コミュニケーション障害の症状、種類、原因や治療法について、「コミュ障」との医学的定義の違いも解説【医師監修】

ライター:発達障害のキホン

コミュニケーション障害とはことばを扱うことに対して障害が発生する疾患です。インターネットなどでは「コミュ障」として認識されている場合もありますが、実際の疾患の特徴はこれらの認識とは少し異なります。そこで本記事では医学的観点からコミュニケーション障害について詳しく説明します。

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監修: 藤井明子
さくらキッズくりにっく院長 
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年より東京都世田谷区にあるさくらキッズくりにっくで発達外来を行っている。病気に限らず、子どものすべてを診るクリニックをめざし、お子さんだけでなく、親御さん子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。三人の子供を育児中である。
目次

コミュニケーション障害とは

コミュニケーション障害とは言語、会話、コミュニケーションに困難を生じる疾患を示します。「コミュ障」という言葉がありますが、疾患としての「コミュニケーション障害」の特徴はこれらの認識とは少し異なります。

医学上のコミュニケーション障害と、俗語の「コミュ障」の違い

近年コミュニケーション障害は「コミュ障」という言葉で一般的に知られるようになりました。いわゆる「コミュ障」という言葉は、SNS(ソーシャル・ネットワーク)などで使われるようになった用語です。

この「コミュ障」の特徴としては他人と円滑な意思疎通をはかることや、他人の気持ちを理解することが苦手である状態を指すことが多いようです。

しかし医学的な観点から見たコミュニケーション障害は、この「コミュ障」とは定義が異なります

アメリカ精神医学会による診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)においてコミュニケーション障害とは、言葉を扱うことに対して障害が発生する複数の疾患が一つにまとめられた、コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群(Communication Disorders)という総称として認識されています。
『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)/2014年 医学書院
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コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群とは?

コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群とは言語、会話、コミュニケーションに困難を生じる疾患群です。

コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群には、言語症語音症小児期発症流暢症(吃音)社会的(語用論的)コミュニケーション症、および特定不能のコミュニケーション症群の5つがあります。

本コラムではコミュニケーション症群/コミュニケーション障害群を、以下コミュニケーション障害と表記します。
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コミュニケーション障害の種類

言語症/言語障害

言語症とは話したり、書いたりするために言語を取得することの困難さを特徴とする疾患です。例えば、使える語彙が少ない、文章をつくることが苦手で主語と述語の順番がちぐはぐになる、相手に自分の思ったことを正しく伝えることへの困難などを生じることがあります。

具体的には、
・過去の話を話すことが困難である
・話題に応じた適切な単語を選ぶことが困難である
・電話番号や買い物リストを覚えることが困難である

・一番伝えたいことをずれのないように伝えることを難しいと感じたりする
といった症状が挙げられます。

こうした症状は、その人の成長の段階に応じて、社会参加、学業成績、職業的能力などさまざまな場面に影響を与える傾向があります。

言語症は通常発達期初期に発症することが多いため、言語症を発症しているのか、言語能力の取得のスピードの正常な範囲内での遅れであるのかが分かりにくい場合があります。

そこで言語能力の個人差が安定すると考えられている、4歳を基準として診断することが多いです。4歳以降に言語症と診断された場合には個人差はありますが、成人期になっても持続する可能性があります。

語音症/語音障害

語音症とは、言葉をうまく発声できないことで引き起こされる疾患です。語音症がある人が話している内容を周囲の人が完全には理解することができず、意思伝達が正しく行われない場合があります。

語音症と診断される条件の一つとして社会参加、学業成績または職業的能力に対して少なからず一つ以上に影響が発生していることが挙げられます。

人は話すとき、言葉がどういう響きを持つのかという音韻的知識と、会話のために呼吸と発声をしながら顎、舌、そして唇の運動を調整する能力の両方が求められます。語音症はこれらがバランスよく発達しない場合に引き起こされます。

言葉の発音がその子どもの年齢及び発達と比較し診断されます。症状の始まりは発達早期ですが子どもの成長スピードには個人差があるため、見極めの基準は3歳で分けられています。定型発達の場合、3歳では会話の大部分が分かりやすいものであることが求められますが、3歳以降に多少の発音の間違いなどがあっても8歳までにほとんどの単語が正確に発音できる場合は正常範囲とみなされます。

語音症は治療することができない疾患ではなく、治療をすれば会話の困難は改善することが多い傾向にあります。しかし、言語症(言語障害)が併存している場合はLD(学習障害/限局性学習症)の症状がないかチェックする必要があります。
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学習障害・LDの診断や検査の内容、学習障害の特徴をチェック【専門家監修】

小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害/吃音(きつおん)

小児期発症流暢症とは吃音(きつおん)とも呼ばれ、話し言葉が滑らかに出ない発話障害の一つです。音のくりかえし(み、み、み、みかん)、引き伸ばし(みーかん)、ことばを出せずに間があいてしまう(み、、、かん)というような症状が特徴にあります。

小児期発症流暢症は人前に立つとき(たとえば授業で発表する、就職の面接など)ストレスや不安が伴う場面でより症状が重くなる傾向があります。一方音読したり、歌ったり、置物や動植物に話しかけるときは症状が現れないことが多いです。

小児期発症流暢症を抱えている80~90%の人が6歳までに発症しているといわれており、発症するときの年齢は2~7歳である場合が多いです。小児期発症流暢症は本人や周囲の人が気づかない間に急に発症する傾向があります。

そのとき本人は急に話すことが苦手になってしまったことに戸惑いを感じ、徐々に人前で話す機会を避けたり、短く単純な発言を用いたりし始めます。最終的には社会との関わりをできるだけ断とうとする場合があります。

しかし65~85%の子どもたちが、小児期発症流暢症から回復するという研究結果もでており、決して症状の治療や改善ができない疾患ではないといえるでしょう。
青年期またはそれ以降に出現する場合があります。それは小児期発症流暢症ではなく成人期発症の非流暢性です。これはそのほかの身体・精神疾患、神経損傷と関係している場合があるため、固有の疾患名は存在しません。
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社会的(語用論的)コミュニケーション症/社会的(語用論的)コミュニケーション障害

社会的(語用論的)コミュニケーション症は、社会生活においてのコミュニケーションに困難を感じてしまうことが特徴の疾患です。ADHD(注意欠如・多動症)やLD(学習障害/限局性学習症)と併存していることがあります。
社会的コミュニケーション症とASD(自閉スペクトラム症)とは区別されます。ASD(自閉スペクトラム症)の特徴にも対人コミュニケーションの困難がありますがASD場合は行動、興味、及び活動の限定された反復的な様式が存在し、社会的コミュニケーション症ではそれらの症状が存在しないという特徴があります。


代表的な症状としては以下の4つが挙げられます。

1.周りの人との挨拶、情報の共有など、社会生活を送る上で重要なコミュニケーションをとることが困難である

2.自身が置かれている状況に応じて適切な話し方を選択することが困難である
話す相手が大人か子どもか、授業中と遊び時間など状況の変化に対して堅苦しすぎる言葉の使用を避けるなど、場面に応じてスムーズに話し方を変えることに難しさを感じる傾向があります。

3.人とコミュニケーションをとる上でのルールに従うことが困難である
相手の話を聞かず自分の話ばかりしてしまったり、相手の理解を得られていないにもかかわらず繰り返しの説明を避けてどんどん話を進めてしまったり、身振り手振りのコミュニケーションを理解できなかったりすることが挙げられます。

4.相手が言いたいことを推測、察することが困難である
相手が言いたいことを察したり、論理的ではない文脈やたとえ話などの曖昧な言葉の理解ができない場合があります。
社会的コミュニケーション症がある人は過去に言語の発達に遅れがあったり、言語症を患っていた場合もあります。また軽症の場合、幼少期などは社会的コミュニケーションに困難を感じることが少なく、言語や社会的交流がより複雑になる青年期早期まで発症していることが分からない可能性もあります。

特定不能のコミュニケーション症/特定不能のコミュニケーション障害

上記の疾患のどれにも当てはまらないけれど、日常生活においてコミュニケーションの障害が引き起こされたり、コミュニケーション症に特徴的な症状が発症していたりする場合に診断されます。
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コミュニケーション障害とそのほかの疾患の違い

コミュニケーション障害は一般的にASD(自閉スペクトラム症)などの特性に伴うものや、ほかの精神疾患、知的能力障害に伴うものは含まれないため鑑別が必要です。

コミュニケーションに困難が発生するといわれている代表的な例として以下のものが挙げられます。

■聴覚障害:言語(または会話)における困難に聴覚機能が関わっている場合がありますが、言語(または会話)の困難が著しく生じているかどうかを鑑別する必要があります。

■知的障害(知的発達症):言葉の遅れは知的障害(知的発達症)の特徴にもあるため、慎重に鑑別する必要があります。

■構造的欠陥:口蓋裂(こうがいれつ)などにより、会話をすることを困難に感じることがあります。

■構音障害:正しく発音できずに、コミュニケーションで困ることがある状態です。原因は、発声するための器官の舌や唇に異常がある器質性、舌や唇の動きが適切にできない運動性、原因がはっきりしない機能性の場合があります。

■場面緘黙(選択性緘黙):場面緘黙(選択性緘黙)とは一つまたは複数の状況や環境で会話ができず、黙り込んでしまうことが特徴の不安症の一つです。選択性緘黙を抱えている人の多くは、家庭内や親しい友人と一緒にいるなどの安心できる状況下では正常な会話ができることが多いです。

■医薬品の副作用:医薬品の副作用としてどもりなどの吃音が生じる場合があります。

■トゥレット症:児童期から青年期にみられるチック症の一種で、多様な「運動チック」と1つ以上の「音声チック」が1年以上持続することを特徴とする精神・神経疾患です。この疾患は小児期発症流暢症の反復的な音声と似ている症状であるため注意が必要です。

■ASD(自閉スペクトラム症):ASD(自閉スペクトラム症)の特徴の一つに対人コミュニケーションに困難さがあり、限定された行動、興味、反復行動があるといわれています。

ASD(自閉スペクトラム症)では、行動、興味、及び活動の限定された反復的な様式が存在し、社会的コミュニケーション症ではそれらの症状が存在しないことで区別されます。発達歴などをふまえ慎重に鑑別する必要があります。

ADHD(注意欠如・多動症):ADHD(注意欠如・多動症)の特性により、円滑なコミュニケーションがとれない場合があります。発達歴などをふまえ慎重に鑑別する必要があります。

■社交不安症(社会恐怖):コミュニケーション能力が十分に発達していても対人関係において不安や恐怖を感じる場合は、コミュニケーション障害のうちの社会的コミュニケーション症とは異なると判断します。
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