一日200回超!?「宿題は?」「手は洗った?」ASD息子への声かけに母うんざり。「もう録音でいいんじゃない?」試した結果は…

ライター:丸山さとこ
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子どもの保護者をしていると『子どもへの声かけ』をすることはたくさんあるのではないかと思います。私も毎日同じセリフを何度も繰り返し言い続けています。そんな日々の中で、心底「同じことを言い続けるの、もうイヤだな~!」と思ったことがありました。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

声かけが最高潮に面倒だったときのこと

子どもへの頻繁な声かけが続く日々に、「計算したら一日何回声かけしているのだろう?」と考えてゾッとする私。
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「何度も同じことを言い続けるの、もうイヤだな~!」

神経発達症(発達障害)の有無に関わらず、子どもの保護者をしていると『子どもへの声かけ』をすることはたくさんあるのではないかと思います。

「手は洗った?」「宿題やった?」「トイレに行って」「座って」「前を見て」「しまって」「確認して」などなど…同じセリフが何度も繰り返されているご家庭も多いのではないでしょうか。私も毎日同じセリフを何度も繰り返し言い続けています。

私とコウの日常風景を見た親族や友人が「これは凄いね…大変だね…」とみな驚いていたので、客観的に見てもかなり声かけは多い方なのかもしれません。そんな風に日々を過ごしている中で、心底「何度も同じことを言い続けるの、もうイヤだな~!」と思ったこともありました。

計算をしてみてビックリ!「これは言う方も言われる方も大変だな」

コウが小学5年生だったころだと思います。あまりに毎日同じことを言い続けているため、「実際のところ1日あたり何回同じセリフを繰り返しているのだろう?」と、ふと素朴な疑問が沸いてきました。

「確実に毎日10回以上は促してるな…」と思うセリフをピックアップしてみたところ、大雑把にまとめても20個はあることが分かりました。単純に考えると20×10で1日あたり最低200回は声かけをしていることになります。「これは言う方も言われる方も大変だな」と思いました。

同じことを言い続けるのだから、もう録音でいいんじゃない?

バリエーションは結構少ない「日々の声かけ」

文字通り「飽きるほど繰り返したセリフ」の数々が嫌になってきた私は、「同じことを言い続けるんだから、もう録音でいいんじゃない?」と思うようになりました。
繰り返す子どもへの声かけに飽きて嫌になってきた私は、「同じことを言い続けるんだから、もう録音でいいんじゃない?」と思うようになりました。
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ということで、スマートフォンの録音機能を使い実際にやってみることにしました。使いやすさを考えて、10個程度のバリエーションだったと思います。それらの音声データはスマートフォンの買い替えにより現在は手元に残っていませんが、大体以下のような内容でした。

・出かける時間です
・片付けてください
・支度してください
・宿題してください
・お風呂に入ってください
・時計を見てください
・タイマーは使っていますか?
・確認してください
・寝る時間です

これらのセリフを状況に合わせて再生するようにしたところ、声かけの負担が激減するのを感じました。

しゃべらないって楽~!

録音した音声を再生することで「何度も言っては無視される」「最後の1回以外聞き流されるセリフを言い続ける」などの精神的な負担が減るのは予想していましたが、声を出すことそのものの負担が減るのは意外な成果でした。
録音した音声を再生することで精神的な負担が減るのは予想していましたが、声を出すことそのものの負担が減るのは意外な成果でした。
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それまでの私は、声かけによる疲れといえば「言っても言ってもやらない!」という徒労感からくる疲れがほとんどだと思っていました。

スマートフォンの力を借りることで『声を出すのって結構負担がある行為なんだな~』ということをハッキリと認識し、「疲れの内訳にはいろいろな要素があるのだな」と改めて実感しました。

その後どうなったかというと…

「生の声の方がいい」とのコウの要望であえなく終了

私としては結構気に入っていた声かけ録音再生システムでしたが、コウから「ちょっと不気味」「お母さんに声をかけてほしい」「人からの声じゃないと響かない」との物言いがあったため、数日であえなく終了となりました。短い『声かけ休業期間』でした。

とはいえ、仮にコウからの要望がなかったとしても、ほどほどのところで直接の声かけに戻そうとは思っていました。人からの指示を聞き流さないことは、コミュニケーションとして大切なことだろうと考えていたからです。
コウに声掛けをしながら「人からの指示を聞き流さないことは大切なことなのだろうな」と思う私。
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私は、『人からの声かけを耳に入れた上で自分のレスポンスを決める』ことが『聞き流さない』ということなのではないか…と思っています。そういう意味では、指示に沿った行動だけでなく、反発することや無視することもまた『聞き流さないこと』であるのだろうと思います。

コウは、今まで癇癪はあっても「うるさいな~分かってるよ!」という反抗をしたことがありません。声かけを『自分に対する、人からの働きかけ』であると感じているかどうかも分からないところがあります。

間をとって「やることリスト」を作成しました。

そんなわけで、「お母さんに声かけをされたい」コウと「言うの面倒だな~」な私の2者の要望の間をとって、コウのための『やることリスト』を作成することにしました。
リストを声かけに活用すると、たとえコウが声かけを無視したとしても、物理的に目に入る「リスト」が声かけのあとも残ります。そのため、私は「リスト使った?」「リストでチェックした?」と声をかけるだけでよくなりました。音声の再生ボタンを押すよりは手間ですが、「いろいろな声かけ」をたくさんしていたときよりグッと楽になりました。
「お母さんに声かけをされたい」コウと「言うの面倒だな~」な私の2者の要望の間をとって、コウのための『やることリスト』を作成することにしました。
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例えば、帰宅時など「手を洗う・水筒を流しに出す・連絡帳と宿題のチェック・かばんを片づける・プリントを渡す」のように複数の促しや確認が必要になるシーンは生活の中でたくさんあります。

今までであれば一つずつ順番に声かけしていたであろうそのような状況でも、やることリストがあれば「リスト見た?」だけで終わります。言う私も楽ですし、言われるコウも多分楽なのではないかな?と思います。

今までにもリストを活用しようとしたことはあったものの効果がなく、ここ数年は全く試したこともありませんでした。今でも自発的に使うことは少ないですが、促されてチェックすることはできるようになったので、この数年の間にコウも少しずつ変化しているのかもしれないな?と感じました。
「リスト見てなー」と声をかける私と、「はいよー」と応えるコウ。
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くどくどガミガミ「あれやった?これは?」と聞けば緊張感が走るであろうコウと私の関係を、『やることリスト』が和らげてくれているのではないかと思います。

執筆/丸山さとこ
(監修:井上先生より)
毎日の声かけは多くの親御さんにとって大きなストレスだと思います。声をかけてもやらないことではなく、声をかけること自体のストレスの大きさに気づかれたのですね。あらためて声かけの大変さについて考えさせられます。コウ君もいったん録音音声になったことで、お母さんの声かけのありがたさや重要性に気づかれたのではないでしょうか。また、やることリストをお母さんと一緒に使っていくことで、改めて自分のすべきことも意識できたかと思います。将来的には、カレンダーアプリで必要なお知らせが時間になったら届くように設定し、使えるようになると良いと思います。
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