Q.不登校が長期間にわたっている。保護者側もサポートに疲弊、このまま学校に行かなくていいのか、ひきこもりになるのではと将来が不安です

【質問】
子どもが不登校になり始めは積極的にサポートしようと頑張っていましたが、疲れてきてしまいました。これから先、どうしていったらいいのか不安でしかたありません

A.不安な気持ち聞いてくれる人を見つける、将来についての情報を集める、保護者自身が自分をケアする時間を持つことが大切です

【回答】
お子さんがのびのびと過ごせるように、あるいは、学習で遅れてしまわないように、よき体験活動ができるように…とさまざまご尽力されてこられたのかなと想像します。すべての働きかけに、お子さんがうまく乗ってくれるとも限らず、家庭だとどうしても枠組みをつくりにくいので行き詰ってしまう、親子関係がぎすぎすしてしまうことはよくあります。不登校という状態はおそらく想像していたよりも長期にわたると感じる方も多くいらっしゃり、そういう意味で頑張りすぎることなく「持続可能性のあること」を細々と続けていくことが案外とても大事なことにはなります。

将来のことを考えると不安になられるのは自然なことです。このままずっと家にひきこもってしまったらどうしよう…例えばそんな不安がおありになるかなと思います。そうした不安をお子さんにぶつけてしまっても何もいいことはありません。お子さんも、学校に行ったほうがいいと分かっていることも多く、しかし行けなくて苦しいのかもしれません。そこに、家族が自分のせいで不安でいっぱいになっているというのが重なるとますます苦しくなってしまうこともあります。
そういう意味で、私は大人の不安は大人の間で抱えてゆくことが大切だと思います。大人の間で不安を抱えることには、大きく2つの軸があると考えています。

■保護者が感じる不安を聞いてくれる人を見つける
お子さんの不登校で不安になるのは自然なことで、その不安について、まず聞いてくれる人を探す。パートナー(配偶者など)でも、昔からの親友でも、基本的にはどなたでもいいと思います。話しやすくて、よく聞いてくれる人。スクールカウンセラーや自治体の心理などの専門家ももちろんおすすめです。不安を聞いてもらうだけでも、その不安が完全にはなくならずとも、心の空き容量が少し増えることがあります。心の空き容量が増えると、また新たな気持ちでお子さんに向き合えるかもしれません。場合によっては、その聞いてくださった方が保護者の方の対応やお子さんの過ごし方について助言を下さることもあると思います。それが保護者の方やお子さんにとって無理なくやれそうなら、あるいは、助言自体が「しっくりくる」なら試してみてもいいかもしれません。私が上で書いた「持続可能性のあること」について、何らかヒントを下さることもあると思います。そうして「誰かと」不安を抱えるという軸が1つあります。

■将来についての情報を集める
もう1つの不安を抱える軸は、「今や将来についての情報を集める」というものです。家にいるだけで精一杯のお子さんもいますが、もう少し元気があると、家にいながらにして誰かとつながりたい(オンラインなど)、あるいは、興味関心のあるイベントなどへ行ってみたいという気持ちが湧く場合もあります。また、同世代の友達がほしいと思うお子さんもいます。同じ「不登校」仲間がいると心強いと感じるお子さんもいます。そうした単発・継続のイベントや公的・民間の居場所についての情報を集めておく。
将来的な面でいうと、義務教育を終えた後どうするかというのが1つ大きなターニングポイントにはなります。今の高校にはさまざまなタイプの学校があり、不登校の生徒を積極的に受け入れる高校もあります。入試も学科試験を課す学校から作文・面接などで入れる学校などさまざまです。そうした情報をまず集めておく。そうすると、思っていたよりも選択肢も可能性もたくさんあることにまず気づかれるのではと思います。ただ、お子さんにその情報をいつ知らせるかは慎重にと思います。機が熟すまで知らせない方がよいことが多いです。どれだけ素敵な情報でも、お子さん自身の心がいっぱいいっぱいのときや、全く興味のないときに聞くと、負担やプレッシャーにしかなりません。まずは、保護者の方ご自身の不安の対処として情報収集をしてみてください。

■保護者自身が自分をケアする時間を持つ
最後に、お子さんの不登校に懸命に向き合ってこられたからこそ、疲れてしまいますし、そうして疲れてくると不安も増してくると思います。人は、何であれ何かに一生懸命になると視野が狭くなってしまいます(心理的視野狭窄と言います)。視野が広がれば大らかに捉えられたり、柔軟な対応が可能になったりすることも、視野が狭くなってしまったがゆえにそうしたことには目が向かず、ネガティブなことばかり目についてしまうことがあります。上記2つの軸を走らせると共におすすめしたいのは、保護者の方がご自身のための時間を取ることです。セルフケアの時間。日々お忙しいことと思いますので、長く取る・頻回に取ることは実際には難しいかもしれません。しかし、買い物帰りにちょっと遠回りして帰ってみよう、30分だけカフェでコーヒー飲んでみよう、夜、好きな映画を見てから寝てみよう、こっそり高いチョコレートを食べちゃおう。ちょっとしたことでいいので、ご自身のための時間を取ってみてください。保護者の方が元気だと家庭の雰囲気も明るくなります。そのために…というと打算的な感じがしてあまり好きではありませんが、しかし事実として“保護者の方が元気だと~”はあるとは思います。ご自身のための時間を取る。「不登校の子の親」という役割や鎧をいったん脇に置いて、ふっと力を抜く。もしかしたら頭の中ではお子さんのことが離れないかもしれませんが、それでも今は自分のための時間と思ってみる。ぜひやってみていただければと思います。
不登校にまつわる質問の回答は、初川久美子先生(臨床心理士、公認心理師、東京都公立学校スクールカウンセラー、発達研修ユニットみつばち)
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不登校サポートで大切にしたい「子どものこころを知ること」「保護者も頑張りすぎないこと」

子どもが不登校になったとき、周りの大人はなんとかして問題を解決したいと思うかもしれません。しかし子どもが「行きたくない」と言い出したときは、子ども自身がさんざん悩みに悩んだ結果のうえで、それでもどうにもならなかったから出している「SOS」であり、問題を解決するよりも先に、まず休養をとることが最優先と考えましょう。
そのうえで、お子さんが安心して過ごせるように、学習で遅れてしまわないように、よき体験活動ができるように、あるいは学校との連携などさまざまなサポートをしているうちに保護者の方が疲れてきてしまうということも多く耳にします。
不登校サポートで大切なことは「保護者も頑張りすぎないこと」です。大人自身が不安な気持ちを信頼できる人に話したり、今や将来への情報を集めてみる(想像より選択肢は多く、不安が少し解消されるかもしれません)、そして保護者が自分自身を休める時間をつくってみてください。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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