ユニバーサルデザインの考え方が日本に普及するまで
日本に本格的にユニバーサルデザインの考え方が広まりはじめたのは、1990年代中頃以降と言われています。それまでは「障害者のまちづくり=バリアフリー」という枠組みが日本に浸透していましたが、少子・高齢化社会への対応が求められるなかでの新たな枠組みとして、ユニバーサルデザインの概念が急速に広まっていきました。
平成14年に内閣府が発表した障害者基本計画では「ユニバーサルデザイン」の考え方が明記され、平成17年には国土交通省がユニバーサルデザイン大綱を発表しました。
平成14年に内閣府が発表した障害者基本計画では「ユニバーサルデザイン」の考え方が明記され、平成17年には国土交通省がユニバーサルデザイン大綱を発表しました。
国土交通省では、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、今後、身体的状況、年齢、国籍などを問わず、可能な限り全ての人が、人格と個性を尊重され、自由に社会に参画し、いきいきと安全で豊かに暮らせるよう、生活環境や連続した移動環境をハード・ソフトの両面から継続して整備・改善していくという理念に基づき国土交通行政を推進するため、この度、「ユニバーサルデザイン政策大綱」を策定致しましたので公表いたします。
ユニバーサルデザイン大綱を踏まえて、これまでの
・ハートビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)
・交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)
を統合・拡充したバリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)を平成18年6月に同じく国土交通省が制定しました。このバリアフリー新法には、これまでの法律の内容を踏襲しつつ、新たな内容も盛り込まれています。
具体的には、法律名をこれまでの「身体障害者」ではなく「障害者等」とし、身体障害のみならず、知的障害・精神障害・発達障害を含む、すべての障害のある人が対象となることを明確にしています。
また、バリアフリー化を求める施設の範囲を、公共交通機関・建築物・道路だけではなく、路外駐車場・都市公園にまで広げ、高齢者や障害のある人などが日常生活や社会生活において利用する施設を広く面的にとらえ、生活空間におけるバリアフリー化を進めることとしています。
・ハートビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)
・交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)
を統合・拡充したバリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)を平成18年6月に同じく国土交通省が制定しました。このバリアフリー新法には、これまでの法律の内容を踏襲しつつ、新たな内容も盛り込まれています。
具体的には、法律名をこれまでの「身体障害者」ではなく「障害者等」とし、身体障害のみならず、知的障害・精神障害・発達障害を含む、すべての障害のある人が対象となることを明確にしています。
また、バリアフリー化を求める施設の範囲を、公共交通機関・建築物・道路だけではなく、路外駐車場・都市公園にまで広げ、高齢者や障害のある人などが日常生活や社会生活において利用する施設を広く面的にとらえ、生活空間におけるバリアフリー化を進めることとしています。
ユニバーサルデザインのさまざまな事例
身の回りにあるユニバーサルデザイン
先程も述べたとおり、ユニバーサルデザインはあくまで比較の考え方であるため、完璧なユニバーサルデザインといえるものはありません。しかし、これまでみてきた自動ドアやシャンプーの容器、みんなのトイレなど、ユニバーサルデザインに配慮した製品やサービスは身の回りにたくさんあります。
例えば斜めドラム式の洗濯機は、背の高い人や小柄な人、お年寄り、子ども、車いすの人でも誰でも、洗濯物の出し入れが楽にできます。また最近の電気ポットや加湿器にはマグネット式のコンセントがついています。もしコードに足を引っ掛けてもすぐに外れるため、ポットが転倒して熱湯で火傷をするといった事故を防ぐことができます。
他にも、主に弱視の方への配慮として、夜や暗い場所でも分かりやすい発光ダイオードが内蔵された点字ブロックや、床面が低く誰でも乗り降りしやすい電車やバスなど、さまざまな製品やサービスがよりたくさんの人に使いやすいよう設計されてきています。
例えば斜めドラム式の洗濯機は、背の高い人や小柄な人、お年寄り、子ども、車いすの人でも誰でも、洗濯物の出し入れが楽にできます。また最近の電気ポットや加湿器にはマグネット式のコンセントがついています。もしコードに足を引っ掛けてもすぐに外れるため、ポットが転倒して熱湯で火傷をするといった事故を防ぐことができます。
他にも、主に弱視の方への配慮として、夜や暗い場所でも分かりやすい発光ダイオードが内蔵された点字ブロックや、床面が低く誰でも乗り降りしやすい電車やバスなど、さまざまな製品やサービスがよりたくさんの人に使いやすいよう設計されてきています。
カラーユニバーサルデザイン
カラーユニバーサルデザインとは、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)がつくった考え方です。
人間は、生まれつきの色の感じ方(色覚)に異なる特徴があります。また色覚は病気や老いによって変わることもあります。こうした人間の色覚の多様性に配慮し、より多くの人に利用しやすい配色を行った製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方を「カラーユニバーサルデザイン(略称CUD)」と呼んでいます。
たとえば、飲み物や食べ物に「加熱時にはヤケドにご注意ください。」という文字を赤色で印字して警告したとしましょう。
一般的には赤色は警告色として注意をひきますが、色覚障害がある人のなかでも特に多い赤緑色弱の人は、赤色と緑色の判別が困難です。赤緑色弱の人に赤色で警告したとしても、地色が緑色であれば、この注意を受け取ることが困難になってしまいます。
できるだけ多くの人に見分けやすい配色を選んだり、色を見分けにくい人にも情報が伝わるように配慮するのが、カラーユニバーサルデザインの考え方です。
人間は、生まれつきの色の感じ方(色覚)に異なる特徴があります。また色覚は病気や老いによって変わることもあります。こうした人間の色覚の多様性に配慮し、より多くの人に利用しやすい配色を行った製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方を「カラーユニバーサルデザイン(略称CUD)」と呼んでいます。
たとえば、飲み物や食べ物に「加熱時にはヤケドにご注意ください。」という文字を赤色で印字して警告したとしましょう。
一般的には赤色は警告色として注意をひきますが、色覚障害がある人のなかでも特に多い赤緑色弱の人は、赤色と緑色の判別が困難です。赤緑色弱の人に赤色で警告したとしても、地色が緑色であれば、この注意を受け取ることが困難になってしまいます。
できるだけ多くの人に見分けやすい配色を選んだり、色を見分けにくい人にも情報が伝わるように配慮するのが、カラーユニバーサルデザインの考え方です。
ユニバーサルデザインフード
ユニバーサルデザインフードとは、日常の食事から介護食まで幅広く使うことができる、食べやすさに配慮した食品を言います。
日本介護食品協議会はユニバーサルデザインフードについて自主規格を定めており、これに適合する食品のパッケージには、必ずマークが記載されています。
例えば、「とろみ調整食品」は食べ物や飲み物に加え混ぜるだけで、適度なとろみを簡単につけることができる粉末状の食品です。また、ゼリー状に固めることができるタイプのものもあります。とろみをつけることで、飲み物や食品が口の中でまとまりやすくなり、ゆっくりと喉へと流れます。粉末の量を変えることでとろみの程度を調整できるため、幅広い人が安心して食事することができます。
日本介護食品協議会はユニバーサルデザインフードについて自主規格を定めており、これに適合する食品のパッケージには、必ずマークが記載されています。
例えば、「とろみ調整食品」は食べ物や飲み物に加え混ぜるだけで、適度なとろみを簡単につけることができる粉末状の食品です。また、ゼリー状に固めることができるタイプのものもあります。とろみをつけることで、飲み物や食品が口の中でまとまりやすくなり、ゆっくりと喉へと流れます。粉末の量を変えることでとろみの程度を調整できるため、幅広い人が安心して食事することができます。
教育におけるユニバーサルデザイン
教育におけるユニバーサルデザインとは、学級全員の子どもたちが「わかる・できる」授業のことと捉えられています。
文部科学省は平成24年7月に、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」を報告しました。この中で、「障害のある子どもと障害のない子ども、それぞれが、授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身につける」ことが重要な視点であるとと述べられています。
そしてこれを実現するためには、合理的配慮とユニバーサルデザインの考え方に基づいた環境整備が必要であることを指摘しています。ユニバーサルデザインな教育とは、障害のある子にとって「ないと困る」支援であり、どの子どもにも「あると便利」な支援を増やすことと言えます。
例えば、落ち着いて授業が受けられるよう、黒板周りの装飾を最低限にしたり、学級内のルールを明文化して決めて、それを目につくところに掲示することなどが、ユニバーサルデザインを意識した教育の工夫として考えられます。
こうした工夫は注意力が散漫になりやすい子どもや、決められたルールがないと混乱してしまう子どもにとって必要不可欠な支援ですが、そうでない子どもたちにとっても学びを最大化できるような支援と言えるでしょう。
文部科学省は平成24年7月に、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」を報告しました。この中で、「障害のある子どもと障害のない子ども、それぞれが、授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身につける」ことが重要な視点であるとと述べられています。
そしてこれを実現するためには、合理的配慮とユニバーサルデザインの考え方に基づいた環境整備が必要であることを指摘しています。ユニバーサルデザインな教育とは、障害のある子にとって「ないと困る」支援であり、どの子どもにも「あると便利」な支援を増やすことと言えます。
例えば、落ち着いて授業が受けられるよう、黒板周りの装飾を最低限にしたり、学級内のルールを明文化して決めて、それを目につくところに掲示することなどが、ユニバーサルデザインを意識した教育の工夫として考えられます。
こうした工夫は注意力が散漫になりやすい子どもや、決められたルールがないと混乱してしまう子どもにとって必要不可欠な支援ですが、そうでない子どもたちにとっても学びを最大化できるような支援と言えるでしょう。
「普通」ってなんだろう?子どもと関わるときに大切にしたい「インクルーシブ教育」という考え方
インクルーシブ教育とは?考え方や背景、具体的な取組み、課題点について【専門家監修】
合理的配慮とは?考え方と具体例、合意形成プロセスについて【専門家監修】
心のユニバーサルデザイン
現在、徐々にユニバーサルデザインが定着してきていますが、施設整備(ハード面)を整えてゆくことには一定の限界もあります。そこで大切になってくるのが”心のユニバーサルデザイン”ともいわれる「ユニバーサルマナー」です。
ユニバーサルマナーは、いくら優れたデザインのプロダクトや環境が増えても、私たち自身のこころが多様な人びとに向き合える人でなくてはよりよい社会にはなっていかないという考え方に基づいています。高齢者や障害者、外国人やベビーカーを利用している人など、自分とは違く立場の人の視点に立ち、行動することは誰もが必要な心づかい=マナーです。
例えば、困っているようにみえる人に対して「大丈夫ですか?~できますか?できないですか?」という声をかけるのではなく「お手伝いできることはありますか?と声をかける違いだけで、相手の感じ取りかたが大きく違ってくることがあります。
どう声をかけていいかわからないと見て見ぬふりをしてしまったり、相手が困っていると決めつけて手をさし伸べ手てしまったり、どちらも正解はなく難しく考えてしまう人もいるかもしれません。ですが、世の中では自分とまったく”同じ”をみつけることのほうが難しいです。100点の対応ができなくてもいいのです。自分と違う立場の人のことを知り、考えることもユニバーサルデザインのひとつになっていきます。
ユニバーサルマナーは、いくら優れたデザインのプロダクトや環境が増えても、私たち自身のこころが多様な人びとに向き合える人でなくてはよりよい社会にはなっていかないという考え方に基づいています。高齢者や障害者、外国人やベビーカーを利用している人など、自分とは違く立場の人の視点に立ち、行動することは誰もが必要な心づかい=マナーです。
例えば、困っているようにみえる人に対して「大丈夫ですか?~できますか?できないですか?」という声をかけるのではなく「お手伝いできることはありますか?と声をかける違いだけで、相手の感じ取りかたが大きく違ってくることがあります。
どう声をかけていいかわからないと見て見ぬふりをしてしまったり、相手が困っていると決めつけて手をさし伸べ手てしまったり、どちらも正解はなく難しく考えてしまう人もいるかもしれません。ですが、世の中では自分とまったく”同じ”をみつけることのほうが難しいです。100点の対応ができなくてもいいのです。自分と違う立場の人のことを知り、考えることもユニバーサルデザインのひとつになっていきます。
ユニバーサルデザインのこれから
さまざまな分野に応用されているユニバーサルデザインの考え方ですが、その認知度は決して高くありません。
内閣府による2005年の調査によると、「バリアフリー」については、「ことばも意味も知らない」人は4.5%で、ほとんどの国民に認知されているようです。一方で、「ユニバーサルデザイン」については、「ことばも意味も知っている」と答えた人は約30%、ことばだけを知っている人を合わせても約60%であり、「ことばも意味も知らない」が約35%にのぼっていました。
内閣府による2005年の調査によると、「バリアフリー」については、「ことばも意味も知らない」人は4.5%で、ほとんどの国民に認知されているようです。一方で、「ユニバーサルデザイン」については、「ことばも意味も知っている」と答えた人は約30%、ことばだけを知っている人を合わせても約60%であり、「ことばも意味も知らない」が約35%にのぼっていました。
ユニバーサルデザインは、「障害のある人のために特別な配慮をしよう」という考え方ではなく、私たちだれもがより暮しやすい社会を実現するための考え方です。
ユニバーサルデザインの視点に立って、世の中のさまざまなモノやサービスを見てみると、今までにはなかった新しい発見や、今まで気づかなかった新たな課題が見つかるかもしれません。
ユニバーサルデザインの視点に立って、世の中のさまざまなモノやサービスを見てみると、今までにはなかった新しい発見や、今まで気づかなかった新たな課題が見つかるかもしれません。
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