「発達相談で様子見に」「小学生になって困りごとが増えた」発達支援の疑問を専門家が解説【発達ナビアンケート結果も】
ライター:発達障害のキホン

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発達支援とは、障害のある子どもや発達が気になる子どもの困りごとを軽減し、家庭や園・学校などでの日常生活を支援する取り組みです。障害の程度や子どもの年齢に応じて、利用できる発達支援は変わってきます。このコラムでは、「子どもの発達が気になる時の相談先」に関するアンケートの結果、利用できる発達支援、専門家へのQ&Aなどを紹介します。

監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
発達支援とは?子どもの発達が気になる時の相談先に関するアンケート結果も
発達支援とは?
発達支援とは、障害のある子どもや発達が気になる子どもの困りごとを軽減し、家庭や園・学校などでの日常生活を支援する取り組みです。福祉分野では、児童発達支援や放課後等デイサービスのほか、保育所等訪問支援や居宅訪問型児童発達支援などがあります。児童相談所や市町村保健センター、医師によって療育の必要性が認められた場合に、発達支援を利用することができます。また、児童福祉法に基づく障害児通所支援サービスを利用するためには、自治体から発行される「通所受給者証」が必要となります。
お子さんの発達を相談したのは何歳頃?どこに相談した?「子どもの発達が気になる時の相談先」アンケートの結果
お子さんの発達が気になっているけれど、誰に、いつ、どうやって相談すればよいのか悩んでいる保護者の方も多いのではないでしょうか。発達ナビでは、子どもの発達が気になる保護者を対象に相談先についてのアンケートを実施し、75名の方から回答をいただきました。
お子さんの発達について支援機関・支援者に相談したことがある (93%)
お子さんの発達について支援機関・支援者に相談したことはないが、これからする予定 (3%)
お子さんの発達について支援機関・支援者に相談したことがない (3%)
その他 (1%)
「お子さんの発達について支援機関・支援者に相談したことがある」が93%、「お子さんの発達について支援機関・支援者に相談したことはないが、これからする予定」が3%と、ほとんどの方がお子さんの発達について相談したことがある、あるいはこれから相談する予定であることが分かりました。
※本アンケートは発達ナビ内の「みんなのアンケート」を母体としています。このため、一般集団のアンケート結果とは異なります。
わが子の発達が気になったときどうした?リアルな声をご紹介!
発達ナビ利用者の皆さんは、実際にどのようにして発達支援に繋がったのでしょうか?アンケートに寄せられたリアルな声を一部ご紹介します。
「1歳半健診で様子見。月1で親子教室に繋がることができた」(sacchanさん)
【お子さんの発達について支援機関・支援者に相談したことがある】
1歳半健診の時に、個別相談を利用したのが最初です。(中略)「2歳になったらもう一度検査してみましょう」と勧められて、そこから月1回開催される市の親子教室に繋げられました。(中略)困り事や悩みに対して、具体的な解決方法を教えてもらえるのが本当にありがたかったです。
「発達センターでの面談後、専門医を受診。確定診断へ」(ぽりりんさん)
【お子さんの発達について支援機関・支援者に相談したことがある】
娘が幼稚園入園後、「私の育て方の問題で、娘が他園児さんと同様の行動が出来ないのでは…」と不安になりました。市の子ども発達センターに個別面談として相談。(中略)児童心療内科受診につなげてもらい、受診することができ、軽度のADHDとASDと診断を受けました。(中略)市の子ども発達センター、障がい者支援センターにもお世話になることとなり、放デイの利用や相談窓口になっていただきました。小学校入学後は、スクールカウンセラーにもお世話になっています。
※発達ナビ内の「みんなのアンケート」に寄せられたコメントを抜粋・編集しております。
1歳半健診で個別相談をした、自治体の子ども発達センターに相談した……など、きっかけはさまざまですが、適切な支援に繋がったことで保護者の不安が軽減された様子がうかがえます。
通所受給者証で利用できる発達支援は?「障害児通所支援サービス」の種類や支援内容
続いて、障害のある子どもや発達が気になる子どもが利用できる発達支援についてご紹介します。発達ナビのコラムもあわせてご覧ください。
児童発達支援・放課後等デイサービスとは?
児童発達支援は、発達に課題のある未就学の子どもを対象とした通所支援サービスです。遊びや学びを通して、日常生活の練習や、集団生活への適応訓練など、個別のニーズに合わせた専門家による支援が受けられます。保護者の方への相談援助も行っています。

【専門家回答】児童発達支援とは?個別支援計画、施設の併用、小集団のメリットなど【アンケート・保護者の声も紹介】
放課後等デイサービスは、発達に課題のある小学生~高校生の子どもを対象とした通所支援サービスです。放課後や休日、長期休暇中などに利用することができ、一人ひとりの状態にあった個別支援計画に沿って集団活動や個別支援を行い、子どもたちの自立や社会参加を促します。 また、放課後に子どもたちを預かることで、保護者の負担軽減につながる面もあります。

放課後等デイサービス(放デイ)とは?利用方法、費用など【専門家監修】
保育所等訪問支援とは?
保育所等訪問支援は、児童福祉法に基づく福祉サービスのひとつです。保育所や幼稚園、認定こども園、学校、放課後児童クラブなどに専門の支援員が訪問し、子どもの集団生活への適応をサポートすることを目的としています。子どもの様子を観察し、先生と連携しながら、個別の支援計画を作成します。
居宅訪問型児童発達支援とは?
居宅訪問型児童発達支援とは、平成30年度に創設された比較的新しい福祉サービスです。重度の障害等により、障害児通所支援を利用するために外出することが著しく困難な18歳以下の子どもに発達支援が提供できるよう、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士、保育士、看護職員等が障害児の居宅を訪問して発達支援を行います。
精神障害等により外出が困難な状態にある就学児や、行動障害により通所支援の利用が困難な児童に対しても、居宅訪問型児童発達支援による支援を行うことが認められています。
※地域によっては提供できる事業所がまだ十分でないところもありますので、各自治体窓口にお問い合わせください。
精神障害等により外出が困難な状態にある就学児や、行動障害により通所支援の利用が困難な児童に対しても、居宅訪問型児童発達支援による支援を行うことが認められています。
※地域によっては提供できる事業所がまだ十分でないところもありますので、各自治体窓口にお問い合わせください。
児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援・居宅訪問型児童発達支援は、児童福祉法に基づく障害児通所支援サービスです。利用するためには、自治体から発行される「通所受給者証」が必要となります。
各サービスの利用にあたっては、申請手続き等が必要になるため、お住まいの自治体の福祉課にお問い合わせください。
各サービスの利用にあたっては、申請手続き等が必要になるため、お住まいの自治体の福祉課にお問い合わせください。
【専門家に聞く】発達支援にまつわるギモンを分かりやすく解説!
発達支援にまつわる保護者の疑問やお悩みについて、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生にお伺いしました。
発達支援センターに相談していますが、様子見と言われた(3歳男の子)
Q:初めての発語が2歳半過ぎと、言葉が遅いことが気になり、発達支援センターに相談しましたが、様子を見ましょうと言われ、定期的に面談をしています。人見知りや場所見知りが激しく、目も合いにくいなど、そのほかにも気になることがあります。このまま様子見を続けていてよいのでしょうか?受診の目安などはありますか?
A:限られた情報だけで具体的な受診の目安については回答できませんが、発達が気になる場合は発達支援センターに相談しつつ、児童発達支援など未就学児で診断がなくても受けられる福祉サービスがあります。児童発達支援を利用するためには医療機関で意見書などをもらい、お住まいの自治体の窓口で申請して通所受給者証を取得する必要があります。児童発達支援では個別や集団による言葉や対人関係を含めた発達支援を受けることができます。また、事業所によっては、保護者が子どもとの関わり方を学べるペアレントトレーニングのプログラムなどが提供されていることもあります。
小学生になってから困りごとが増えた。解決策は?(7歳男の子、ADHD/注意欠如多動症の疑い)
Q:幼稚園の頃から気になる行動が出てきましたが、先生たちからは気にするほどではないと言われていました。しかし小学生になっても困りごとは増え続け、自治体の発達相談を受けたところ、ADHD(注意欠如多動症)の傾向があると言われました。日々注意することばかり続き参っています。どのような解決策があるでしょうか?
A:ADHD(注意欠如多動症)の診断はなくともそれに対応した接し方や支援方法をとっていくことで、問題は軽減すると思います。そのお子さんの気になる行動がさらに続くようであれば、自治体での発達相談だけではなく、医療機関で診断を受けてみることをお勧めします。診断があることによって、小学校でも合理的配慮が受けられるようになり、環境調整や個別的な配慮などお子さんの特性に合わせた支援が進んでいくと思います。これらを実施しても行動改善が難しい場合、服薬等についても主治医と相談していかれるとよいと思います。

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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

