LD・SLD(限局性学習症)の治療法・療育法

LD・SLD(限局性学習症)は早期発見・早期療育が望ましいといわれていますが、治療、療育にはどのような方法があるのでしょうか。今回はその方法についてご紹介していきます。

LD・SLD(限局性学習症)の療育方法

療育とは、社会的な自立をめざしてスキルを習得したり、環境を整えるアプローチのことです。発達障害を専門とする病院や公立・民間の児童発達支援事業所などで行われていることが多いです。

LD・SLD(限局性学習症)はその子の認知特性や苦手な部分によって、それぞれ直面する困難や課題が変わってきます。療育には様々な方法がありますが、最も大切なのは、その人の特性に合った学び方や環境を見つけ、困難を感じている分野に対する苦手意識を解消することです。苦手意識があると、その分野の学習に対して取り組む意欲がなくなり、困難が改善されにくくなってしまいます。

苦手意識を軽減するためには、子ども自身が「これなら学びやすい・学ぶことができる」と思える学習方法を見つけ、成功体験を増やすことが大切です。学校や療育施設などと連携し、学習方法を変えたり、環境を整えたり、様々な方法を試しながら、その子に合った学習方法を探していきましょう。

LD・SLD(限局性学習症)の薬物治療

現在、LD・SLD(限局性学習症)を根本的に治療できる薬はありません。
しかし、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)など、他の発達障害が併存している場合は、それらの症状を軽減できるような薬を使用することがあります。
薬は人によっては副作用のリスクもあるため医師とよく相談した上で、適切な量と用法を守って使用するようにしましょう。

LD・SLD(限局性学習症)による自己肯定感の低下

LD・SLD(限局性学習症)と気づかれていない場合や、適切なサポートを受けられていない場合、「努力してもできないのは自分のせいだ」と思ってしまうことで、自己肯定感が低下してしまうこともあります。また、勉強への苦手意識がより一層強まることもあります。
そのようなことを防ぐためにも、できるだけ早い時期に、本人に合った学習の仕方や支援の仕方を見つけることが大切です。

接し方で大きく変わる!LD・SLD(限局性学習症)がある子どもへの接し方のポイント

LD・SLD(限局性学習症)のある子どもは知的発達に遅れがないため、自分の特性だと認識するのに時間がかかりる場合があります。できるようになりたい気持ちはあるのにできないというモヤモヤした気持ちはとてもデリケートです。何気なくかけた言葉や行動が本人を傷つけてしまう場合もあるので、注意しましょう。

LD・SLD(限局性学習症)には、大きく「読字不全」、「書字表出不全」、「算数不全」の3つのタイプがあるといわれています。以下で、子どもへの接し方のポイントをタイプ別にご紹介します。LD・SLD(限局性学習症)は一人一人特性の偏りが異なりますので、以下をヒントにさまざまな方法を試してみましょう。

読字不全(ディスレクシア)がある子どもへの接し方

■文字を見やすくする
・文字を大きくしたり、読みやすい字体(フォント)にする
・読む範囲以外の部分をリーディングルーラーなどで隠す
・黒板のチョークの色を読みやすい色に変える
・教科書やプリントを拡大コピーする
・蛍光ペンで重要と思われる部分にだけ色をつけることで、読む情報量を調整する
・タブレット端末などの場合は背景の色を白から黒にする
これらの工夫を行うことで、文字が読みやすくなったり、文字を読むことへの抵抗感が軽減されたりする場合があります。

■音声にする
耳からの情報は理解できることが多いため、問題文などの文章を音声にして聞かせると宿題がはかどることもあります。教科書を見ながら音声を聞くことにより、文字・音・意味が繋がる可能性があります。電子教科書などでは、音声での読み上げシステムが備えられている場合もあるので活用するのもよいでしょう。

■ふりがなを振ったりスラッシュを引く
漢字などが読みづらい場合、ふりがな(ルビ)を振ることが効果的な場合もあります。教科書やプリント、テストなどにふりがなを振ってほしい場合は、学校の先生に相談してみましょう。

また、文章のどこまでがひと固まりなのかを理解することが難しい場合は、まとまりごとに空白を開ける「分かち書き」をしたり「スラッシュ」(/)を引いたりして、どこが文章の区切りとなっているのか、明確に表すと文章を読みやすくなることがあります。

■スマートフォン・タブレットなどのICTを活用する
スマートフォンやタブレットには、文字を拡大したり、読み上げたりする機能がついていることもあります。また、背景や文字の色を変更できる場合もあります。
学校の理解があれば、黒板を写真撮影したり、録音機能を利用することもできます。学習用の無料アプリなどを使って楽しく勉強することも可能です。

■書字表出不全との合併に注意した対応を
文字を読むことと書くこと両方が苦手な場合は、以下の書字表出不全への対処法も試してみましょう。
国立特別支援教育総合研究所 | 発達障害の可能性のある児童生徒の多様な特性に応じた 合理的配慮研究事業 成果報告書(Ⅱ)
http://inclusive.nise.go.jp/?action=inclusive_action_main_download&upload_id=2367&file_id=1939&t=1625113811313
文章を読むことが苦手(勝手読み、文字の読み飛ばしなど)のタイトル画像

お子さんの「読みやすい文字」をさがしてみよう!

書字表出不全(ディスグラフィア)がある子どもへの接し方

■漢字を分解して、漢字のパーツごとへの理解を促す
書くことを苦手とする場合、位置関係をつかむことを苦手としている場合があります。そのため、漢字そのものを覚えさせるのではなく、「へん」や「つくり」に分けそれぞれの意味を教えることにより、漢字を覚えやすくなることもあります。また、パーツを足し算して漢字を作るゲームをするなど、楽しみながら文字を学ぶのも一つの手です。パーツの配置のバランスがつかみやすくなるので、漢字に対しての苦手意識が薄れる場合があります。

■視覚過敏を緩和するように支援する
読字不全においても同じことが言えますが、視覚過敏がある場合、文字の黒さと紙の白さのコントラストに目がちかちかしてしまうこともあり、長くノートに向き合えない場合があります。読みやすい色のプリントを用意する、クリーム色など色のコントラストを抑えたノートを利用するなど、視覚過敏を抑えるための工夫をしてみましょう。

■マス目やケイ線を用意する
書字表出不全がある子どもの中には、手先の不器用さが目立つ子どももいます。大きなマス目のノートを用意したり、文字のバランスをつかむためにリーダー線が入った漢字練習帳を使用したりするのも良いでしょう。また、黒板を見て書きうつす際にわかりやすくなるよう、マス目黒板を使うのも効果的です。

■ICTを使用する
書字不全のある子どもは、文章を読むことができても、書くことが苦手な場合があります。最近では、学校内でのスマートフォンやタブレット利用が許可されるところが増えてきています。学年が上がるにつれて学ぶ内容も難しくなるので、授業についていけるよう、タブレットなどを利用してノートを取ったり、文字を書くことの代替となるものを利用するというのも有効です。
文字のバランスが悪いのタイトル画像

文字の形や、書き始める位置への注意がなかなか難しい…そんなときに出来る工夫は?

算数不全(ディスカリキュリア)がある子どもへの接し方

■位ごとに色を変える
算数不全がある子どもは、2桁以上の計算をする時、無意識に頭の中で位を入れ替えてしまうことがあります。位をまたぐ計算をするとき、位ごとに色を変えることによって、計算の混乱を防ぐことができます。一の位は赤で書き、十の位は青で書き…のようにルールを決めて計算に取り組むと、「赤は赤と足す」、「青は青と足す」という認識が生まれ、計算がしやすくなります。

■計算の際には枠を引く
算数不全がある子どもの中には、読字不全があり、数字を読み取ることに困難がある場合があります。二桁以上の計算問題を解くときは、どの桁がどの桁と計算すべきかを理解するために、桁ごとを分ける線を引くのもよいでしょう。

■視覚的な手がかりになるものを利用する
算数不全がある子どもは「数」という概念の理解が難しい場合が多いです。そのため、おはじきなどを使って実際に数えながら計算したり、文章問題を絵や図に書き換えて理解を促すことも効果的です。

■電卓を利用する
簡単な計算が理解できるようになっても、学年があがるにつれ内容が難しくなるので、計算に時間がかかってしまう場合もあります。ある程度算数の概念が理解できるようになったら、担当の先生に相談し、電卓の使用を許可してもらうのもよいでしょう。

■ICTを利用する
パソコンやタブレット、スマートフォンなどを使って楽しく算数を学べるソフトやアプリもあります。算数に対して苦手意識を強く持ってしまうと、本人がさらに辛い思いをしてしまうので、まずは楽しく算数を学ぶということを意識しましょう。
かず・算数の文章問題が極端に苦手のタイトル画像

文章問題に書いてある「ヒント」を見つけ出すことから始めよう!

まとめ

その子に合った学び方を探す

文字を読むことが難しい子どもでも、耳から入ってくる情報であれば理解できることがあるように、学習方法を工夫することで、苦手なことをカバーできることもたくさんあります。

情報のインプット、アウトプットにはさまざまな方法があります。支援ツールやICTを活用しながら、一人一人に適した方法を探してみましょう。

「できない」ことばかりに目を向けるのではなく「できる」ことに目を向けることはとても大切なこと。誰かと比べるのではなく、子どもの得意なことを伸ばし、苦手なことをカバーできるような方法を見つけることで、未来の可能性は少しずつ広がっていくでしょう。専門家や周囲の人のアドバイスをもとに、生活しやすい適切な環境を整えましょう。
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