自閉症年少息子、はじめての発表会で「泣かない?」「パニックにならない?」療育園の配慮や工夫、温かさを感じて

ライター:みん
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発表会…発達障害のある子どもを持つ親御さんにとっては、子どもが行事に参加するというだけでも、無事に終わるのか?迷惑をかけないか?などたくさんの不安や心配があると思います。
わが家の場合は、Pが年少のときに療育園で初めての発表会がありましたが、Pは発表会という行事を理解しているのか?さえも分からなかったし、本番はいつも通りではない舞台の雰囲気やたくさんの観客の前で(コロナ前です)どんな反応をし?どんな発表をするのか?全く想像ができなかったので、ハラハラドキドキしていました。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「TOIRO」の制作スタッフ。

いろんな配慮や工夫がある療育園の発表会

本番当日、私はPに私が見ていると気づかれないように、帽子をかぶりマスクをして観覧することにしました。なぜならこのころのPには母子分離不安があったので、私の姿を見ると発表会の途中に私のところへ来てしまう可能性があったからです。

療育園にはPのほかにもそのようなお子さんが多いので、親御さんたちが隠れながら舞台発表を見られるようにと、目隠しのための衝立を置いてくれていたり、別室からも舞台を見られるようにしてくれていたりなど、さまざまな配慮がありました。

療育園の発表会は、子どもたち1人ひとりが自分のできることを発表するような形で行われていました。返事ができる子、着替えができる子など、自分の出番になったら舞台の上で挑戦し、発表を見せてくれました。
療育園の発表会は、親が子どもに見つからないよう衝立に隠れながら見ることができる。子どもの発達に合わせて、返事ができる子、着替えができる子、指差しができる子など、自分ができることを舞台の上で発表する。
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障害があるわが子にも発表できることはある?

Pの出番になったとき、まずは泣かないか?そしてパニックになって、逃走しないか?など、私は心配でたまりませんでした。案の定、舞台に上がったPは観客の多さに気づくと、一瞬固まって困惑した表情をしていました。でも担任の先生に導かれると、そのまま進んでいきました。

Pの発表は、先生が名前を呼んだら、先生の持っているタンバリンを叩いてお返事するという簡単なものでした。「ハイ」とは言えませんでしたが、ちゃんとタンバリンを叩くことができました。
舞台に上がった自閉症のある息子Pはいつもと違う雰囲気に戸惑って固まってしまったけれど、先生に導かれると動くことができ、名前を呼ばれたらタンバリンをたたいて返事をするという発表ができた。
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その後は舞台の上に残り、観客に背を向けてしゃがみこんでしまったPですが、泣きもせず、舞台から逃げもせず、自分なりに発表会に参加できている姿を見て、私は十分満足していました。そしてクラス全員の出番が終わると、発表会終盤はみんなで一緒に歌やダンスの披露があったのですが、Pは歌も歌えないし、ダンスもできません。すると途中で舞台から降り、観客席に紛れ込んでクラスのみんなの発表を1人で鑑賞するという行動をとっていました。発表会というよりは、本人はただ自由に動き回っていただけなのかもしれませんが、初めての発表会に参加できただけでも頑張ったと思います。
自閉症のある息子Pは、自分の出番が終わると舞台の上で、観客席にお尻を向けてしゃがみ込んでしまい、全員での歌とダンスのときは、舞台から降りて観客席に座ってクラスのみんなを見ていた。
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発表会なのに自由に動き回ってしまったけれど…

Pは踊ることも歌うこともできないし、台詞を言ったり、楽器を演奏したりすることも難しくてできません。でも先生は今のPができることで、発表会に参加ができるように考えて準備をしてくれました。おかげでPも初めて舞台に立つという経験をし「発表会」という空気を知ることができました。

それにPはその場を自由に楽しむことで発表会に対して悪いイメージを持たずに終われたと思います。参加をしただけでも、この経験が次の発表会へとつながり、そして年々できる発表も増えて行くはず!と思えました。

実際次の年、また次の年と、毎年発表会はあったのですが、今年は衣装が着れるようになった。今年は簡単なダンスなら踊れるようになった。今年はマイクを持って自分の名前を言えるようになった。など年々できることが増えています。
衣装が着れる、簡単なダンスなら踊れる、名前が言える…というように、年々発表できることが増えてきた自閉症息子
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障害のある子どもにとって発表会は、どうしても参加が難しい場面があるかもしれません。でもそんな中でも自分ができることをやってみて、みんなと一緒に同じ時間を共有し、経験を積み重ねることに意味があるような気がします。そしてその場にいる人たちみんなで、その子どものペースを見守れるような暖かい雰囲気の発表会が増えると良いなと思います。

執筆/みん
(監修:新美先生より)
発達障害のあるお子さんにとって、園の発表会はドキドキのイベントですね。ご紹介いただいたエピソードは、療育園ということでお子さんに無理なく参加できるよう工夫がされていて、親子ともども良い経験になったようでとてもよかったです。大事にしたいのは、お子さんがいやな思いをせずに参加できることですね。そのためには事前の準備が大事です。お子さんに無理のない参加形態、お子さんが興味が持ちやすい内容、スケジュールなど見通しを示す、いつも慣れている先生についてもらえる、本人がいやになったらいつでも別行動がとれるようにしてもらうなど、普段の様子から想定して、できる準備はとってもらいましょう。そして、みんさんが書いてくださったように、「みんなでその子どものペースを見守れるような温かい雰囲気」があると、安心して参加できますね。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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