LD(学習障害/限局性学習症)のある子どもにビジョントレーニングは有効?

LD(学習障害/限局性学習症)とは、知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」力のうちいずれか、または複数で習得、使用に著しい困難を示している状態のことです。暗記や理解する機能などに困難があると思うかもしれませんが、実は「見る力」の弱さが原因となっている場合があることが分かってきました。

例えば、「教科書を読むのが苦手な子ども」について考えてみましょう。

教科書に書いてある文字を追うためには、眼球運動の力が関わっています。眼球運動がすばやく、正確にできないと、読みとばしが増えたり、読んでいる場所を見失ってしまったりして読書効率が落ちてしまうことがあります。
また、見る場所は合っていても、文字の形を正確に素早く認識することができないと音声化する際にたどたどしくなってしまいます。
もちろん、同じ場所や近い距離にある文字をずっと見ているのが苦手な場合には、長時間読んでいると疲れを感じ、意欲が低下するかもしれません。

このほかにも「見る力」を含む複雑で多様な力を総動員させながら、子どもたちは学習活動を行っています。勉強が苦手な子どもに、実は「見ること」や、「見た情報をもとに体の動きを制御する」ことの困難さがないかを丁寧に把握することが大切です。

だからこそ「見る力」の弱さが原因の場合、そのフォローをせずに、ひたすら音読や書き取りの練習だけを積み重ねても効果が出にくいことがあるのです。

しかし、LD(学習障害/限局性学習症)のある子どもは、「頑張りが足りない」「やる気がない」などと個人の意志や努力不足と勘違いされてしまうことが少なくありません。それが積み重なると、自己肯定感や学習意欲も低下してしまいます。

そのため、そのため、ビジョントレーニングによって目の働きを高めることは重要です。併せて、文字を大きく、分かりやすい字体にしたり、スリット状にした厚紙等で文章の見える行を少なくしたりするなど、読みやすい環境を整備することで、LDのある子どもの困難の解決につながる可能性がより期待されます。トレーニングと環境調整の両面から支えていきたいところです。

ビジョントレーニングはどこで受けられるの?

ビジョントレーニングはどのような人によって行われているのでしょうか。この章では、ビジョントレーニングを行う人や、取り入れている場所についてご紹介します。

ビジョントレーニングは、療育施設やスポーツジム、視覚に特化した民間のトレーニングセンターなどで受けることができます。また、専門家に指導を受けるなどしてスキルを身につけた学校の先生が、通級指導教室や特別支援学級で指導されることも多くなりました。学校によっては、全校や学級全体での取り組みも報告されるようになっています。

また、ビジョントレーニングの専門家として「オプトメトリスト」という資格を有している方がいます。「オプトメトリスト」はアメリカや中国、フィリピンなど多くの国で国家資格とされていますが、国内ではこれまで民間資格として位置づけられ「認定眼鏡士」とも呼ばれてきました。「認定眼鏡士」は、各地の眼鏡店を中心に働いておられますので地域の情報をご確認ください。また、「認定眼鏡士」は2022年度より国家資格「眼鏡作製技能士」へと移行するということで、更なる発展が期待されます。

このようにビジョントレーニングを受けることができる場所は増えつつあります。学習場面に特化したものや、スポーツに活用できるように工夫されたものなど、さまざまな形態があります。目的に沿った場所を選ぶようにしましょう。

まとめ

私たちは普段目でものを見て生活をしていますが、「見る」ということは、視力以外にさまざまな機能を使用します。また「見る力」に弱さがあることによって、学習における困難につながることもあります。

子どもの読み書きの困難の裏側には、視覚機能の問題が隠れているかもしれません。さまざまな可能性に目を向け、原因を探っていくことが大切です。
学習につまずく子どもの見る力―視力がよいのに見る力が弱い原因とその支援
奥村 智人 (著), 若宮 英司 (著), 玉井 浩 (監修)
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LD,ADHD&ASD 2022年 04月号 (「見る力」を育む「ビジョントレーニング」―概論・アセスメント・指導の実際―)
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