生が「内申点が高くないと大学の推薦は出せない。内申点は成績表からほぼ自動集計され、テストの点数が5割、提出物の評価が3割、授業態度が2割。授業態度と提出物の評価は、よほどのことがなければ悪くはつけないので、テストを頑張れ」という指導をするようになったからです。
 
そして、タケルの提出率は「よほどの」レベルでした。
ASD(自閉スペクトラム症)のタケルには「ちゃんと」とか「きちんと」というフワっとした指導では響かず、「提出物の提出率が悪いと成績に影響する」と言われたほうが「悪いことだったんだ」と分かりやすかったみたいです。

苦手は克服するより避ける!?タケルの最適解

そして、タケルが考えた解決策はというと……「提出物は学校で仕上げてから帰る」という荒業!
 
提出物が多い時は「自習室に寄るので遅くなります。電車に間に合わないので迎えにきて」というメールが届くようになりました。学校までは高速を使っても30分以上かかり、往復で1時間半ほどの時間がかかる上に、高速代もかさみますが、これがタケルにとっての最適解。付き合ってあげることにしました。
タケルは「確実に持ち帰り、正確に書き、期日までに提出する」という苦手なプロセスを克服するよりも、「学校で仕上げて提出する」というシンプルな方法を選んだのです。正直私は「賢いな~」と思いました。
苦手なことを克服することは大切ですが、自分の苦手なことを避けて結果に到達する方法を考えることも時には必要だと思います。
この「提出物は学校でやる」というタケルのハックは、大学院生になった今でも続いています。
執筆/寺島ヒロ
(監修:森先生より)
提出物に関する体験談をありがとうございます。提出物を忘れるとどう困るのかが分かりにくかったのかもしれませんね。忘れると成績の評価に響く、と意識したら、どうしたらいいかを真剣に考える必要が出てきたのでしょう。
実は、「学力と成績が必ずしもリンクしない」という問題は、発達の偏りのあるお子さんに多くみられます。好奇心旺盛で勉強が好きでも、提出物や遅刻などの生活態度面で、学校での総合的な評価が下がってしまうという「もったいない」ケースが少なくないのです。
締め切りを守れなかったり、忘れ物をしてしまう、という場合も、決して自分を責める必要はありません。発達の偏りという特性から起きてしまうミスですから、まずは「ミスをしたらどのように困るのか」をしっかりと意識して、「ミスが起こる原因」→「ミスをしないような仕組み」を考えて実践していくことが大切です。
タケルくんは自分で解決策を考えて習慣化したということで、とっても素晴らしいですね。これからも、困難にぶつかるたびに、こうやって工夫して乗り越えていけるのではないかと思います。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030218
水筒を3日熟成!?ADHD息子、中学生になっても忘れもの多発!声かけ、メモも効果なし。忘れ物対策、熱中症対策は?のタイトル画像

水筒を3日熟成!?ADHD息子、中学生になっても忘れもの多発!声かけ、メモも効果なし。忘れ物対策、熱中症対策は?

「個と環境の相互作用」の視点、子どもの困りごと解決にどう役立てる?公認心理師・井上雅彦先生に聞きましたのタイトル画像

「個と環境の相互作用」の視点、子どもの困りごと解決にどう役立てる?公認心理師・井上雅彦先生に聞きました

【精神科医・本田秀夫】イラつく母の「誰が汚れた服を洗うと思ってるの?」に、「洗濯機」の返答!?場の空気が読めない子への対応を解説のタイトル画像

【精神科医・本田秀夫】イラつく母の「誰が汚れた服を洗うと思ってるの?」に、「洗濯機」の返答!?場の空気が読めない子への対応を解説

ADHD息子の忘れ物対策を続けること20年!せっかくメモをしても活用できないのはなぜ?社会人2年目、ようやく自分でメモを取るようになって…!?のタイトル画像

ADHD息子の忘れ物対策を続けること20年!せっかくメモをしても活用できないのはなぜ?社会人2年目、ようやく自分でメモを取るようになって…!?

忘れ物常連!中2のASD息子「提出物を全部出す」宣言!母のアイデアと中学校の先生への支援の求め方のタイトル画像

忘れ物常連!中2のASD息子「提出物を全部出す」宣言!母のアイデアと中学校の先生への支援の求め方

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
療育支援探しバナー

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。