公認心理師の仕事

公認心理師国家試験に合格して登録した人は、晴れて公認心理師として働き始めることになります。公認心理師の仕事は大きく分けて「心理査定」「心理支援」「関係者への面接」「心の健康教育と啓発」の4つです。

1つめは、「心理査定」です。心の問題を抱えた人の支援のため、あるいは心の問題を抱えた人自身が自分のことを理解するために面接や心理テスト、行動観察などを通じて特性や問題の状況、課題を明らかにしていきます。心の問題を抱えた人がどのようなサポートを必要としているか、またどんなサポートが望ましいのかを探っていきます。

2つめが、「心理支援」です。心理査定などで分かった課題に対してさまざまな心理療法で問題を解決したり、苦痛を軽減できるようにサポートをしていきます。心の問題を抱えた人が自分自身を理解したうえで、心が回復していけるように寄り添いながらサポートしていきます。
具体的な心理療法としては、「認知行動療法」「精神分析療法」「来談者中心療法」、「遊戯療法」、「芸術療法」などがあります。

3つめの「関係者への面接」は、例えば、発達障害のある子どもを持つ保護者や教師などに対して心理学的な側面からアドバイスをして、問題の発生予防に繋げたり、対応についてアドバイスをすることなどです。

4つめが「心の健康教育と啓発」です。心の健康についての理解を深めてもらうために必要な情報提供や啓発を行うのも公認心理師の大切な仕事の1つです。ストレスとの付き合い方、コミュニケーションの取り方、自分自身の感情のコントロールの仕方などを伝えることで、心の病気を未然に防ぐことを目指します。

また、公認心理師の勤務先は大きく分けると「保健医療分野」「教育分野」「福祉分野」「産業・労働分野」「司法・犯罪分野」の5つとなります。

1つめの「保健医療分野」は、医療と保健の2つに分かれていて、医療機関では精神科病院または一般病院などが勤務先となります。医師からの依頼を受けて心理検査や心理療法などを行います。心の問題を抱えた人に対してだけではなく、その家族へのサポートを行うこともあります。病院内ではさまざまな専門家とチームを組んで診療を行います。

保健機関では保健所や保健センター、精神保健福祉センターなどの公共機関が主な勤務先になります。精神保健福祉相談員という立場などで、アルコール依存症、薬物依存症、ひきこもりなどの相談に乗るほか、乳幼児の発達検査などを担当します。それぞれの相談に対応するだけではなく、地域の方々に向けて心の健康に関する啓蒙活動や地域の精神保健福祉に関する実態の把握なども行う場合があります。

2つめの「教育分野」の勤務先は幼稚園や小学校、中学校、高校などとなります。
小中高校ではスクールカウンセラーとして、不登校やいじめ、友人関係や学習関係の悩みなど校内での問題だけではなく、親子関係や家庭環境、発達障害や精神疾患などさまざまな問題などに対応します。児童や生徒、またその保護者との関わりだけではなく、ほかの教職員とも協力をしながら問題解決にあたることになります。

3つめの「福祉分野」の勤務先は多様ですが、その一つに児童相談所があります。児童心理司や心理判定員の立場として、発達障害や知的障害、精神障害、不登校、子育て全般、児童虐待などに関する相談に対応するほか、療育手帳に関する判定なども行います。また、児童福祉施設などでの勤務の場合は、障害のある子どもへの療育やその家族へのサポートなどを行います。
成人を対象とした福祉分野の勤務先は、障害のある方の通所施設や入所施設、特別養護老人ホームなどの高齢者施設などです。それぞれ本人やその家族からの相談や支援活動などにあたることになります。

4つめの「産業・労働分野」の勤務先はEAP(従業員支援プログラム)の専門機関などです。職場におけるメンタルヘルスなどを請け負い、就労に関するカウンセリングを行ったり、相談員として仕事上の相談に応じるほか、休職者の復職支援、該当社員の上司へのアドバイス、従業員のストレスチェックなども行う場合があります。それらを通して職場全体の心の健康増進をはかっていくことになります。

5つめの「司法・法務・警察分野」では、勤務先として少年鑑別所や少年院、刑務所、警視庁、都道府県の警察本部、家庭裁判所、保護観察所などがあげられます。事件の被害者や加害者に対する心理アセスメントや心理療法などを行います。

ここで紹介した5つ以外にも、大学などで研究を続けたり、私設の心理相談機関で相談に応じたりしている公認心理師もいます。その仕事内容は幅広く、公認心理師はさまざまな場所で活躍しています。

発達障害がある子どもとの関わり

前章では公認心理師の活躍場所や、業務の内容などを解説しましたが、どの分野においても公認心理師が発達障害のある人、あるいは発達障害のある子どもと接する機会は多く、その役割は重要なものです。

保健医療分野で公認心理師が1年間に支援を行なった対象として発達障害が約80%と最も多く、福祉分野でも発達支援が約80%と最多。また教育分野でも同様に発達障害への対応が約80%と最も多くなっています。
参考:令和2年度障害者総合福祉推進事業 公認心理師の活動状況等に関する調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000798636.pdf
特に発達障害のある子どもに対する支援として、近年児童発達支援・放課後等デイサービスなどの事業所が増えています。そういった施設で発達障害のある子どもの療育に関わっている公認心理師もいます。気持ちの切り替えや人とのコミュニケーションが苦手などさまざまな課題を抱えた子どもたちに対して支援を行い、課題の解決や改善を目指しています。1人ひとり異なる障害特性に配慮したきめ細やかなサポートをはじめ、保護者からの相談を受けたり、保護者へのアドバイスをすることもあります。

まとめ

公認心理師は心理職唯一の国家資格であり、大学や専門学校での所定科目修了後に大学院で学ぶほかに実務経験や海外の大学での所定科目の修了など、さまざまな方法で受験資格を得ることができます。

仕事については大きく分けて4種類、勤務する分野は大きく分けて5種類程ありますが、公認心理師の仕事内容は幅広く、そのほかでもさまざまな場所で働いています。特に発達障害との関わりも多くあり、公認心理師の発達障害分野での今後の活躍が期待されています。
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