「できているから大丈夫」じゃない。思考方法もコミュニケーションも違うから――発達障害の私が社会に出て気づいた、得意と苦手のはざまの仕事

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私は発達障害のある30代の男性です。普段はシステム開発や管理職の仕事をしています。そんな私には得意なこと、苦手なことのほかに「やればできるけれどものすごく疲れること」があります。
仕事をしている成人の発達障害当事者の方の中には身に覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、お子さんについても、アクティブラーニングの授業や学校行事などが「だから苦手なのか」「だから疲れるのか」と思い当たるかもしれません。

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やればできるけどものすごく疲れることってどういうこと?

私が仕事をする中で取り組んでいることは、いつも自分が得意なことや、逆に特性ゆえに苦手なことばかりという訳ではありません。むしろそのどちらでもない部分を求められることがよくあります。

その中でも「もともと得意ではなかったけれど社会人になってから何とか身につけた能力」を使う仕事をしているとき、ものすごい疲労感を覚えます。私にとってのもともと得意ではなかったことというのは、「あいまいな状態が長く続くような状況」や「それまで全く想像もしていなかった相手の気持ちを想像すること」をさします。

これらは社会人になってから仕事をする中で繰り返し取り組み、少しずつ対応できるようになりました。しかし、同じような仕事を得意な方法で進めるときと比べると、体感で3倍近く時間がかかっているように感じるほどです。

そんなときには、自分としてはあまりうまくいっていないように感じることも多いのですが、周りからはそれなりによくできているように見えるらしく、思いのほか高く評価される場合もあります。そのためこの状況を他人から問題視されることはありませんが、自分にかかる負荷は普段より大きく、なるべく避けたいと思っています。

自由度が高すぎる状況が疲れる

一番最初に浮かぶ、私がやればできるけれどとても疲れる仕事というのが「自由な状況で好きに進めていい」仕事です。

「自由に進めていい」と言われると信用してもらっているんだなと感じるのでうれしくはあるのですが、「あいまいな状態が長く続くような状況」が苦手な私にとっては、進める上でまずその状況を整理していく作業が必要となります。そのため、仕事を進めるにあたっての労力がいつもよりも余計に必要になるのです。いろいろな状況をシミュレーションして頭の中でトライアンドエラーを繰り返してしまい、労力のわりになかなか前に進まない状態が続いてしまいます。

例えば以前、新しいシステムを作るときに、リーダーから「全部凸庵さんの好きに作っていいよ」と言われたことがありました。

システムエンジニアがシステムを開発する際には、どこで動くようにするか(スマホアプリ・webページ・PCにインストールするソフト など)、どういうツールを使って開発するか、どんなプログラミング言語(システムの動きを記述するためのもの)を使うかなど、決めなければならないことが山ほどあります。

「このシステムはwebページで使われる」「androidアプリとして配布する」というような制約事項が先に決まっていれば開発は進めやすいのですが、作るものだけが決まっていて、そこに向けての手立てが何も決まっていないような場合には、すべて自分で決めていく必要があります。

このときは、あらゆる状況を想像して、一つひとつの制約をじっくり決めていきました。社会人になり仕事をしていく中で、苦手なあいまいな状況の中では自分で条件を付けて状況を整理していくことで、業務が進めやすくなることを経験から習得していたため、このときもなんとか完成させることができました。

しかし、普段の業務と比べてかなりの労力を使い、非常に疲れる経験でした。

あいまいな状況が苦手な上に、「えいや!」で理由なく物事を決めることができない性格や特性も災いして、細かいことでも何かしら理由をつけて最善を選ぼうとしてしまうことが、こうした自由度が高い環境で私が「やればできるけれど疲れる」大きな原因なのだと思います。

日常生活に置き換えると、今日の晩御飯何がいい?と家族に聞いて、「なんでもいいよ」と言われ、さらに今日は食材も調理器具もなんでも揃っている、というような状態がかなり近いかなと思います。人によっては苦もなくメニューを決めることができるかもしれませんが、私の場合、栄養面・味付け・最近食べたもの・使いたい調理器具・ガスかIHか... など、いろいろなことを考えて、決めるまでにかなり疲れてしまうのです。

利害関係者に仕事を依頼することが疲れる

また別のシステム開発では、他の部署の人に仕事をお願いしながら、共同で進めなければいけないこともありました。その際に私が非常に疲れたのは、コミュニケーションの面です。

最初に述べたように「それまで全く想像もしていなかった相手の気持ちを想像すること」が苦手なので、このような仕事は苦手だとわかっていたのですが、当時のチームメンバーが全員「他チームとのやり取りを担当したくない」と言っていたため、仕方なく私が担当することになりました。

私は直観的にひとの気持ちを想像することがとても苦手です。そのため、普段相手の気持ちを想像するときは「このひとならこういう考え方をするから、この状況ではこう思うだろう」というように、そのひとの思考をシミュレーションして何とか対応しています。

このときは、相手に快く動いてもらえるようやり取りをする必要があったため、普段の業務では関わっていなかったひとたちに対して、このシミュレーションをかなりの回数行う必要がありました。うまくお願いした仕事をこなしてもらわないと、プロジェクトが頓挫してしまうため必死でした。

数か月後、無事に他部署との連携のもとシステムをリリースすることができ、上司や同僚からも感謝されましたが、苦手なコミュニケーション方法を繰り返していたため、私自身はかなりしんどかった記憶が強く残っています。

正解がわからない中で進めなければならない状況が疲れる

あいまいな状況が苦手な私ですが、普段の業務に加えて管理職になって多くなってきたのが、誰も確実な正解を持っていない仕事です。

例えば社員の誰かが何かトラブルを起こしてしまったときなどがそれにあたります。そのトラブルをどう収めるのが最善なのかはケースバイケースなので、その都度状況に合わせて判断していく必要があります。

経験豊富な方にとってはおおよその正解パターンと道筋が見えていることもあるのかもしれませんが、私は管理職としての経験がまだ浅いためか、毎回じっくり考えて対応する必要があります。考えるといっても数学の答えやプログラムのバグの原因のように絶対的な答えが用意されているようなものではないので、状況を整理しながらおおまかな方針を立て、状況をみて修正しつつ進めていくことになります。

日常の中では、例えばお子さんがいたずらをしてご近所さんに迷惑をかけてしまった状況を想像してみてください。お子さんにはどのような内容や話し方で言い聞かせたらよいか、ご近所さんへの謝罪はお菓子を持って行くべきかどうか、すぐに行くべきか少し時間を置いてからが良いのか...などなど、相手や状況によって対応方法はさまざまですよね。

どんなやり方でも、効果があるかもしれないしよくない結果になるかもしれない。よさそうな方法はあるが、絶対にうまくいく確証はない。そういう状況が、私が疲れる「明確な答えがない状況」になります。

"目的"に沿うようなルールや手順を自分なりに設定することで、あいまいな状況の中での仕事もこなせるようになっていますが、人的なトラブルのように明確な答えがない状況は、普段頼みの綱にしている"目的"が状況によって変化することもあるため、何度もやり直さなくてはなりません。愚直に繰り返していけば何とかこなしていくことはできるのですが、やはりかなり負荷がかかっているのか家に着くとグッタリしてしまいます。

普通にやっているように見えることが、そのひとにとってすごく大変なことかもしれない

自分としては何とかこなしていることが他の人からは普通にこなしているように思われてしまうというのは、発達障害のあるなしにかかわらず実はよくあるのではないかと思っています。今回書いた内容は仕事の話がメインでしたが、仕事に関することだけでなく日常生活でもそれなりに起こっていることだと感じています。

私が「あれ?これなんかすごい疲れるな」と感じるようになったのは、社会人になって数年たってからのことでした。気づいてからは、上司や同僚に対して「自分はこういう仕事がしんどいから、途中で相談することが多いかも」と話してから仕事をするようにしていますが、子どもの頃や社会人になりたての頃は、自分がなぜ疲れているのかわからないことも多くありました。もしかしたら自覚するのが難しいことなのかもしれません。

なので、おそらく発達障害のあるお子さんから「自分はこれをやると疲れる」と言ってくることはあまりないのではないかと思います。もし無事にこなせているように見えたのに、そのあとグッタリ疲れているような様子を見たら、本人に「実はアレ結構疲れる?」「アレあまり好きじゃない?」なんて聞いてみるのもいいかもしれません。本人がそれまで気づいていなかったらそのときはじめて考えてみて、どうだったか教えてくれるのではないかと思います。

また、もしかしたらあなたの周りで普通に何かをこなしているように見えているひとの中にも、実はかなりしんどい思いをしているひとがいるかもしれません。他のものごとと比べて明らかにしんどそうな顔をしていたり、どうも時間がかかっているなと感じることがあったら、軽く一言かけてみていただけると、本人としても楽になるのではないかと思います。

そしてもし可能であれば、本人がしんどいと感じている部分をフォローしていただきたいと願っております。
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