30代後半、ついに化学繊維のニットが心地よいと気づく

30代になってようやく自分のASD(自閉スペクトラム症)を自覚した私。同時に自分の感覚過敏にも気づきました。

それで、タートルネックを避ける、ゴワゴワした素材のものを避ける、重たいものも避けるなど工夫を重ねていきましたが、「快適に着られるニットが見つからない問題」には引き続き頭を悩ませていました。

しかしある日、私はついに「化学繊維で作られたニットは実は獣毛よりも肌が敏感な人に向いている可能性がある」という情報を目にします。確か発達障害関連の英語の記事がソースだったと思います。

なんでも、ウールなどの獣毛は、高級かどうかにかかわらず意外と繊維が太くて刺激が強いことがあるのだそうです。化学繊維は獣毛よりも細くて柔らかく、かつ強いものが非常に安価に作れる。けれど獣毛の場合、化学繊維並みに繊維の細いものとなると極端に脆くて高価なものになってしまう。結果的に「ウールだとチクチクする人が、快適に着られるニットを選ぶ場合、化学繊維で作られたものを選ぶと着られることが多い」ということになるようです。

それで、試しに原材料に「毛」と書かれていないニットを探して着てみたら……チクチクしない! 感激しました。

個人的な感想としては、アクリルは膨らみ感があって温かく、ナイロンは滑らか、レーヨンはテロテロとして気持ちよく吸湿放散性もあるので蒸れずに快適、といった感じです。

「私の定番」を見つけていく

化学繊維のニットはともかくチクチクしないので、「とりあえず着られる」のが最大の利点です。次に、安価なのが魅力。

ただもちろんデメリットもあります。だいたいの化学繊維は帯電しやすい、蒸れやすい。それから、獣毛と比べて暖かさや素材感に劣る、少しでも高級志向のブランドやラインになるとそもそも獣毛の入っていないニットの取り扱い自体がない、といった点があるかな。

それでも、「獣毛のほうがチクチクする場合がある」という情報は、私の秋冬の服選びを劇的に変えました。

トップスはアクリルなどの化学繊維のニットにするか、綿のブラウスやカットソーなどの下に暖かく感触のよいババシャツを着る。ボトムスは通年素材のものの下に厚手のなめらかなタイツやレギンスを重ねる。どうしても獣毛入りのものを着たいときはジャケットなどにして、襟元の首に触れるところに不織布テープを貼ってガードする。

冬のアウターは、しっかり暖かい、機能性に優れた薄手のダウンジャケットに落ち着きました。軽い、フィットしてかさばらない、下に薄手のニット1枚でも暖かい。かといって歩いていて汗をかいてきても蒸れなくて快適、ストレッチがきいていて楽。もうフェルトとかのロングコートには戻れません。

着られるものを、着たいように着ていきたい

本当に、服はしんどいものを我慢して着る必要ないと思います。自分の素材に対する反応をよく吟味してみて、自分が何がダメなのかわかったら、あとは自分を責めることなく、そのダメな要素をいかにして避けられるかを考えて服選びをすればいい。そう思えるようになって、私はとても楽になりました。

宇樹義子/文
(監修・鈴木先生より)

感覚過敏のあるASDの方にとって、チクチクや静電気はつらいものです。自分に合った服を着るのが一番です。同じメーカーで同じ素材の服を好んで着る方も大勢います。学校の制服が嫌な方もいます。男性だと詰襟が嫌でブレザーの学校へ転校した方もいます。女性でもジャージーが好きで卒業アルバムもジャージー姿で写った方もいます。

最近私の外来ではASDの方に自律神経失調症(起立性調節障害)を併存している方を多くみかけます。天候にも左右されやすく、特に季節の変わり目が苦手で調子をくずす方が多いです。今回の「私」のような方は決して珍しくないのです。

ただ、神経発達症を診断できる医師が少ないので、30代以降の大人になってようやくASDやADHDを自覚する方が増えています。神経発達症の症状は子どもの時からあるので、「大人になってしまった神経発達症」なのです。そのような方々には、さまざまな問題を解決し、今後の人生をより生きやすくするためにも一度神経発達症を専門にしているクリニックに出向いて相談することをお勧めいたします。きっと生きやすくなるヒントが見つかるはずです。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030329
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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