わが子を信じた結果としての受診

同じことを3回したら即、発達障害を疑うのが正しいと言いたいわけではありません。
今回のケースでは、「次女は自分のしたことが悪いことだと分かっている」「深く反省している」と信じたからこそ、本人にもどうしようもできない何かがあるのでは、と疑ったのです。わが子を信じて寄り添おうと行動したから、気づけたのだと思います。

そして、親の寄り添う気持ちを感じ取ったからか、次女自身も受診に前向きで、検査もしっかり受けてくれました。改善できるなら改善したい、困りごとを減らしたいと、本人が望まなければ治療もうまくいかないので、自分が困っているのだということを自覚してもらうのは、とても大切なステップでした。
わが子を信じたからこそ、発達障害に気づくことができた
わが子を信じたからこそ、発達障害に気づくことができた
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次女がADHD(注意欠如多動症)と診断された時、親の立場から見れば、その傾向はもう赤ちゃんの頃からあったので、小学生になるまでのさまざまな出来事が、点と点がつながるように「そういうことだったのか!」と腑に落ちました。

できない→怒られる。ばかりだと、ストレスもたまりますからね。特性があっても、良い面は本人の長所として活かし、困難につながる面は改善できるよう工夫していく。薬の力を借りられる部分は適切に頼りながら、自分の行動を客観的に振り返る。その習慣を、今も次女と一緒に続けています。
執筆/ゆたかちひろ

(監修:初川先生より)
次女さんの発達障害に気づいたきっかけについてのエピソードをありがとうございます。お金の抜き取りが続いた、しかも毎回しっかり泣きながら反省しているように見えるのに、なぜか続いている。それは次女さんがダメな子なのではなくて、本人でもコントロールできない課題があるからではないかと考えた。だから受診した。拝読した際に、なんとスムーズな展開なのだろうかと驚きました。

お子さんの「お金の抜き取り」に悩むご家庭は案外多いのではないかと感じます。はじめのうちは、“お金が抜き取られてもおかしくない場所にあるから”と考えて、環境調整をすることが多いと思います。鍵のかかる場所に入れる、財布の残金等はきちんと把握しておくなど。頻回に抜き取られる場合には、お風呂に入る際にも財布を持参してもらうこともあるほどに、とにかくお金に手が届く環境をつくらないようにしてもらうこともあります。

お金の抜き取りが生じるのがすべてADHD(注意欠如多動症)の衝動性によるものとは言えませんが、しかし、お金を抜き取ってうまくいったこと(簡単にお金が手に入った成功経験、お金によって友だちに慕われる等の二次的な成功経験など)があると、冷静に考えれば(家族といえども)他人のお金を盗ることは良くない(犯罪)と分かるけれども、少しだけ拝借するのは大丈夫だろう、ばれなければ大丈夫だろう、借りただけ等考えたり、あるいは、気づいた時にはお金を拝借していたり(考える前に拝借している衝動性)。目先の利益で動いてしまうことがあると思います。そうした際に、本人に反省を促したり、環境調整したりして時間が過ぎていくことが多くあるように感じます。今回は3回続いて、それはおそらく本人の制御を超えたところで生じているのではと考えて受診されたとのこと、とても良かったと感じます。受診に限らず、相談機関につながるのでも構いませんが、何であれ、“本人がダメだから”ではなく、本人もきっと苦しんでいるのではと考えて受診につながり、専門家の力も借りながら本人理解が進んだことが何よりだと感じます。

これまでのさまざまな課題やうまくいかなかったことが発達障害という文脈でつながり、「そういうことだったのか!」と腑に落ちたことも何よりです。理解することで見えてくるもの、理由が分かってくることがあります。発達障害という視点を導入して、さまざまな課題や本人のつまずき・苦しみを理解し、「良い面は本人の長所として活かし、困難につながる面は改善できるよう工夫していく。薬の力を借りられる部分は適切に頼りながら、自分の行動を客観的に振り返る」。とても良い振り返りの循環、環境調整のきっかけとなられているように感じます。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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