教育委員会の出した判定と親の希望が違う!どうする⁉
しかし、ここからまた一波乱ありました。教育委員会から出された判定は「特別支援学校が望ましい」というもので、固まったはずの方針はグワングワン揺らぎました。
月曜に判定の電話をもらい、金曜日までに就学先の最終回答をしなくてはいけないということで、考える時間は5日間しかありません。
もう一度、全てイチから検討し直そう!!と、白紙の状態から考え出しましたが、数か月かけて悩んできた道のりを数日間で再現するだけで夫婦の結論はやはり「A小学校の特別支援学級」になります。
でも、教育委員会がそう判定するからには特別支援学校にしたほうがいいんだろうか?
社会性が伸びつつある今、もう少しだけ同級生集団と過ごさせてあげたい私の考えは間違っているんだろうか?
特別支援学校が妥当と判定された子が特別支援学級へ行くと、先生やほかの子の迷惑になってしまうだろうか……?
どうにも苦しい気持ちになり、A小学校の校長先生に事情を話すと、キョトンとした声で「そもそも、どういう理由で特別支援学校という判定になったんですか?」と聞かれてハッとしました。確かに、その理由を知らないことには悩んでいても仕方がありません。けれど、膨れ上がった不安はもう止まらず、言葉が次々と口を突いて出てしまいました。
「ですが先生、重ねてのお伝えになるんですが……希望通りにA小学校へ入学させていただけたとしても、親を含めた周囲の支援者全員が『1~2年で特別支援学校へ転校するのが現実的なところだろう』と考えているんです。そんな境界上にいる子が腰かけのように特別支援学級に在籍することで先生方やほかのお子さんに迷惑がかからないでしょうか。私も夫もA小学校にお願いしたいと考えていますが、その点をとても心配しています」
すると校長先生はこんな言葉を掛けてくださいました。
「それは親御さんが考えることじゃないんですよ。それをどうにかするのが我々の仕事です。お母さんはまゆみさんにとって一番だと思える道を考えてください。まゆみさんがうちに6年間通ってもらう中で私たちも可能な限りのことはしていきます。一緒に成長を見守っていきましょう」
「6年間」という言葉に、腰かけのつもりで受け入れるのではなく、可能な限りまゆみの新しい居場所になろうとしてくださっている意思が伝わって恥ずかしながら号泣しました。いずれA小学校を去る時が来るとしても、この時の気持ちはきっと忘れません。こうしてまゆみは【A小学校の特別支援学級】へ就学することになりました。
月曜に判定の電話をもらい、金曜日までに就学先の最終回答をしなくてはいけないということで、考える時間は5日間しかありません。
もう一度、全てイチから検討し直そう!!と、白紙の状態から考え出しましたが、数か月かけて悩んできた道のりを数日間で再現するだけで夫婦の結論はやはり「A小学校の特別支援学級」になります。
でも、教育委員会がそう判定するからには特別支援学校にしたほうがいいんだろうか?
社会性が伸びつつある今、もう少しだけ同級生集団と過ごさせてあげたい私の考えは間違っているんだろうか?
特別支援学校が妥当と判定された子が特別支援学級へ行くと、先生やほかの子の迷惑になってしまうだろうか……?
どうにも苦しい気持ちになり、A小学校の校長先生に事情を話すと、キョトンとした声で「そもそも、どういう理由で特別支援学校という判定になったんですか?」と聞かれてハッとしました。確かに、その理由を知らないことには悩んでいても仕方がありません。けれど、膨れ上がった不安はもう止まらず、言葉が次々と口を突いて出てしまいました。
「ですが先生、重ねてのお伝えになるんですが……希望通りにA小学校へ入学させていただけたとしても、親を含めた周囲の支援者全員が『1~2年で特別支援学校へ転校するのが現実的なところだろう』と考えているんです。そんな境界上にいる子が腰かけのように特別支援学級に在籍することで先生方やほかのお子さんに迷惑がかからないでしょうか。私も夫もA小学校にお願いしたいと考えていますが、その点をとても心配しています」
すると校長先生はこんな言葉を掛けてくださいました。
「それは親御さんが考えることじゃないんですよ。それをどうにかするのが我々の仕事です。お母さんはまゆみさんにとって一番だと思える道を考えてください。まゆみさんがうちに6年間通ってもらう中で私たちも可能な限りのことはしていきます。一緒に成長を見守っていきましょう」
「6年間」という言葉に、腰かけのつもりで受け入れるのではなく、可能な限りまゆみの新しい居場所になろうとしてくださっている意思が伝わって恥ずかしながら号泣しました。いずれA小学校を去る時が来るとしても、この時の気持ちはきっと忘れません。こうしてまゆみは【A小学校の特別支援学級】へ就学することになりました。
就学先選びを振り返って
ドキドキしながら教育委員会に最終回答を伝えると、「特別支援学級ですね、分かりました!」とアッサリした返事。拍子抜けして電話を切った瞬間、全身に震えが来てボタボタと涙が止まらなくなったことに自分で驚きました。
何年も頭の中にあり、身を引き絞るほどにわが子の未来を考えて選び取ったまゆみの進路です。
人ひとりの人生に関わる決断の重さを知りました。
周りを見ていると、就学先選定は「まったく迷わなかった」という人と、「ノイローゼになりそうなほど迷った」という人に二分される気がします。子どもの発達や家庭の事情はそれぞれですし、どちらが良いということはありません。わが家よりもっと判断の難しいケースもあるでしょう。ただただ、この関門を通る全ての親御さんにお疲れ様ですと言いたい気持ちです。
余談ですが、特別支援学校と判定された理由はその後に思いがけず知る機会がありました。
おそらく自治体によって判定方法が異なるのと、正規の手続きで知らされたわけではないため詳細は伏せますが……わが家と同じ状況になった人の参考になるかもしれないので個人的な感想だけ書いておきます。
何年も頭の中にあり、身を引き絞るほどにわが子の未来を考えて選び取ったまゆみの進路です。
人ひとりの人生に関わる決断の重さを知りました。
周りを見ていると、就学先選定は「まったく迷わなかった」という人と、「ノイローゼになりそうなほど迷った」という人に二分される気がします。子どもの発達や家庭の事情はそれぞれですし、どちらが良いということはありません。わが家よりもっと判断の難しいケースもあるでしょう。ただただ、この関門を通る全ての親御さんにお疲れ様ですと言いたい気持ちです。
余談ですが、特別支援学校と判定された理由はその後に思いがけず知る機会がありました。
おそらく自治体によって判定方法が異なるのと、正規の手続きで知らされたわけではないため詳細は伏せますが……わが家と同じ状況になった人の参考になるかもしれないので個人的な感想だけ書いておきます。
教育委員会に不満があるのではなく、日頃の本人を知らない方々が限られた資料と20分の面談で進路を決めるシステムに限界があるのです。まゆみのような、医師やベテランの先生方でも判断に迷うような子はなおさらで、日頃から本人に接している知識と経験のある人の意見をよく聞いて、チームを組んで就学先選びを進められたら理想だなと思います。
わが家の選択が良かったかどうかは時間を重ねてみないと分かりませんが、「考えるべきことは考えつくしてまゆみの人生のコマを進めた」という完全燃焼感があります。今後もこんなことはあるのでしょうが、きっとその積み重ねが親を強くしてくれるんだろうなぁ……なんて燃え尽きた頭で思いました。
当事者の意向が最大限に尊重されるようになったのも2013年の学校教育法施行令の改正からで、それまでは決して当たり前ではありませんでした。涙を呑んだ人も多かったはずです。
4月からの一年を当たり前だと思わず、多くの幸運と多くの人の厚意の結果与えられたものと感謝して、小学生になるまゆみの伴走を務めたいと思います。
わが家の選択が良かったかどうかは時間を重ねてみないと分かりませんが、「考えるべきことは考えつくしてまゆみの人生のコマを進めた」という完全燃焼感があります。今後もこんなことはあるのでしょうが、きっとその積み重ねが親を強くしてくれるんだろうなぁ……なんて燃え尽きた頭で思いました。
当事者の意向が最大限に尊重されるようになったのも2013年の学校教育法施行令の改正からで、それまでは決して当たり前ではありませんでした。涙を呑んだ人も多かったはずです。
4月からの一年を当たり前だと思わず、多くの幸運と多くの人の厚意の結果与えられたものと感謝して、小学生になるまゆみの伴走を務めたいと思います。
執筆/にれ
(監修:新美先生より)
就学時の学校選びについてとても詳しく書いていただきありがとうございます。にれさんの行動力がすごいです。
まずは候補になる学校・学級はどんなところがあるのかについての情報収集ですね。普段通っている病院の主治医・リハビリ担当者や、療育施設担当者などに複数聞いてみるとよいでしょう。一人だけだと偏ることがないとはいえないので、複数の人に聞いてみるといいかもしれません。
候補の学校がいくつかめどがついたら、見学に行きましょう。本人を連れていくと突っ込んだ質問をゆっくりする時間がとりにくいと思ったら、保護者のみで行く日と、本人も連れて行く日を別に日程をとってもらえるといいかもしれません。
にれさんも話題にされていたように、学校は異動があるというのが盲点になります。見学して、この先生なら信頼できると思って決めたのに、年度が替わったらお目当ての先生が異動してしまって話がぜんぜん違うよ……というのはあるあるです。「この人」と一人の人のみで決めるのはリスクがあります。赴任してどれぐらいか、お住まいの地域で異動が何年単位かといった情報は参考にしつつ、異動はあるかもしれないということも考慮に入れておきましょう。
もっとも大切にするのは、お子さんが毎日そこに、楽しくのびのび通えそうかという視点です。見学に行った際の保護者の直感や、お子さんのことをよく知っている病院・療育・園の担当の先生などの意見も参考に、保護者が最善と思える選択をしていくしかないですよね。
(監修:新美先生より)
就学時の学校選びについてとても詳しく書いていただきありがとうございます。にれさんの行動力がすごいです。
まずは候補になる学校・学級はどんなところがあるのかについての情報収集ですね。普段通っている病院の主治医・リハビリ担当者や、療育施設担当者などに複数聞いてみるとよいでしょう。一人だけだと偏ることがないとはいえないので、複数の人に聞いてみるといいかもしれません。
候補の学校がいくつかめどがついたら、見学に行きましょう。本人を連れていくと突っ込んだ質問をゆっくりする時間がとりにくいと思ったら、保護者のみで行く日と、本人も連れて行く日を別に日程をとってもらえるといいかもしれません。
にれさんも話題にされていたように、学校は異動があるというのが盲点になります。見学して、この先生なら信頼できると思って決めたのに、年度が替わったらお目当ての先生が異動してしまって話がぜんぜん違うよ……というのはあるあるです。「この人」と一人の人のみで決めるのはリスクがあります。赴任してどれぐらいか、お住まいの地域で異動が何年単位かといった情報は参考にしつつ、異動はあるかもしれないということも考慮に入れておきましょう。
もっとも大切にするのは、お子さんが毎日そこに、楽しくのびのび通えそうかという視点です。見学に行った際の保護者の直感や、お子さんのことをよく知っている病院・療育・園の担当の先生などの意見も参考に、保護者が最善と思える選択をしていくしかないですよね。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。