聞こえているのに聞き取れない?新刊『マンガAPD/LiDって何!?』で知る、当事者のつらさや困難、工夫まで【著者インタビュー】

ライター:発達ナビBOOKガイド
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合同出版

「ちゃんと聞いてた!?」「もういいよ」としょっちゅう怒られる…理解されにくく、医学的な診断名ではないAPD/LiDという症状。周囲に伝えただけでは合理的配慮を受けづらいのも現状です。今回紹介する『マンガ APD/LiDって何!?』は、聞こえているのに聞き取れないAPD/LiD当事者が感じているつらさや困難、どのような工夫や周囲の協力があれば安心して過ごせるのかを、全編漫画仕立てで楽しく読み進めながら理解できる一冊となっています。

APD/LiDって何だろう? どんな症状でどんなことが苦手なの?

「ちゃんと聞いてた!?」「もういいよ」としょっちゅう怒られる…理解されにくく、医学的な診断名ではないAPD/LiDという症状。周囲に伝えただけでは合理的配慮を受けづらいのも現状です。今回紹介する『マンガ APD/LiDって何!?』は、聞こえているのに聞き取れないAPD/LiD当事者が感じているつらさや困難、どのような工夫や周囲の協力があれば安心して過ごせるのかを、全編漫画仕立てで楽しく読み進めながら理解できる一冊となっています。

本書第1章ではAPD/LiDとはなにか、どういう症状なのかを詳しく解説。第2章では、APD/LiDの日常生活や困りごと、普段からしている工夫などを、当事者のリアルな声と共に紹介しています。
マンガ APD/LiD って何!?: 聞こえているのに聞き取れない私たち
きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修)
合同出版
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APD/LiDって何?

APD(Auditory Processing Disorder)は聴覚情報処理障害、LiD(Listening Difficulties)は聞き取り困難のことを指します。要は、「聴力には問題がないのに、雑音下では聞き取りづらい、聞いて理解するのが難しい、といった困りごとがあるため、周囲には理解されづらい症状」です。

APD/LiDと難聴の明らかな違いは、APD/LiDは「聞こえる」(耳で音をキャッチ)の部分に問題はありませんが、「聞き取る」(脳でどんな音・内容か分析)の部分で問題が起きている、ということです。

※APD/LiDは医学的な診断名ではありません。

どんな困りごとがあるの?

APD/LiDのある人が感じる困りごとや苦手なこととして、

・ザワザワしている場所での会話が難しい
・字幕がないと話が理解しづらい
・聞き返しや聞き間違いが多い


などが挙げられます。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』より
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APD/LiDのある人でも会話が成り立つのは、「推測」しているから。そもそもAPD/LiDではない人も、脳が会話の虫食い部分を話の流れや状況などから「推測」して穴埋めしています。APD/LiDのある人は、その虫食い部分が人より多いため、テンポが速く話題や話し手がコロコロ変わる大人数での会話が苦手。緊張やストレスも関係してくるため、推測しにくい初対面の人などと話すと聞き流しや聞き返しが多くなり、どっと疲れることもあるそうです。

APD/LiDのもうひとつの症状

APD/LiDには、聞き取れない以外にもう1つの症状があります。

それは「耳で聞いただけでは理解、記憶ができない」こと。人が言葉を聞き取るには、「覚醒」「記憶」「集中」「知識」「推察」の5要素が必要といわれ、中でも「集中」と「記憶」が重要になってきます。APD/LiDのある人は、この2つが苦手な場合が多いそうです。文字の場合は何度も見直せますが、聞き取るのは基本的に1回なので、「集中して」「記憶する」作業が苦手だからこそ「耳で聞いただけでは理解できない」のです。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』25ページより
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APD/LiD当事者の日常と工夫

本書第2章では、APD/LiDの「あるある」をシーン別に4コマ漫画で表現。当事者が日ごろどんな工夫をしているか、当事者本人や周囲の人へのアドバイスなどもまとめてあるので、とても参考になります。

たとえば、友人や家族との会話で「なんて言ったの?」「もう1回言って」などの聞き返しが多く、相手を怒らせてしまったというエピソードがあります。当事者の方々からは、

・なるべく明るく聞き返す
・「何?」や「え?」ではなく、話題にそって聞き取れた部分を含ませながら聞く
・言い直してくれた相手にお礼をいう


など、ご自身が実践されている対策が寄せられています。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』38~39ページより
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また、現在のコロナ禍ではマスクで口元や表情が見えず、推測しにくいため、聞き取りづらさが増している人も多いようです。その場合、「身振り手振りのジェスチャーを加えると、相手もジェスチャーで応えてくれるから分かりやすい」「失敗しても気にしない気持ちを持つ」などの工夫をしている方もいます。

全14のエピソードが載っており、「なぜ苦手なのか」「どういう工夫をしているのか」も分かりやすく紹介しているので、共感できたり、参考になることが見つかりそうです。

まずは知ってもらうこと

APD/LiDは特性ゆえ治療で完治するものではありませんが、どううまく付き合っていくかが生きやすくなるポイントだともいえます。とくに対人関係においては

・事前に聞き取りづらいことを伝えておく
・周りの理解を得る(APD/LiDの説明などで)
・普段から信頼関係を構築しておく


ということが大切です。まずは知ってもらうことが大前提なのです。

APD/LiD と分かるまでにどんなことをするの?分かったらできる対応策は?

本書第3章では、APD/LiDがあるかもしれないといわれたら、どのようなことをどのような手順で行なうのかを詳しく解説しています。続く第4章では、APD/LiD当事者が自分で実践できる対策方法を、5つのポイントに分けて分かりやすく紹介しています。

APD/LiDかも?といわれたら、なにをするの?

「APD/LiDかもしれない」という場合、専門家のもとで

・問診…APD/LiDや発達に関するチェック
・聴力を診る…ピーという一般的な聴力検査の音だけでなく、早口言葉や雑音の中の言葉を聞き取れているか、なども診る
・発達を診る…記憶力・注意力などに関する検査で、脳の特性や機能を診る

などのことを行ないます。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』67ページより
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APD/LiDの特性がみられるか、どの部分が弱いためにAPD/LiDにつながっているかが分かります。発達障害があるか疑われるケースもありますが、「自分はなにが得意でなにが不得意か」を客観的に知り、「どうやって生きやすくしていくか」を考えるきっかけになります。

中には知りたくない、隠しておきたい人もいるかもしれませんが、分かってスッキリした、学校や職場で合理的配慮を受けることができ、快適に勉強や仕事ができるようになった、というケースも多くあります。

APD/LiDに対応できる病院はまだまだ少なく、最初の窓口ともいえる耳鼻科の先生がAPD/LiDの知識を持っていないことも課題となっています。研究チームでは、多くの耳鼻科でAPD/LiDに対応できるよう、現在対応方法や手引きの整備を進めているそうです。

APD/LiDと分かったら、自分では何ができるの?

周囲に伝えて合理的配慮を受ける以外に、当事者自身でできる対応策もたくさんあります。本書第4章では、「これならできそう!」という5つの対応方法を紹介しています。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』86ページより
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①意識を変える
まずは自分の症状、要因をチェックし、自分自身を理解して、「こうすれば困らない」方法を考えてみる。

②環境の改善をはかる
「音があふれているにぎやかな場所は避ける」「静かな店を選ぶ」など自分自身で環境改善できることを見つけていく。

③補助器具を使う
送受信機やイヤーマフ、ノイズキャンセリングイヤホンなどの補助器具を使う。どれもメリットデメリットがあるため、使う前に情報を収集したり試すことが大切です。

④聞き取りトレーニング
・聞く…聞き流すだけでなく、「集中して聞いて書き出す」トレーニングが有効
・話す…話すことで多くの言葉に触れ、意味を理解して使うと「聞き取る力」も伸びる
・語彙力を高める…一度見聞きした言葉が多い方が、グッと聞き取りやすくなる

⑤ストレス軽減
聞き取りにくいことから始まる心理ストレスは、すべてを悪循環にしてしまうことも。生活リズムを整える、身近な人に話を聞いてもらうことが大切です。

APD/LiDの症状がある人が自分から合理的配慮を求めるのはなかなか難しいもの。無料でダウンロードできるAPDのヘルプマークについても紹介しています。パッと見や少し関わっただけでは分からない症状を、多くの人に知ってもらうきっかけにもなるかもしれません。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』103ページより
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子どものAPD/LiD

本書第1~4章では主に大人のAPD/LiDの場合を紹介していますが、子どもの場合はどうなのでしょうか。第5章では、著者が出会ったAPD/LiDのある子どもとその保護者のお話を紹介しています。

気づいたきっかけや時期、APD/LiDがあると分かるまでの保護者の苦悩や、診断に至るまでの過程、そこから子どもにどう対応したのか、子どもと周囲との関わりの変化などが描かれています。

子どものAPD/LiDの場合、気にかかるポイントが大人とは変わってきます。発達過程の幼少期は、発達障害なのかAPD/LiDなのか見極める時期や判断の仕方が難しいそう。また、自分から説明したり配慮を求めることも難しいため、親子で一緒に「何が必要なのか、どんな手助けが必要なのか」を具体的かつ明確にすることが大切です。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』106~107ページより
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きょこさんにインタビュー! 『マンガ APD/LiDって何!?』に込めた想いとは

自らもAPD/LiDとしての生きづらさを抱えていたり、APD/LiDゆえの喜びがあったり…だからこそ、この1冊を多くの人に読んでもらって「知って」ほしい。きょこさんが本書に込めた想い、そして願いをうかがいました。

目には見えないAPD/LiDの症状を分かりやすくビジュアル化したかった

発達ナビ編集部(以下――)『マンガAPD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』を描こうと思われたきっかけや経緯を教えてください。

きょこ先生(以下きょこ)「漫画ならば読んでもらえる、理解してもらえる」そう思ったからです。

難聴ではない、けれど聞き取れない。頭の中で言葉になってくれない。ただでさえ理解されづらいこの症状をたくさんの人に知ってもらうには、「漫画」というツールがうってつけだと思いました。

届けたい相手は、「APD/LiD当事者以外の周りにいる人」と、「なんとなく生きづらさを感じている、潜在的なAPD/LiD当事者」です。目には見えないこの症状を漫画でビジュアル化することで、小学生でも理解できる内容にしました。

当事者だから語れる、著者自身の困りごとや対応策

――ご自身が「会話が聞こえているのに、聞き取りづらさがある」、と思ったきっかけを教えてください。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』5ページより
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きょこ:本書冒頭にもありますが、きっかけは工場でのパートです。機械音でうるさい中で聞き取れない、メモが取れなくて仕事が覚えられない。ほかのみんなは同じ状況でも問題なく仕事をしているのに、自分だけなぜ?と思い、ネットや本などで調べてAPD/LiDにたどりつくことができました。それまでは自分の聞き取りに問題があるなどとは、つゆほども思いませんでした。

――きょこさんの症状を教えてください。

きょこ:・ザワザワした場所で聞き取りづらい
 例)カフェなど音楽やほかの人の会話が聞こえる場所での会話
 例)テレビを見ている時に話しかけられると、どちらの言うことも理解できない
 例)音がするだけで疲れる
 例)3人以上で会話をするのが苦手(聞き取れなかった部分を推測している間にも話がどんどん進むので、内容を理解できなくなる)

・聞いて理解、記憶することが苦手
 例)仕事内容を聞くだけで理解、記憶ができない
 例)テレビは字幕がないドラマなどが特に理解しづらい
 例)聞いた瞬間にメモを取らないと、2秒後ぐらいにもう忘れている
 例)先生の話を聞き取ることが難しく、教科書を読むことで勉強していた

などです。

――第1章「APD/LiDって何!?」の中では、きょこさんの日常でのさまざまな困りごとが書かれています。その中でも特に困ったことや、工夫してうまくいったエピソードなどあれば教えてください。
 
きょこ:私の場合、仕事が一番困りました。指示を聞き取れなかったり、聞いて覚えられなかったりで、仕事をスムーズできないために、自分を責めることになってしまいました。

手軽で効果的な工夫は、やはりメモを取るなどして「視覚化」することですね。自分で書くという行為をすることでより記憶に残りやすくなるのもいいと思います。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』28ページより
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――第2章の「当事者の声」では症状は人それぞれでその困りのバリエーションの多さに驚かされます。また、当事者の方へのアドバイスや周囲の人への配慮方法などもいろいろな立場の方への思いやりを感じます。当初から当事者の方の声を書籍に収録することは決めていたのでしょうか。

きょこ:素敵なご感想ありがとうございます!

私自身だけじゃなく、当事者のみなさんの感覚や、どんな点で困っているか、どんな手助けを必要としているのか、知りたいと思いました。また、それを本書に反映させることで、どれだけたくさんの人がこのAPD/LiDの症状で困っているのか、ということを読者に知ってもらえると思い、当事者アンケートを行うことは、本書作成時点で決めていました。

「理解を得ること」が社会を動かす

――第3章では聞き取りづらさを感じ、実際に受診したエピソードなど書かれていますが、受診前と受診後でのご自身の意識の変化などあったら教えてください。

きょこ:本書にもありますが、私は「注意力」がほかの項目より低い、という結果が出ました。思い起こせば「物をよく落とす」「気にかかることがあるとまったく集中できない」など、聞き取り以外の部分でも納得できることがありました。またそれは、自分の努力不足や性格に問題があると思っていた点でもあるので、脳の特性だと知って、いい意味で割り切ることができるようになったと思います。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』72ページより
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また聞き取りの面に関しては、私の場合は静かな環境であれば集中して行えるため、「著しく聞き取れない」ということではないということも分かりました。しかし、「聞き取る」プラスアルファの行動が必要になった場合、注意が二手に分かれることでどちらも散漫になり、聞き取りが極端に悪くなる。私の症状はここに大きな原因がありそうだと知って、面白いなぁと感じました。

――「APD/LiD」は診断名としてまだ確立していないこともあり、これらの症状についての知識をもつ医師がまだまだ少ない、合理的配慮が受けづらいなどの現状の問題点にも触れています。このような点について、きょこさんが感じている現状の課題などをお聞かせください。

きょこ「APD/LiDという症状が知られていないこと」まずはここが課題だと思います。知られていないから、耳鼻科で「あなたの耳は正常ですよ」と言われる。知られていないから、学校や職場で「難聴じゃないから聞こえているんでしょ」と理解されない。

知ってもらうには、とにかく行動しかないと思っています。当事者一人ひとりが、丁寧に周りの人の理解を得ていくこと。それがいずれ、社会を大きく動かすのだと信じています。

胸を痛めている親御さんに「あなたは一人じゃない」と伝えたい

――第5章では、子どもの「APD/LiD」を保護者の目線から書かれています。このエピソードを書こうと思った想いなどなどあれば教えてください。

きょこ:当事者会などで、APD/LiDのあるお子さんの親御さんが「学校や保育園で理解してもらえない」と頭を悩ませている姿を見かけ、胸を痛めていました。「分かってもらえない」という思いは、人間を追い詰めると思います。そんな親御さんに「あなたは一人じゃないよ、大丈夫だよ」というメッセージを送りたかったのと、学校に協力してもらえた親子さんの実話をもとにすることで、希望を持ってほしいな、という思いを込めました。また、学校の先生などにも読んでもらい、子どもたちや保護者がどんなふうに困っていてどんな思いを抱えているのか、知ってほしいと思ったからです。
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』(きょこ (著), 小渕千絵 (監修), 佐々木香緒里 (監修))より
『マンガ APD/LiD って何!? 聞こえているのに聞き取れない私たち』111ページより
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――監修の小渕先生、佐々木先生とのやりとりの中で、印象的なエピソードや初めて知ったこと、驚いたこと、みなさんに知って欲しいエピソードなどあれば教えてください。

きょこ:先述したこととだぶってしまいますが、本書にあるように、自分の不得意がよく分かったのは、先生に聴力や発達の検査をしてもらい、注意の機能が弱いと分かったときでした。自分でも驚くほど混乱してしまい、そういえば日常生活でも「同時に二つのことをすることが苦手」であったり「音が気になって作業に集中できない」ということがあるなぁと冷静に振り返ることができました。また、それらの特徴を自分では「どんくさいヤツ」とネガティブにとらえていましたが、こうした症状を受容し、「苦手なものは苦手」と割り切ることができるようになりました。「自分の得手不得手を知ること」はメリットであると私は思いました。

伝えづらい歯がゆい思い…本書をツールとして役立ててほしい

――当事者の方に寄り添う工夫がたくさん詰まった1冊ですが、本書をどのような方に、どのように活用してほしいとお考えでしょうか。

きょこ:アンケートの回答を見ていると、当事者のみなさんは「聞き取れない自分を責める」傾向にあると思いました。症状と上手につき合うヒントを、この本から見つけてもらえたらうれしいなと思います。また、この症状を周囲の人にうまく伝えられず歯がゆい思いをしている方も多いです。「困りごとを知ってもらうツール」としても役立ててほしいと思っています。

「得意」をいっぱい褒めてあげてほしい

――ポータルサイト「発達ナビ」は、発達障害のあるお子さまの育児をされている保護者の方や、支援者の方に多くご覧いただいています。みなさまへメッセージをお願いします。

きょこ:先日ある人からこんな話を聞きました。
「発達障害がある人間がこの世にいなかったら、人類は今も洞窟で狩猟生活をしていただろう」

歴史上の人物や大きな功績を残した科学者、スポーツ選手、経営者などには、発達障害がある人が多いともいわれています。集団生活において否定されがちな「衝動性」「多動性」「過集中」などの特性が、人類の文化に大きなイノベーションを与え続けてきたこともまた事実です。

私は「発達障害」というネーミングが残念だなぁと、常々思っています。本書にも描いたように、神様からもらったステータスポイントが、ただ凸凹しているだけなのに。「じっとしていること」「感情をコントロールすること」などに振り分けられなかったステータスポイントは、ほかの何かに多く振り分けられているはずだと、私は信じています。どんな些細なことでもいい。得意なことを見つけたら、いっぱい褒めてあげてください。

当事者や周囲の人が過ごしやすい環境をつくっていくために

「無理解ゆえ、誤解が生じる」といいますが、APD/LiDの場合は説明しても「結局集中して聞いてないだけでしょ?」と言われてしまうことがあるそうです。

また、自分がAPD/LiDだと分かって落ち込んでしまう、卑屈になってしまったという声もあるようです。しかし、「自分の状況を客観的に知る」ことは必ずプラスになります。
人にはいろいろな「苦手」があり、APD/LiDは「聞き取ることが苦手」なだけで、なにも特別なことではない、と著者はいいます。

本書巻末の「APD/LiDのトリセツ」では、APD/LiDとはなにか、APD/LiDの症状のある人に出会ったらどうすればいいのかが簡潔にまとめられています。「自分を知ること、知ってもらうこと」それこそが、当事者や周囲の人が過ごしやすい環境を作っていく第一歩になると思います。本書は、そんな一歩をつくる一助となってくれるでしょう。

文/田崎 美穂子

著者・監修者紹介

【著者】
きょこ
漫画家・イラストレーター。
北海道十勝出身。三重県で夫・息子・娘と4人暮らし。会社員時代にプチ鬱状態になったことをきっかけに、「どうせ1回しかない人生、やりたいことをやってみよう!」と幼いころから大好きだった絵を描く仕事を始める。
各種イラストやLINEスタンプ、広告用の漫画など、ネット中心に活動の場を広げ、公式LINEではオリジナル漫画を配信している。「APDってどんなこと?」「何が不得意なの?」「どんな風にしたら聞き取りやすいの?」「生活するのに工夫していることは?」こんなことを漫画にしています。APDの人にもAPDじゃない人にも、広くAPDを知ってほしいです。
HP:https://kyoko-illustration.com

【監修者】
小渕 千絵(おぶち ちえ)
国際医療福祉大学成田保健医療学部言語聴覚学科教授。立教大学文学部心理学科卒業。
東京学芸大学大学院教育学研究科、筑波大学大学院心身障害学研究科修了、博士(心身障害学)取得。川口市立医療センターリハビリテーション科、埼玉医科大学病院小児科などで言語聴覚士として勤務ののち、2000年より国際医療福祉大学。同大学保健医療学部言語聴覚学科准教授を経て、2020年より現職。あわせて国際医療福祉大学成田病院耳鼻咽喉科で言語聴覚士として臨床も行なっている。APD/LiD研究の第一人者として活躍中。
主な著書:『APD「音は聞こえているのに聞き取れない」人たち―聴覚情報処理障害(APD)とうまくつきあう方法』(さくら舎)、『きこえているのにわからないAPD[聴覚情報処理障害]の理解と支援』(共編著、学苑社)など。

佐々木 香緒里(ささき かおり)
国際医療福祉大学成田保健医療学部言語聴覚学科助教。
北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科言語聴覚療法学専攻卒業。
国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健医療学専攻言語聴覚分野修了、博士(言語聴覚学)取得。言語聴覚士。急性期総合病院での勤務を経て、2016年から現職。専門は小児言語発達。自閉症スペクトラム症児をはじめとする発達障害児や聞き取りに困難を持つ子どもたちの臨床・研究を行なっている。
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