こんなとき、どうする?発達障害がある私が「仕事で失敗した」ときの考え方と対処法

ライター:凸庵(とつあん)
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ADHDとASDがあると診断されている私は、「自分の特性が仕事の場面でプラスに働いている」と感じる部分がいくつもあります。でももちろん、失敗してしまうこともあり、そのたびに試行錯誤を繰り返しています。今回は、私が特性ゆえに失敗してしまった経験や、そこから気付いたこと、その後どのように対応してきたかについてご紹介します。

発達特性は、仕事の武器になることも“失敗”につながることもある

私はベンチャー企業で、社内プログラマとしてシステム開発の仕事をしており、現在は管理職にも就いています。前回の記事では、ADHD(注意欠如・多動性障害)とASD(自閉症スペクトラム障害)があると診断されている私の発達特性が、仕事の場面でプラスに働いている部分についてご紹介しました。
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発達特性を活かせば武器になる!私が仕事で「役に立っている」と実感する4つのメリット

特性を活かすことで仕事上の武器となった経験もありますが、もちろんうまくいくことばかりではなく、さまざまな場面でたくさんの失敗もしています。 そこで今回は、特性が影響して失敗してしまった経験や、その乗り越え方についてご紹介したいと思います。

失敗例1:「自分の理解と相手の理解は違う」ことが想像できず、説明が伝わらない

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新卒で入った会社で、自分が作ったプログラムの説明をしていたとき、それを聞いていた先輩から「きみが言ってることはよく分からない」と言われました。私としては「なぜこのようなプログラムを組んだのか」が分かるように説明していたつもりだったのですが、周りの人たちにはまったく伝わっていない様子だったので、とてもショックを受けました。

その後も同じようなことが続いたので、私は「なんであの人は、こんな簡単なことも分からないんだ!」「あの人たちは頭が悪いんだ!」というように、説明が伝わらないのは周りのせいだと思っていました。でも…何度か同じことを繰り返しているうちに、私は「これは周りが悪いのではなく、自分の伝え方がよくないのでは?」と思うようになりました。

今振り返ってみると、私は「自分は知っているけども、相手は知らないこと」を説明しないまま、自分の考えを説明していたのだと思います。

…と、ここだけ書くとよくあるビジネス書の一節のようになってしまいますが、私の場合はそもそも「自分と相手は違う考え方をしていて、知っている情報も、考えている前提条件も違っている」ということを、想像することさえできていませんでした。これは恐らく「自分の理解と相手の理解が異なっていることを想像できない」という私の特性のために起こっていたのだと思います。

◇失敗からの学びと解決策◇

この状況を何とかするために「自分と同じ考えをしている人が誰もいない環境で、自分の考えを意図通り伝えるためにはどうしたらいいか?」を考えながら試行錯誤し続けてきました。

相手は、自分が知っていることを同じように知っているとは限らない。それに気付けたことで、何か説明する場面でもしっかり意識できるようになり、今では当時ほど「自分の考えが伝わらない」ということは少なくなりました。むしろ「きみの話は分かりやすいね」と言ってもらえることもあり、うまくやれるようになってきたと思っています。

失敗例2:あいまいな指示を受けたとき、具体的に何をすれば良いのか分からない

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以前、とあるECサイトの改修を行う際に、稟議を通すための資料を作るよう依頼されたことがあります。そのとき「前に作った資料があるから、それと同じように作って」と言われました。

指示を出す側としては「同じようなレイアウトで、同じようなデータをまとめてほしい」という意図なのだろうと理解したのですが、そもそも何を説明するための資料なのかという“目的”が分からなかったため、どこから手をつければ良いのか分かりませんでした。

これは「あいまいな状況では、すべての可能性を考えてしまう」という私の特性によるものだと思います。データ項目が同じならいいのか、フォーマットが同じならいいのか、フォントまで一致させなければいけないのかなど、「何をどこまで同じにすればよいのか」「どの情報が必要で、どの情報が不要なのか」が分からず、あらゆる可能性を想像しすぎてしまったのです。

◇失敗からの学びと解決策◇

そこで、このようなあいまいな指示を受けた場合には「同じフォーマットで同じデータ項目を用意するイメージですか?」「少し作ってみたんですけど、このような感じでよろしいでしょうか?」というようにこちらから確認するようにしています。

失敗例3:ひとつのことに集中しているとき、他のことを並行してこなすことができない

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新卒の頃、その部署にかかってくる外線電話の電話番を担当していました。もうご想像いただけるかもしれませんが、電話番をするのがとても苦手でした。

電話をとって「電話をかけている人の名前」や「電話の宛先の人の名前」を聞き取ろうと思うのですが、うまく聞き取れず、何度も聞き返すことになってしまいます。そして相手の声がどんどんイライラしてくるのが伝わってきて…。電話がかかってこないことを祈る毎日でした。

なぜ電話番が苦手なのかを考えてみたのですが、プログラミングにのめりこんでいるときに電話がかかってくると、それまでやっていたことを頭から追い出して、相手の話を聞きながらメモを取らなければなりません。一度にやらなければならないことが多すぎて、「何かひとつのことに集中しているときに、他のことを並行してこなすことが難しい」という特性がある私にはとても難しかったです。

これまでご紹介した事例では、試行錯誤しながら自分なりの対応方法を見つけていて、現在はほとんど問題がなくなったものばかりでしたが、電話対応の難しさについては未だに解決策を見つけられていません…。職場の同僚に電話対応が苦手なことを伝えたりして、なるべく電話に出なくてもよい状況を作っている、というのが精一杯です。

自分でもどうしようもないこともある。でも、何とかなる!

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私は、自分の特性について「工夫で何とかなる特性」と「自分ではどうしようもない特性」があると思っています。自分の力で特性をうまくコントロールできなくても、代わりの方法を見つけることで何とか切り抜けられることもありますし、その特性があっても失敗しない状況を作るように働きかけることもあります。

もちろん、それでも失敗することだってあります。そんなときは「次は何とかしたい!」と思いながら改善策を試していくことで、何もしないよりは失敗する頻度が減るかもしれませんし、それでもどうしようもないことは受け入れるしかない場合もあります。そんなことを繰り返しながら、私も何とか30年以上やってこれました。

今は新年度が始まり、環境が変わった人も多い時期です。新しい環境では、普段以上にいろいろな失敗をすることもあるかもしれませんが、参考にしていただければ幸いです。
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