困惑していた「一列に並べる」も違って見えるように。娘の遊びを観察していて気づくこと

まゆみを見ていて気づいたのは、一見して無意味に思えるような遊び方をしていても、「まゆみの中にはちゃんとストーリーがあるんだな」ということです。高い声や低い声を使い分けてお人形にセリフらしきものを言わせたり、同じ場面や配置を繰り返したりしていて、本人にしか分からない内容であっても何か表現したいものがあって遊んでいるのだと思いました。

また、まゆみのつくる世界はとても平和で温かい雰囲気に包まれていることにも気づきました。
みんなでケーキを囲んでハッピーバースデーを歌うところ、大繁盛のアイスクリーム屋さんでそれぞれ好きなアイスを食べて大喜びしているところ、縦一列に列を組んでおうちに帰るところ…。
最初は困惑してしまっていた『横一列に並べてあるだけの光景』すら、今では仲良く横並びで手をつないでいるかのような、平和でハッピーなものを感じます。
自閉スペクトラム症と知的障害のある娘の中にはあたたかく優しい世界が広がっているのだと気づいた母。(イラスト、にれ)
Upload By にれ
遊びの幅が広がりつつある今でも横一列に並べることは好きなようで、気づくと人形達がズラリと整列していたりしますが、「まゆみにはまゆみの理由があってこの子たちを並べているんだな」と、自然にそんな風に思えるようになりました。

以前、自閉スペクトラム症のある息子さんとの生活をつづったエッセイを読んだのですが、小さなフィギュアのヒーローも悪役もみんな仲良さげに並べられる様子が紹介されていたことを思い出しました。その男の子やまゆみの心に広がる世界は、平等で平和で純粋なものかもしれない、と感じました。

本人の世界を大切に

最初は横に並べるだけだった世界が、ふとしたきっかけで遊び方を学んで発展していき、やがてサイズの小さなものでも遊べるようになり、さらにごっこ遊びが多様化していく。

「自閉スペクトラム症のある子どもは、創造的な遊びが苦手」と以前読んだ本には書いてありましたが、好きなものを前にしたときに大人がとっかかりを示してあげれば、模倣から始まって徐々に世界を広げていける場合もあるのだと学びました。

以前は「人との関わりを持ってほしい」とまゆみの世界に首を突っ込んでいましたが、今はまゆみが描く世界の広がりを感じられることがとても尊いものに思え、邪魔しないように彼女のごっこ遊びを眺める程度になっています。
まゆみの場合は、2体のぬいぐるみからお人形やおままごとが好きになりましたが、どんなものが好きかはお子さんそれぞれに好みや個性があると思います。車や電車が好きな子もいるでしょうし、パズルや数字が好きな子もいるでしょう。まゆみもこの先どんな風に好みが変わるか分かりません。ただ、どんなものであっても、わが子の好きなものや世界観を尊重して見守ろうと思いました。

と、一人遊びは見守ることに決めたのですが、「応じる力を遊びの中で育むことができれば…」という願いは未だにあるため、もしそうした力を育む遊びなどがあれば知りたいと思っています。まゆみの世界は広がっているけれども、未だにものを介したやりとりは難しいなぁ、と娘を見ていて感じています…。

執筆/にれ
(監修:新美先生より)
お子さんとお母さんのとても素敵なエピソードを聞かせていただきありがとうございます。
遊び方が独特で、なかなか広がらないとき、親としてやきもきするかもしれません。にれさんはお子さんの遊び方をじっくり観察して、何に興味を持つのか、何を楽しそうにするのかを大事にされて、お子さんの興味にちょっとだけお邪魔する姿勢で関わりを持つことで、お子さんの遊びを広げて発展されていかれたのですね。またお子さんの興味の持ち方、世界観を尊重して見守るというにれさんの姿勢がとても素敵で素晴らしいと思いました。

大人がこれをやらせたいと思うことを押しつけるのではなく、子どもの興味あること、好きなことを、子どもの行動から見つけて、ほんの少しお手伝いして興味関心を広げていくというのは、まさにこういうタイプのお子さんの関わり方の基本形です。お子さんがどんなことを感じて考えているのかなということを観察して、お子さんの独自ワールドを尊重して子育てをすることは、お子さんにとって何より、心地よくストレスの少ない生活につながり、お子さんなりの好奇心を発揮していくことにつながると思います。
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