心身症とは?症状や子どもの心身症の傾向、うつ病との違いなど【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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一般の内科などを受診してもなかなか治らない頭痛や腹痛などの身体症状に悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
その身体の症状が心理的な要因からくるものである場合は心身症と分類され、身体と精神の両面からの治療が必要となります。この記事では心身症の定義、種類、原因、診断方法から心身症になりやすい人の特徴、薬物療法や心理療法などの治療方法まで紹介いたします。

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監修: 染村宏法
精神科医
産業医
大手企業の専属産業医として勤務後、昭和大学精神医学講座へ入局、昭和大学附属烏山病院での勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動に従事。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、簡易型認知行動療法、睡眠衛生等に関する介入研究や教育に携わった。
目次

心身症とは?種類や症状、原因、子どもの心身症を解説

心身症とは、特定の疾患を指す疾患名ではなく、身体疾患のなかでも、症状の発症や経過に心の状態が密接に関与している状態を指す言葉です。

例えば、片頭痛とは頭の片側または両側がずきずきと痛み、吐き気や嘔吐を伴うこともある疾患です。発症にはさまざまな要因がありますが、精神的・身体的にストレスを受けたことが要因となっている場合があり、このような時に心身症であると言えるのです。

また、あくまでも心身症は心理的な要因が関わる身体疾患であり、精神疾患ではありません。

心身症の定義はいくつかあり、日本心身医学会においては
「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」
引用:心身医学の新しい診療指針|日本心身医学会教育研修委員会
出典:https://doi.org/10.15064/jjpm.31.7_537
とされています。

また、世界保健機構(WHO)が公表している国際疾病分類の「ICD-11」においては、
「他に分類される障害又は疾患に影響を及ぼす心理的又は行動上の要因」
引用:ICD-11における心身症の位置づけ|須藤 信行
出典:https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1240080570.pdf
と定義づけられています。

いずれにしても、何らかの心理的な要因によって身体的な疾患や障害が生じている状態のことを心身症としています。

心身症の症状と種類

心身症は心理的な要因により生じるさまざまな身体的な疾患の総称であり、症状は人それぞれ異なっています。以下によくある心身症の症状一覧を紹介します。

◇呼吸器系
気管支喘息、過換気症候群、神経性咳嗽など

◇循環器系
本態性高血圧症、本態性低血圧症、起立性低血圧症、狭心症、心筋梗塞など

◇消化器系
過敏性腸症候群、胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎など

◇内分泌・代謝系
糖尿病、甲状腺機能亢進(こうしん)症、摂食障害(神経性食欲不振症、神経性過食症)など

◇神経・筋肉系
筋緊張性頭痛、片頭痛、慢性疼痛、チック、痙性斜頸(頸部ジストニア)など

◇皮膚科領域
アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、円形脱毛症など

◇整形外科領域
慢性関節リウマチ、腰痛症、頸肩腕症候群、全身性筋痛症など

◇産婦人科領域
更年期障害、月経前症候群、月経痛など

◇眼科領域
原発性緑内障、眼精疲労、本態性眼瞼痙攣など

◇耳鼻咽喉科領域
耳鳴り、メニエール症候群、動揺病、心因性難聴など

◇歯科・口腔外科領域
顎関節症、口腔乾燥症、三叉神経痛など

子どもの心身症の傾向

心身症は、一般的にライフステージごとに現れる症状の性質が異なるとされています。

子どもにおける心身症の特徴として、自身ではストレスを認識しておらず、悩みはないと答えることが多いということです。しかし、実際はさまざまなことにストレスを感じており、そのことで頭痛や発熱など身体に症状が出現しています。

また、子どもにおいては不安や緊張、無気力などを感じている場合もあり、不登校や引きこもりなど別の問題につながることもあり得ます。

そのため、なるべく早く身体だけでなく精神面も含めて適切な治療を行っていくことが大切と言えます。

子どもがかかりやすい心身症については以下のページで詳しく解説されています。
参考:小児の心身症-各論|小児心身医学会HP
http://www.jisinsin.jp/detail/

心身症の原因はストレス

心身症は、強い心理的ストレスが過剰に、長期間持続することが原因になりやすいと言われています。自足するストレスが脳を通して、自律神経系、内分泌系、免疫系などに影響を与えることで、症状として現れるのではないかと考えられています。

ストレスには家庭や職場、学校における人間関係だけでなく、結婚、出産、災害、親族の死などがありますが、個人により何にどの程度ストレスを感じるかは大きく異なります。

心身症と似ている病気は?

ここでは、心身症と類似する代表的な病気であるうつ病と自律神経失調症を紹介します。心身症とうつ病、自律神経失調症は似ている部分もありますが違う疾患であり、適切な治療方法が受けられないと症状が長引いてしまう場合もあるので注意が必要です。

心身症とうつ病の違い

うつ病は気分の落ち込みや意欲の低下などの症状が現れる精神疾患です。ただ、うつ病は精神症状だけでなく、頭痛、吐き気、めまい、食欲の増加・低下など身体に症状が現れることもあります。

また、正式な医学名ではありませんが、仮面うつ病と言って精神症状より身体症状が目立つうつ病もあります。仮面うつ病の場合は、身体症状に苦しむことが多く、内科や産婦人科など身体面を診る科を受診することも多いと言われています。

心身症と似ている部分もありますが、うつ病も仮面うつ病も身体症状が出ていたとしてもあくまで精神疾患で、用いられる薬など治療方法に違いがあります。

心身症と自律神経失調症の違い

自律神経失調症とは、検査しても明らかな異常がみられないのに、肩こりやめまい、不安感などのさまざまな不快な症状が現れる状態のことです。

心理的な問題やストレスが原因である点は心身症と類似していますが、実際に身体の臓器もしくはその機能に明らかな異常がみられる点において違いがみられます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。
自律神経失調症とは?うつ病とは違う?原因、症状や治療法など【医師監修】のタイトル画像

自律神経失調症とは?うつ病とは違う?原因、症状や治療法など【医師監修】

心身症の治し方は?

心身症では身体の症状に合わせた治療と共に、薬物療法や各種心理療法などを組み合わせて行われます。

胃潰瘍や喘息などの本人が抱えている症状にあわせて、一般内科や各診療科で行われるような身体面からの治療が行われます。

心理療法

心理療法とは、心に働きかけてストレスを減らしていく治療法のことです。

心理療法には多くの種類があり、主なものとして認知行動療法、精神分析的心理療法、家族療法、問題解決療法などがあります。この中の認知行動療法では、カウンセリングやワークなどを通して物事の捉え方のくせを把握して、心のバランスを取っていくことを目的とした心理療法です。

生活指導

食生活や運動、睡眠などにおける生活習慣の歪みも、症状と密接に関連します。生活指導では、規則正しい生活を送れるよう諸々の生活習慣や症状の経過などの記録を参考にしながら指導が行われます。

薬物療法

薬物療法には、身体症状に対応する薬を用いた治療と、抗不安薬や抗うつ薬などを用いた治療などがあります。
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