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言語訓練に服薬治療は必要?

◆不注意や多動、癇癪といった行動の問題と療育  発達支援の現場では「療育によって不注意や多動、癇癪の問題を改善する」という期待を持たれる保護者の方が多くいます。しかし、残念ながら難しいというのが本当のことです。  ADHDの不注意や多動、ASDの癇癪といった行動面の問題は、脳の神経発達の問題であり、成長とともに脳が成熟することで自然に落ち着いていくケースはありますが、それは療育の効果ではなく発達の結果です。療育によって「治る」ものではありません。このことを保護者の方と正しく共有することが、適切な支援への第一歩だと考えています。 ◆不注意・癇癪がある状態では、訓練効果を得ることが難しい  ADHDの強い不注意があるお子さまの場合、着席して課題に集中できる時間が短い、指示を最後まで聞けない、衝動的に答えてしまう——こうした状態では、どれだけ優れたアプローチを準備しても、訓練の構造そのものが成立しにくくなります。  ASDに伴う激しい癇癪や強い不安がある場合も同様です。ことばの訓練場面そのものが強いストレスになり、わずかな課題の負荷にさえ耐えられないケースが実際に多くあります。癇癪を起した途端、学習した内容もどこかに飛んで行ってしまいます。なかなか出来るようにならない悪循環が続いてしまい、言語訓練は十分に機能しません。 ◆服薬は「治す」ためではなく「取り組める状態をつくる」ため  こうした状況で検討したいのが、薬物療法です。ADHDに対するメチルフェニデート・アトモキセチンなどは注意の持続・衝動のコントロールに効果が認められており、ASDの激しい行動問題に対してはリスペリドン・アリピプラゾールが日本でも承認されています。  重要なのは、服薬の目的です。「薬でことばを伸ばす」のではなく、「訓練に取り組める状態をつくることで、お子さま自身の言語習得能力を発揮させる」——これが服薬の正しい位置づけです。行動が落ち着いてきたとき、それは服薬の効果が出ているサインであり、そこからが言語訓練の本番とも言えます。 ◆行動が落ち着いても、それだけでは上手くいかない  ここで見落とされがちな重要な点があります。服薬によって行動が落ち着いたとしても、それだけで言語やコミュニケーションの問題が解決するわけではありません。落ち着いた状態になって初めて、「では実際にどう関わればいいのか」「どんな場面でどう対応すればいいのか」を、専門的な視点から丁寧に教えていく段階が始まります。  行動の安定は、言語療育のスタートラインです。服薬で取り組める状態を整え、言語療育でことばとコミュニケーションの力を育て、保護者の方と日常場面での関わり方を一緒に考えていく——この三つが揃って初めて、支援が本来の力を発揮します。  なお「一度飲み始めたら止められない」という誤解もよく聞きますが、脳の成熟とともに症状が落ち着き、服薬の必要がなくなるケースもあります。中止の判断は必ず医師と相談のうえで行ってください。 ◆相模原市でことばの発達支援をお考えの方へ  リングア(相模原市南区・相模大野)では、言語聴覚士への相談・施設見学を随時受け付けています。服薬に関するご不安もお気軽にご相談ください。

リングア/言語訓練に服薬治療は必要?
言語発達
26/08/21 14:03 公開
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心理士と言語聴覚士は何が違う? 発達支援の専門職について

◆相談したいけど、誰に行けばいいかわからない  「発達が気になる」と感じたとき、まず壁になるのが「どこに相談すればいいかわからない」という問題です。療育を調べていると「心理士」「言語聴覚士」という言葉が出てきますが、何が違うのか迷われる保護者の方はとても多いです。この記事で、2つの専門職の役割を正確に整理します。 ◆心理士は「こころ・認知・行動」の専門家  公認心理師・臨床心理士などの心理士は、こころと認知の専門家です。発達支援の場では、WISC・新版K式などの発達検査・知能検査を実施し、お子さまの認知・情緒・行動面の特性を評価・見立てします。そしてその見立てをもとに、ABAを活用した行動支援・認知行動療法(CBT)・SSTなどの直接支援も担います。「感情のコントロールが難しい」「不安が強くて活動に参加できない」「衝動が抑えられない」といった行動・情緒面の困りごとが主な専門領域です。また、保護者自身の不安や養育上の悩みへのカウンセリングも重要な役割の一つです。  注意したいのは、心理士の養成課程は心理学・精神医学・行動科学が中心であり、口腔器官の構造・脳の言語野・神経発達といった生理学的・医学的な知識は専門領域に含まれないという点です。 ◆言語聴覚士は「ことば・認知・コミュニケーション」の医療専門職  言語聴覚士(ST)は、ことば・コミュニケーション・聴覚・口腔機能を専門とする国家資格の医療専門職です。心理士と同様に、言語発達検査・知能検査などを用いた評価・見立てを行い、その結果をもとに直接支援まで一貫して担います。  言語聴覚士が他の専門職と大きく異なるのは、口腔器官(舌・唇・軟口蓋など)の構造と運動機能から、脳の言語野・ブローカ野・ウェルニッケ野といった神経学的メカニズムまでを熟知している点です。「なぜことばが出ないのか」を、脳と身体の両面から読み解く視点を持っています。  また、言語と認知は切り離せません。記憶・注意・概念理解・実行機能といった認知機能はことばの発達と密接に関わっており、言語聴覚士はこれらの認知面も評価・支援の対象として扱います。「ことばの問題だから心理士ではなくSTへ」というわけではなく、認知の問題もSTの専門領域に含まれるのです。 ◆「ことばも診る」は、誰でもできるわけではない  ことばの発達の問題は、脳の言語機能・口腔運動・聴覚処理・認知発達が複雑に絡み合っています。この領域への介入には、生理学的・神経学的な背景知識が不可欠です。発達支援の現場では様々な職種がことばに関わる場面がありますが、その背景メカニズムまで踏まえた専門的な評価と介入は、言語聴覚士の固有の領域です。  両職種はそれぞれ異なる専門性を持ち、連携することでお子さまの発達をより多角的に支えることができます。どちらに相談すればよいかわからない段階からでも、まずお気軽にご相談ください。 ◆相模原市でことばの発達支援をお考えの方へ  リングア(相模原市南区・相模大野)では、国家資格を持つ言語聴覚士が評価から直接支援まで一貫して担当しています。見学・ご相談は随時受け付けています。

リングア/心理士と言語聴覚士は何が違う? 発達支援の専門職について
言語発達
26/08/18 13:42 公開

SSTは万能ではない。ASDの子どもに本当に必要な支援とは?

◆SSTの「本来の目的」を知っていますか?  発達支援の現場でよく耳にするSST(ソーシャルスキルトレーニング)。実はこのプログラムは、元々は統合失調症の精神科リハビリテーションとして体系化されたものです。つまりその本質は、「かつて持っていたスキルを疾患によって失った人が、再び習得するためのプログラム」なのです。  ASDへの支援とは出発点がまったく異なります。 ◆ASDは「スキルを失った」のではない  ASDの場合、社会的なスキルを「失った」のではありません。社会的認知の発達そのものが、神経学的に多数派とは異なるプロセスをたどっています。その結果として、多数派に最適化された「コミュニケーションの作法」との間にズレが生じているのです。  失ったものを取り戻すためのプログラムを、そもそも異なる発達プロセスをたどるお子さまにそのまま適用することには、根本的な無理があります。実際、ASDへのSSTの効果は「限定的」または「効果なし」とする研究結果も報告されています。 ◆それでも、SSTに意味がないわけではない  ただし、ASDのお子さまにSSTを行うことが無意味というわけではありません。安全な環境での対人体験を積み重ねること・特定の社会的ルールを明示的に学ぶこと——これらには一定の意義があります。重要なのは、統合失調症向けのモデルをそのまま転用せず、神経発達の特性を理解したうえで支援の一部として適切に位置づけることです。 ◆言語発達・言語訓練とSSTの関係  SSTと言語発達・言語訓練の関係はどうでしょうか?  社会的なやりとりとことばの発達は切り離せません。「見て!」「一緒にやろう」といった共有のコミュニケーションが育つことで、ことばを使う動機が生まれ、語彙・文法・語用が自然と発達していきます。逆に言えば、対人的なやりとりの土台が育っていない状態でことばの訓練だけを進めても、効果には限界があります。  言語訓練の観点からは、SSTは「ことばを使う場面をつくる練習」として機能します。特定のことばを正しく発音・表出できるようになっても、実際のコミュニケーション場面で使えなければ意味がありません。SSTを通じて対人場面での経験を積むことが、言語訓練で身につけたスキルの「般化」——日常場面での定着——を促す橋渡しになり得るのです。  SSTは目的ではなく、手段の一つ。言語発達・言語訓練・社会性の支援を統合的に考えることが、お子さまの本質的な成長につながります。 ◆相模原市でASD・ことばの発達支援をお考えの方へ  リングアでは言語聴覚士への相談・施設見学を随時受け付けています。

リングア/SSTは万能ではない。ASDの子どもに本当に必要な支援とは?
言語発達
26/08/14 18:17 公開

「ちょうだい」はことばを育てない。「見て!」がことばを育てる

◆なぜ「共有」がそれほど重要なのか  ASDのお子さまには「要求のためのコミュニケーション」は比較的得意な一方、「共有のためのコミュニケーション」が育ちにくいのですが、この違いが言語発達にどう影響するかを、研究データとともにお伝えします。 ◆23件の研究が示したデータ  Harbison et al.(2017)による23件の研究を対象としたメタ分析では、興味深い結果が示されました。宣言的コミュニケーション(共有のためのやりとり)は言語能力と有意な相関を示した一方、命令的コミュニケーション(要求のためのやりとり)とは関連が認められなかったのです。  端的に言えば、「ちょうだい」はことばを育てず、「見て!」がことばを育てるということです。  要求が通れば目的が達成されるため、ことばを使う必然性が生まれにくい。一方、「一緒に見て!これ面白い!」という共有のやりとりは、相手の反応を待ち、気持ちを受け取り、また返す——この双方向のやりとりの繰り返しが、ことばを使う動機と能力を同時に育てていくのです。 ◆「要求に応える」から「一緒に楽しむ」へ  ではご家庭でどんなことができるでしょうか。大切なのは、関わり方の小さなシフトです。お子さまの要求に応えるだけでなく、一緒に同じものを見る・同じことに驚く・同じ気持ちを共有する——こうした体験を日常の中に意識的に増やしていくことが、宣言的コミュニケーションの芽を育てます。    ただしこのアプローチは、お子さまの発達段階や特性に応じた設計が必要です。「一緒に楽しもうとしても、なかなか難しい」と感じている場合は、専門的な視点からのアプローチが効果的です。親が「道具」ではなく「一緒にいる人」として認識されるための関わり方は、言語療育の中で丁寧に育てることができます。 ◆相模原市でASD・ことばの発達支援をお考えの方へ  リングア(相模原市南区・相模大野)では、言語聴覚士への相談・施設見学を随時受け付けています。

リングア/「ちょうだい」はことばを育てない。「見て!」がことばを育てる
言語発達
26/08/04 14:57 公開

ASDと命令的コミュニケーション

◆道具扱いされているように感じてしまう  「欲しいものがあるときだけ手を引いてくる。要求が通ると、もう振り向かない。目が合わない」——ASDのお子さまを育てる保護者から、こうした言葉を聞くことがあります。「この子にとって、私はただの"手"なんだろうか」と感じてしまう瞬間が、正直あると話してくれる方も少なくありません。 これは親の愛情が足りないわけでも、関わり方が間違っているわけでもありません。ASDの特性に由来する、コミュニケーションの質の問題です。 ◆「要求のため」と「共有のため」——2種類のコミュニケーション  発達心理学では、コミュニケーションを大きく二つに分類します。一つは「命令的コミュニケーション」——ジュースをとってほしい、ドアを開けてほしい、といった要求を伝えるためのやりとりです。もう一つは「宣言的コミュニケーション」——「見て!すごいね!」「ねえ、あれ面白くない?」といった、感動や発見を誰かと共有するためのやりとりです。  ASDでは、前者(要求)のコミュニケーションは比較的保たれやすい一方、後者(共有)のコミュニケーションが著しく育ちにくいことが、多くの研究で繰り返し示されています。  「道具にされている」と感じるのは、お子さまが保護者を「要求を叶えてくれる存在」としては認識できていても、「一緒に世界を楽しむ存在」としてまだ認識できていないからです。これはASDの中核的な特性であり、保護者の関わり方や愛情の問題ではまったくありません。 ◆「共有する体験」が、ことばの土台になる  この宣言的コミュニケーションは、言語発達とも深く結びついています。「見て!」と誰かと何かを共有しようとする体験の積み重ねが、ことばを使う動機をつくり、言語発達の土台を育てていきます。  「要求には応えられるのに、なぜことばが育たないのだろう」と感じている保護者の方は、この視点を知っておくことが大切です。次回は、この「共有するコミュニケーション」と言語発達の関係を、研究データとともにお伝えします。 ◆相模原市でASD・ことばの発達支援をお考えの方へ  リングア(相模原市南区・相模大野)では、言語聴覚士への相談・施設見学を随時受け付けています。

リングア/ASDと命令的コミュニケーション
言語発達
26/08/04 14:54 公開
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