育児書は「定型発達の教科書」のようで。わが子の自閉症が分かったとき、一度は見るのをやめたけど。今改めて開いたら…

ライター:みん
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わが家には、私が長男を妊娠・出産をしたときに買った育児書があります。
その育児書は、初めての育児で何も分からず、育児経験がなかった私にとっては、とても参考になるものでした。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

長男が乳幼児期のころは育児書を参考にしながら育てていた

私が読んでいた育児書には、乳幼児期の予防接種、離乳食、病気のことのほかにも、生まれたときからひと月、ひと月の赤ちゃんの平均的な成長の様子や、1歳から3歳までの発育段階などが書かれていたので、何か気になることがあれば、それらと比較しながら長男を育てていた記憶があります。

その育児書は、長男が2歳を過ぎたあたりからほとんど手に取ることもなくなっていたのですが、私は「今後2人目を授かることができれば、また何かの参考になるかもしれない」と思い、捨てずにとっておくことにしました。
何歳ごろから「フォークが使えるようになる」のか、「自分で着替えができるようになる」のか、母が育児書の内容を読んでいる様子。2人目ができたときのために、育児書を本棚にしまう様子。
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そして次男のPが生まれてから、私は2人目の育児ということもあり、育児書を開くことは滅多になく、その育児書の存在も忘れかけていました。

でも、Pが1歳半を過ぎたあたりのころ、1歳半健診でPの発達に疑問を持ち始めた私は、そういえば!と育児書の存在を思い出し、久しぶりに育児書を手に取り読んでみました。そこには「1歳半ごろにはこのような成長が見られる」「2歳ごろにはこんなことができるようになる」などと書かれていて、その育児書に書いてある発達段階と、Pの発達段階との差に私は驚き、焦り始めました。

それから先は、Pが年齢を重ねるごとに育児書に書いている内容に追いつくどころか、どんどん差が広がっていき、私はその育児書を見ること自体がつらくなってしまいました。育児書に書いてある「平均」とされている発達段階は、発達障害のあるわが子を育てている私にとっては参考になるどころか、逆に残酷な内容になってしまっていたような気がしました。

育児書なんて見たくない!つらくなるだけ!!

育児書に「指差しできる」と書いてある月齢になっても「リンゴを指差して」という母の声掛けに反応しない息子。泣き叫ぶ息子の様子を見てつらくなる母の様子。
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そして時は過ぎ、Pは小学1年生になり、私自身の気持ちも落ち着いたころのことです。部屋の片づけをしていたときに、まだ捨てずに置いてあった育児書の存在を思い出しました。もう捨ててしまおうと思ったのですが、その前に4年ぶりくらいに育児書のページを開いてみました。

そこには変わらず赤ちゃんの成長の様子が書かれていましたが、私はそれらを見てこう思いました。「参考になる!」と…

Pは現在7歳ですが、発達年齢は2歳前半くらいです。育児書には「2〜3歳ごろには3語文を話し、3歳ごろには滑らかに話すようになります」と書いてありました。現在のPもまだ単語が主ではありますが、たまに2語文から3語文を話し始めるようになってきたので、もしかしたら「何年か後には滑らかに言葉が出るようになるかもしれない?」と、読むのがつらかったはずの育児書から希望を持てるようにもなりました。
「2~3歳ごろには3語文を話し、3歳ごろには滑らかに話すようになります」という育児書の記載をみて、今になって参考になると思えた。そしていつか息子が「お母さんおはよう!学校行く!」と話せるようになるかもしれないと希望が持てた。
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時が経ち、今ごろになって育児書が参考になると思えた…

そして、育児書にはこんなことも書かれていました。

「ママが他の人と会話するのを見せれば、赤ちゃんもママの真似をして自然とお喋りするようになります。」

Pの場合は、自然とお喋りするのは難しいのですが、私が誰かと何気なく会話している姿をPに見せることは、7歳になった今のPにとっても、ちゃんと学びの場につながっているのかもしれない!と改めて気づかされました。久しぶりに開いた育児書から、日頃の些細なことからでも、Pの発達を促すことができるということを思い出させてもらえました。
会話する様子を息子に見せ、聞いていないように見えても、やりとりを吸収しているのかもしれないと考える母
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私は、「育児書に書いてあることが全ての子どもに当てはまるわけではない」と自分自身が痛感したことで、時に育児書の存在は、人によっては残酷なものにもなると思っていました。でも時を経て、私にとって開くのもつらかった育児書の存在は、今現在、「参考になる!」と思えるようになりました。そんな自分の気持ちの変化に驚いています。

執筆/みん
(監修:井上先生より)
育児書の発達段階は、標準的な発達が大まかな段階で分かりやすく書かれていると思います。少し年齢が上ったときにも参考になる部分はあるかもしれません。とは言え、子どもの発達は決して順番通りではなく個人差もあります。特に発達に偏りのあるお子さんは得意不得意の領域の差も大きいと思います。大まかな発達段階は参考にしながら、発達の順番通りにこだわらず、得意な分野や現在できるようになってきていることを中心に子育てされていくと良いかもしれません。
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