滑舌をよくするために、家庭でできることは?

滑舌をよくすることは、言語聴覚士の指導が大切ですが、それだけでよくなるということでもありません。家庭での子どもとの「関わり」、「やりとり」が話せるようになる基礎をつくります。

大切なのは、子どもが興味・関心を示しているものについての言葉掛け

子どもが何かに興味を示しているときに、興味の対象について、言葉掛けをしてみましょう。たとえば、りんごを見ていたら、「これはりんごだよ」と教えて「おいしそうなりんごだね」「このりんごは甘いかな?」などと、さまざまなことばで声をかけます。

このとき、子どもがまねをして「ご」とだけでも言えたなら、「そうだね、りんごだね」と答えて「やりとり」を続けましょう。ここで「『ご』じゃなくて、『りんご』だよ」などと否定したり、正しく言い直させたりしなくて大丈夫です。単語の一部しか発音できない場合、何がその原因となっているのか、専門家と相談してみることも大切です。

構音に苦手があり、歯並びや上あごの形状や筋力の問題、聴力の問題などがある場合は、専門家による診断・治療が必要であったり、指導によってサポートしていくことがあります。そのほかにも、吃音や場面緘黙症など、心の発達の面からのアプローチが必要な場合もあります。

発音の練習や構音に関わる筋肉のトレーニングについて

筋力が足りなくて滑舌がうまくいかない場合には、ある程度トレーニングすることが必要です。たとえば、口の周りの筋(口輪筋)を強化する口の締まりをよくする運動や、舌の位置を確認しながら動かし方を学習するトレーニングなどがあります。

ただ、こうしたトレーニングや口の中の運動を子どもにさせようとしても、なかなかやりたがらない、習慣化することが難しいということもあります。その場合には、「この動き、できるかな?」とクイズやゲームのようにしてみたり、ことば遊びをしてみたり、好きなキャラクターや絵本を使って誘ってみたりなど、遊びの延長でトライしていきましょう。子どもが楽しみながら、遊びの中でトレーニングを積み重ねていくことが重要です。

代表的なお口のトレーニング① 舌のトレーニング

舌先を前歯の後ろの上あごに当てます。これが唇を閉じた時の正しい舌の位置であることを覚えましょう。もし、鼻が詰まっているなど鼻呼吸がうまくできていない場合は、舌先がここにあるのは苦しいはずです。嫌がったりできなかったりしたら、耳鼻科を受診してください。

そのほか、舌を押し上げる、左右に動かすなどがしっかりできるように筋力をアップすることが大切ですが、自ら舌(あるいは唇・頬)の筋肉を動かせない、または動きが弱い方に対して、舌(あるいは唇・頬)の動きを身につける「バンゲード法(筋刺激訓練法)」といった訓練があります。舌運動機能の発達に遅れがみられるお子さんでは食べ物を噛む、送り込み、飲み込めむといった摂食嚥下機能に問題がみられることが多いです。摂食嚥下機能向上のためにも、舌の筋力を強化することが大切で、そのための器具などもあります。これらの訓練方法については、病院歯科や大学病院などある摂食嚥下外来などにご相談ください。

代表的なお口のトレーニング② 口唇閉鎖のトレーニング(ボタンプル訓練)

日常的に口が「ぽかん」と開いているお子さんには、口唇閉鎖力を鍛えるトレーニングがあります。大きめのボタンを用意し、ボタン穴に糸や紐を通します。ボタンの部分を口にくわえさせ、上下の唇を閉じます。ひもを引っ張ったときに、ボタンが口から出ないようにします。また、同様のトレーニングができるような器具もあります。このような方法で、唇と頬の筋肉を鍛えることができます。

こうしたトレーニングも、言語聴覚士や歯科での指導を受けることで、その子に合った方法を見つけることができるでしょう。

ただ、月に数回の指導だけでは、口の中の状態を鍛えていくのは難しいものです。日々の積み重ねが必要なので、親子共に楽しく続けられる方法を探しましょう。
そして、おしゃべりするときは、滑舌ばかりを気にしないで、楽しいコミュニケーションを大切にしてください。伝えたいことがある、聞いてほしいことがある、おしゃべりが楽しいと感じることが、何よりも大切です。

まとめ

子どもの滑舌が悪い、構音がうまくできていないと感じたときには、小児科や耳鼻科、歯科を通じて、言語聴覚士の指導を受けられるようにしましょう。とはいえ、専門家におまかせではなく、日々の積み重ねが必要です。構音は、心の成長と共に体の機能の成長やトレーニングによって発達していきます。親子で楽しく続けられる工夫をしていきましょう。
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