学習障害(LD)の治療法は?効果的な治療薬はあるの?

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脳機能の偏りが原因とされている学習障害。学習障害の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか?また何歳から治療を始めるべきでしょうか?治療のメリット・デメリットなど気になることはたくさんありますよね。学習障害の治療や療育に関する様々な情報を紹介します。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員

学習障害(LD)の原因は?

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文部科学省の定義によると、学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことです。英語ではLearning Disabilityと呼ばれ、LDと略されることも多いです。

学習障害の原因はいまだにはっきりとは解明されていません。有力視されているのは、先天性の遺伝要因に様々な環境要因が相互に影響し、脳の中枢神経系に何らかの機能障害が生じることが原因だという説です。親のしつけや養育方法、本人の努力不足が原因ではないことが医学的にわかっています。

学習障害って治療できるの?

治療と聞くと薬物治療を思い浮かべる方もいますが、今のところ手術や薬物などで医学的な方法による根本的な治療法はありません。学習障害における治療とは子どもの将来を広げるための手助けのようなものです。学習障害のある人は多くの場合、教育面・生活面での環境調整や療育といった支援で困難さが軽減されます

学習障害の人は脳機能の偏りのため特有の見え方・感じ方をしており、生活上や学習上、努力だけで乗り越えづらい困難があります。そのため日々過ごしていく上で、周りからのサポートが必要になってきます。まずは学校や地域の専門機関などの力を借りて専門家チームの検査・評価のもと、子どもの特性を理解しましょう。

専門機関とは子どもの場合、各市区町村の保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所等をさします。大人の場合は発達障害者支援センター、障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所へ行ってみましょう。まずは身近な相談できる専門機関に行ってみて、障害の疑いがある場合には専門医を紹介してもらうこともできます。

学習障害の子どもは全ての子どもが同じ症状に悩まされているわけではなく、それぞれ得意と不得意を持ち合わせています。一人一人の子どもの特性に合わせ、困難を取り除いて最適な生き方を見つけていくことが大切です。

また、家庭での対応も重要となります。子どもへの接し方は、子どものやる気や達成感を養い、うつ病や引きこもりなどのいわゆる二次障害を防ぐ上で大切な役割を担います。学習障害の発見が遅くなったり、誤った障害の理解により「自分は何をやってもできない」と子どもが思い込んでしまうことが原因となり、勉強意欲の低下、不登校などの二次障害と総称される症状や状態を引き起こしてしまう可能性も少なくありません。やる気、達成感を育てることは学習障害の子どもにとって最良の対応法といえるでしょう。

学習障害の治療の判断基準は?いつから始めるべきなの?

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学習障害は知的発達に遅れがみられないことから、発見が難しくなります。そのため、実際に読み書きや算数などの学習が開始される小学校入学後に気づくケースが多くなっています。また英語だけに現れる学習障害の場合もあり、中学進学後にわかることもあります。このように特性のタイプや障害の程度によって症状に気づく時期が異なります。

どのような症状があれば治療を行うべきなの?

学習障害には「読み、書き、話す、聞く、計算する・推論する」能力のうち特定のものの習得と使用に困難があります。医学的な分類では主に「読字障害」「書字表出障害」「算数障害」の3つに分類されると言われています。このように読みに困難さがある人もいれば、読むことはできても、書くことに困難さがある人もいます。「学習障害」の状態や特性の現れ方は人によって異なります。子ども本人が学習に困難を感じていたり、同年齢の子どもと比べて著しく習得に遅れが見られるなど、子どもの様子から学習障害かもしれないと感じた場合は、まず学校や地域の保健センター、児童相談所などで相談してみましょう。

その後、専門家の検査により学習障害と判断されてから治療を行うのが一般的ではありますが、医師による診断がつかなかった場合や検査を受ける前であっても、その子に合った環境を整え、学習方法を見つけてあげることが大切です。親が子どもにあった学び方を見つけるケースもありますが、難しい場合は専門機関に相談したり、学校の特別支援教育を担当する先生に相談してみるとよいでしょう。

治療を始める年齢は何歳?治療を終える判断基準は?

学習障害に気づいたら、すぐにその子にあったサポートを進めることが望ましいです。学習障害にはいくつかタイプがあり、さらに一人一人、学習に得意不得意の偏りがあります。また、その人の現在の年齢によっても学ぶ内容は変わってきます。そのため、一人一人に適している治療や支援方法は異なると考えることができます。同様に、治療を終える判断もそれぞれです。通常学級で勉強をしながら、理解できなかった部分だけ個別に指導を受ける特別支援学級や通級指導教室に通う方法もあります。

学習障害の治療法・療育法

早期発見・早期療育が望ましいとされる学習障害ですが、一体どのような治療法、療育法があるのでしょうか。今回はその方法についてご紹介していきます。

学習障害の療育方法

療育とは、社会的な自立をめざしてスキルを習得したり、環境を整えるアプローチのことです。このような療育は、発達障害を専門とする病院や公立・民間の児童発達支援事業所などで行われています。

学習障害はその子の認知特性や苦手な部分によって、それぞれ直面する困難や課題が変わってきます。そのため、その子の特性に合わせた学習方法を獲得することが目的となります。療育法には様々なものがありますが、学習障害の療育で最も大切なのは、その人に合った学び方や環境をつくることで、その人が困難を感じている分野に対する苦手意識を解消することです。苦手意識を持ってしまうと、その分野の学習に対して取り組む意欲がなくなり、困難は改善されないまま育ってしまいます。

そのため、一人一人の子どもの成長速度や学び方に合わせて、できるだけ成功体験を増やしてあげることが大切です。つまり、子ども自身が「これなら学びやすい・学ぶことができる」という方法を探すということです。学校や療育施設などと連携し、学習方法を変えたり、環境を整えたりといった工夫を組み合わせ、様々な方法を試しながら、その子に合った学習方法を探していきます。

・その子にあった覚え方や学び方を工夫する…クイズにして覚える、漢字のパーツを分けてパズルを作る など
・環境的な配慮をする…プリントはゴシック文字を使う、文字の色を変える など
・代替手段を使用する…タブレットの音声読み上げ機能を使う、計算機を使う など

言葉や社会性など、それぞれの能力を習得する時期に近い段階で早期に療育を開始することで、障害による困難さが軽減されやすくなると考えられています。一般的に年齢が低い段階で、その子にあった療育を始めると、その後の社会適応力も高くなるといわれています。

学習障害の薬物治療

学習障害に有効な薬の治療はまだ研究されていません。学習障害のある人の中には、他の障害も持ち合わせている場合もあります。

同じ発達障害であるADHDや自閉症など他の発達障害が併存障害として多く見られます。ADHDは注意欠陥・多動性障害と呼び、自分の行動が抑えられず、落ち着きがないなどの症状があります。例えばADHDに関しては、ADHDの特徴を抑える薬があり、処方されることがありますが、薬の治療は人によっては副作用のリスクもあるため医師とよく相談した上で、適切な量と用法を守って使用するようにしましょう。

学習障害の二次障害の治療

適切な治療やサポートを受けられない場合、思春期以降に学習障害の主症状とは異なる状態を引き起こしたり合併症を発症てしまうことがあります。このような症状や状態を、一般的には「二次障害」と言うこともあります。

注意すべき症状・状態には以下のようなものがあります。
・うつ病
・不安障害
・不登校やひきこもり
・アルコールなどの依存症
など

このような症状や状態が現れた場合には、それらに対する治療を行うことが必要となります。このような症状を引き起こさないためにも、日頃から子どもの気持ちや様子を気にかけ、本人の生きやすい環境を周りが整えることが大切です。療育はそのような環境を整えるのに効果的です。適切な指導を受け、子どもにやる気・達成感を与え、社会性や周囲の人との関わり方を育てていきましょう。これらの二次障害に対する治療の一つとしては、心理療法である認知行動療法の有効性が示されています。

接し方で大きく変わる!学習障害の子どもへの接し方のポイント

学習障害の子どもは知的発達に遅れがないため、自分に障害があると認識するのに時間がかかります。できるようになりたい気持ちはあるのにできないというモヤモヤした気持ちはとてもデリケートです。何気なくかけた言葉や行動が本人を傷つけてしまう場合もあるので、注意して接しましょう。

そこで、3つの学習障害のタイプ別に、子どもへの接し方のポイントをまとめてみました。学習障害は一人一人特性の偏りが異なりますので、以下をヒントに様々な方法を試してみましょう。

読字障害(ディスレクシア)の子への接し方

■文字を見やすくしてあげる
例えば、文字を大きく分かりやすい字体(フォント)にしたり、読む範囲以外の上下左右を隠したり、黒板のチョークの色を白にしたりすることで、本人にとって文字が読みやすくなることがあります。ほかにも、文字が小さすぎて読むのが困難に見受けられる場合は拡大コピーなどの工夫が効果的です。また蛍光ペンで重要と思われる部分にだけ色をつけることで、読む情報量を調整できます。これにより文章を読むことに対しての抵抗感を減らすことができます。

■音声にする
耳からの情報は理解できることが多いため、問題文などの文章を音声にして聞かせると宿題がはかどることもあります。教科書を見ながらその音声を聞くことにより、文字・音・意味が繋がる可能性があります。最近では電子教科書もあり、音声での読み上げシステムが備えられているので活用するのもよいでしょう。

■ふりがなやスラッシュを振ってあげる
漢字などが分かりづらい場合、ふりがな(ルビ)を振ることが効果的な場合もあります。教科書にふりがなを振ったり、テストにふりがなを振ってもらうのも効果的な場合がありますが、学校の先生の理解を得ることが難しいこともあります。

また、文章のどこまでがひと固まりなのか理解できないことがあります。このような場合はまとまりごとに空白を開ける「分かち書き」をしたり「スラッシュ」(/)を引いたりして、どこが文章の区切りとなっているのか、明確に表してあげると文章を読みやすくなることがあります。

■色つきメガネを使う
視覚過敏がある場合、背景が白である文字よりも、青や緑など色がついていた方が見やすいという人もいます。色つきメガネなどをかけると、目が疲れずに文字が読める場合もあります。このような工夫で文字を読むスピードが上がったなどの報告もあります。

■スマートフォン・タブレットなどのICTを活用する
スマートフォンやタブレットを使うと、文字を拡大できたり、音読機能があったりと便利です。学校の理解があれば、板書を写真撮影したり、録音機能などにも利用できます。学習用の無料アプリなどを使って楽しく勉強することも可能です。

■書字表出障害との合併に注意した対応を
読字障害がある場合、結果として文字を書くことにも困難を感じることもあります。以下の書字表出障害への対処法も試してみましょう。

書字表出障害(ディスグラフィア)の子への接し方

■漢字を分解して、漢字のパーツごとへの理解を促す
書くことを苦手とする場合、位置関係をつかむことを苦手としている場合があります。そのため、漢字そのものを覚えさせるのではなく、「へん」や「つくり」に分けそれぞれの意味を教えてあげることにより、漢字を覚えやすくなります。また、パーツを足し算して漢字を作るゲームをするなど、楽しみながら文字を学ぶのも一つの手です。パーツの配置のバランスがつかみやすくなるので、漢字に対しての苦手意識が薄れる場合があります。

■視覚過敏を緩和するように支援する
読字障害においても同じことが言えますが、視覚過敏がある子の場合、紙の白さを過敏に目が感じ取ってしまいます。文字の黒さと紙の白さのコントラストに目がちかちかしてしまうこともあり、長くノートに向き合えない場合があります。コントラストが激しくない色の紙のノートを利用したり、色つき眼鏡を使ってみるなど、視覚過敏を抑えるための工夫をしてあげましょう。

■マス目やケイ線を用意する
書字表出障害の子の中には、手先の不器用さが目立つ子もいます。大きなマス目のノートを用意してあげたり、文字のバランスをつかむためにリーダー線が入った漢字練習帳を使用するのも良いでしょう。また、黒板を見て書きうつすにわかりやすくなるよう、マス目黒板を使うのも効果的です。

■ICTを使用する
書字障害のある子は、文章をすらすら読むことができても、書くとなると困難さを伴います。合理的配慮により、学校内でのスマートフォンやタブレット利用が許可されるところが増えてきています。学年が上がるにつれて学ぶ内容も難しくなるので、授業についていけるよう、タブレットなどのICTを利用してノートを取ったり、文字を書くことの代替となるものを利用するというのも有効です。

算数障害(ディスカリキュリア)の子への接し方

■位ごとに色を変える
算数障害の子は、2桁以上の計算をする時、無意識に頭の中で位を入れ替えてしまうことがあります。位をまたぐ計算をするとき、位ごとに色を変えることによって、計算の混乱を防ぐことができます。一の位は赤で書き、十の位は青で書き…のようにルールを決めて計算に取り組むと、「赤は赤と足す」、「青は青と足す」という認識が生まれ、計算がしやすくなります。

■計算の際には枠を引いてあげる
算数障害の子の中には、読字障害のある場合もあります。そのため数字の問題を読み取るときに困難を示す場合があります。二桁以上の計算問題を解くときは、どの桁がどの桁と計算すべきかを理解するために、桁ごとを分ける線を引いてあげるのもよいでしょう。

■視覚的な手がかりになるものを利用する
算数障害の子は「数」という概念の理解に困難を示す子が多いです。そのため、おはじきなどを使って実際に数えて計算を行ったり、絵や図に文章問題を書き換えて理解を促すことも効果的です。

■電卓を利用する
簡単な計算が理解できるようになっても、学年があがるにつれ内容が難しくなるので、授業についてくことが困難となってしまいます。ある程度算数の概念が理解できるようになったら、担当の先生に理解を仰ぎ、電卓の使用を許可してもらうのもよいでしょう。

■ICTを利用する
パソコンやタブレットなどを使って楽しく算数を学べるソフトもあります。算数に対して苦手意識を強く持ってしまうと、本人がさらに辛い思いをしてしまうので、まずは苦手意識を持たないよう、楽しく算数を学ぶということを意識しましょう。最近では算数を学べるスマートフォンのアプリもたくさん出ています。

まとめ

その子に合った学び方を探す

例えば、文字を読むことが難しい子どもでも、耳から入ってくる情報であれば覚えることができる場合があります。その子どもに合っている情報のインプットの仕方とアウトプットの仕方を探しましょう。特に、ICTを活用した学びと相性がよい子どもが多いです。
学習障害は、見方を変えれば視界が広がります。「できない」に目を向けるのではなく「できる」に目を向けることはとても大切なこと。人と同じではなくていいのです。子どもひとりひとりに合った指導法や接し方は、その子の未来を広げるだけでなく、今の親子関係も明るいものに変えます。専門家や周囲の人のアドバイスを元に適切な環境で学び、生活しやすい場所をつくってあげましょう。
怠けてなんかない! ディスレクシア~読む書く記憶するのが困難なLDの子どもたち
品川 裕香 (著)
岩崎書店
LDの子の読み書き支援がわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)
小池 敏英 (監修)
講談社
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