「カッとなりやすい生徒」を多角的な視点で見てみると…

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みんなで良い知恵を出そうと話し合いましたがなかなか妙案が出てきません。その生徒のイメージがつかめないのです。

私は教員と話し合い助言する立場ですので、直接生徒や保護者と会うことはまれでした。しかしこのケースではもう少し生徒の状態を知りたいと思ったので、私も直接面談させてもらうことにしました。

一番気になったのは、カッとなったら頭が真っ白になり、自分がしたことを覚えていないということでした。もしかしたらてんかんなどの意識障害があるのではないかと疑ったのです。

担任が面談を設定してくれてその生徒から話を聞きました。しっかりと話のできる生徒でした。

内容はほぼ担任から聞いたことと同じでした。

「カッとなってからのことは覚えていない。気がついたら目の前にばらばらになった椅子がある。でも、カッとなって自分が何かをしでかしそうになるところまでは覚えている」と、話してくれました。

議論の場があったからこそ発想できた、生徒のストレスを発散させる妙案

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生徒から聞き出したことをヒントにして考え、再び事例検討会に臨みました。

この生徒には、
・カッとなった自分を内省する力はある
・しかし、ひとたびカッとなると感情を自分で抑えることは難しい

という特徴が見られます。

そこで、「カッとなったと思ったときは、その場を離れてストレスを発散させられるようにすれば良い」のだと話しました。

すると担任教師は、「教室を出たところの階段を昇れば広い場所がある。そこに教材が置いてある。今は紙粘土がたくさんある。それを板に投げつけさせるのはどうか」と提案しました。皆もいい案だと言い、早速担任が中心となり実行させることになりました。

次の事例検討会で、その後の経過を聞きました。

担任が生徒に、「カッとなったら教室を出て教材置き場に行き、そこで紙粘土を気が済むまで板壁に投げつけるように」と言うと生徒は了解し、実行したとのことでした。これを行うことによって教室での暴力沙汰は無くなりました。

生徒を見守るチーム体制ができ、保護者と学校の関係性にも変化が

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私はこの生徒がカッとなった後に意識が無くなることをまだ気にしていました。親が正しく子どもの状態を学校に伝えないことが多いからです。そこで担任に親から直接精神的、身体的なことを聞きたいと言い、親と会う設定をお願いしました。母親が来て私と担任が会いました。母親は看護師でした。幼児の頃から乱暴だと言われていたところから話していただけました。

肝心の記憶がない、意識がないということについては、脳波検査を受けたが異常はなく、てんかん等の神経学的異常は認められなかったとのことです。

その話を聞いたので、
「お呼びだてしてすみません。娘さんの指導が間違っていないかどうかを確かめたくて来ていただきました。お忙しいのにすみません。」

と丁重にお礼を述べようとしたのですが、まだ私が話し終わらないうちに、母親がすっと立ち深々とお辞儀をし、

「これまでの学校の中で一番子どもをよく見てもらっています。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。」
とおっしゃいました。

問題を起こす子どもの親が学校に呼び出されると、苦情を言われていると思って嫌な気持ちになることを知っていたので、その言葉には驚きとともに安堵し幸せな気持ちになりました。

「すばらしい担任ですからご安心ください。」と伝え、私は面談を終えました。
次ページ「担任の先生の果たした大きな役割」

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