家庭での関わりの中で見えてきた他害の理由
出かけるのを控えるようになってからも、トールの他害はなくなったわけではなく、家の中でもわたしや夫に対して叩いたり引っ掻いたりしてくることはありました。しかし、外出先で他人に手が出る時とは違い、家の中だとわたしにも少し余裕があるので、トールの様子を注意深く観察することができました。すると、トールに何か主張がある時だけ手が出ているようだということが分かってきました。
そうはいっても、トールのやりたいことを叶えてあげられない時や、楽しんでいることを中断しなければならない状況もどうしてもありますので、そういう時の反発は本当に激しく、噛みつかれたり引っ掻かれたりすることで出血してしまい、なかなか跡が消えなかったこともありました。
他害が他人に向かっていない分、気持ちの面では楽になっていましたが、わが子とはいえ日々叩かれたり噛みつかれたりするのはつらいものでした。イライラしたり悲しくなったり、どうしてこの子はこんなことをするんだろうと、考え過ぎて泣いてしまったりもしました。同じ痛みを感じれば分かってくれるだろうか……という考えが浮かんだこともありました。
ある時ふと、わたしは今すぐにトールに他害をやめさせる方法を考えているんだと気づきました。そして、「今すぐに解決しようと思うことをやめよう」と、考えるようになりました。
それからは、トールの他害に関して感情的になることをやめていたように思います。他害をされたら真顔で「痛いからやめて」と言う、と決めて、そのルールを淡々とこなしていたという状態でした。他害に対して一生懸命向き合ってしまうと毎日がつらかったので、自衛の意味もあったかもしれません。
そうはいっても、トールのやりたいことを叶えてあげられない時や、楽しんでいることを中断しなければならない状況もどうしてもありますので、そういう時の反発は本当に激しく、噛みつかれたり引っ掻かれたりすることで出血してしまい、なかなか跡が消えなかったこともありました。
他害が他人に向かっていない分、気持ちの面では楽になっていましたが、わが子とはいえ日々叩かれたり噛みつかれたりするのはつらいものでした。イライラしたり悲しくなったり、どうしてこの子はこんなことをするんだろうと、考え過ぎて泣いてしまったりもしました。同じ痛みを感じれば分かってくれるだろうか……という考えが浮かんだこともありました。
ある時ふと、わたしは今すぐにトールに他害をやめさせる方法を考えているんだと気づきました。そして、「今すぐに解決しようと思うことをやめよう」と、考えるようになりました。
それからは、トールの他害に関して感情的になることをやめていたように思います。他害をされたら真顔で「痛いからやめて」と言う、と決めて、そのルールを淡々とこなしていたという状態でした。他害に対して一生懸命向き合ってしまうと毎日がつらかったので、自衛の意味もあったかもしれません。
幼稚園入園後、他害はどうなった?
その後、幼稚園に入園してからは、また同年代の子どもたちとの関わりが増えました。最初の頃は先生から他害についての報告を受けることもあり心配していましたが、以前のような理由の分からない他害が頻発するという状況と比べると、ずいぶんと落ち着いてきたようでした。年中の終わり頃には、他害をすることはなくなっていました。
トール本人の言葉の発達なども関わっていたのかもしれませんが、幼稚園でほかの子たちと関わる経験を通して、情緒面も少しずつ成長していったのだと思います。
トール本人の言葉の発達なども関わっていたのかもしれませんが、幼稚園でほかの子たちと関わる経験を通して、情緒面も少しずつ成長していったのだと思います。
中学生になった今では、あれだけ他害に悩んでいた頃が嘘のように、すっかり落ち着いたトール。学校や家でも手が出たり暴れたりすることはなく、毎日穏やかに過ごしています。
(監修:藤井先生より)
わが子がほかの子に手を出してしまうから、公園や児童館に連れて行くのがきついという親御さんからの相談はよくあります。そんな親御さんに一人ではないよ、成長とともに少しずつ落ち着くよという温かいメッセージになるコラムでした。ありがとうございます。つい、ほかの方の目が気になり、ちゃんと躾けなくてはと焦る気持ちがあるかもしれません。トールさんとメイさんがゆったり過ごすことで、他害の理由も分かり、「すぐに解決しようとすることをやめよう」と決断できたのは良かったと思います。トールさんのペースに寄り添いながら、少しずつ成長に合わせてほかの子と接しても大丈夫になってきましたね。お子さんのペースで見守るというのは、幼少期には勇気がいるかもしれませんが、ほかの子と足並みを揃えるのではなく、お子さんのペースにあった見守りってどういうことなのかなと振り返ってみていくと良いと思います。
わが子がほかの子に手を出してしまうから、公園や児童館に連れて行くのがきついという親御さんからの相談はよくあります。そんな親御さんに一人ではないよ、成長とともに少しずつ落ち着くよという温かいメッセージになるコラムでした。ありがとうございます。つい、ほかの方の目が気になり、ちゃんと躾けなくてはと焦る気持ちがあるかもしれません。トールさんとメイさんがゆったり過ごすことで、他害の理由も分かり、「すぐに解決しようとすることをやめよう」と決断できたのは良かったと思います。トールさんのペースに寄り添いながら、少しずつ成長に合わせてほかの子と接しても大丈夫になってきましたね。お子さんのペースで見守るというのは、幼少期には勇気がいるかもしれませんが、ほかの子と足並みを揃えるのではなく、お子さんのペースにあった見守りってどういうことなのかなと振り返ってみていくと良いと思います。

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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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