発達が気になる子どもへの「ほめ方」は?イライラ、不安、パニックをどう減らす?支援者が教育現場で効果を実感したスキルの集大成――『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』

ライター:発達ナビBOOKガイド
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講談社
発達が気になる子どもへの「ほめ方」は?イライラ、不安、パニックをどう減らす?支援者が教育現場で効果を実感したスキルの集大成――『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』のタイトル画像

「こだわりの強さ」「不器用さ」「社会性のなさ」など、生きづらさのもとになる発達障害の特性は数多くあります。そうした特性に起因する子どものイライラ、不安、パニック、暴力といった対応が難しい「問題行動」の解決のヒントを与えてくれるのが、新刊『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』(講談社)です。小学校の教員として、教育現場で約20年にわたり、2000を超えるケースに関わってきた小嶋悠紀先生(現在は発達支援コンサルタント)が、実際に効果があると実感した支援法を紹介しています。

「こだわり」「多動」「他害」「パニック」……子どもが抱える多様な課題に寄り添う内容

本書の特徴は、なによりも扱っているテーマの多様さにあります。目次を見てみましょう。

第1章 発達障害のある子が見ている世界・感じていること
第2章 上手に支援するための「目のつけどころ」と原則
第3章 現場で本当に効果があった「ほめ方・教え方」
第4章 子どもの「こだわり」との向き合い方
第5章 子どもの「気になる行動」の予防法と解決法
第6章 多動・不注意で落ち着かないときに効果的なサポート
第7章 子どものパニックを防ぎ、落ち着いてもらう方法
第8章 他害行為(暴力)が出てしまったときの対応法
第9章 道具を使って支援を広げよう


子どもの内面を理解し(第1章)、アセスメントの方法や、もっとも大切な「ほめ方」を解説(第2~3章)。ついで、第4章以降では、多種多様な問題行動と取り上げ、親や教師、支援者などがすぐ実践できそうな、いろいろなスキルが紹介されています。

本書の前半でまず目を惹くのは、紹介されている「ほめ方」の多様性です。
発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル
小嶋 悠紀 (著), かなしろにゃんこ。 (著, イラスト)
講談社
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ただほめるのではなく、望ましい行動を増やす効果的なほめ方を!

子どもをほめるとき、親に限らず教師や支援者も「すごい!」「よくできた!」と言いがちです。しかしそれでは発達障害のある子どもには「評価されていること」がよく伝わりません。
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P90より
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P90より
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では、ほめ言葉を確実に届けるには、どうすればいいのか。第3章では、多くのスキルが紹介されていますが、1つだけ詳しく紹介すると、「回数」で前後比較してほめるスキルが挙げられています。

たとえば、テストの点数をほめるときに「テストよく頑張ったね」ではなく、「前のテストより10点も上がったね!」と数値を使ってほめれば、何がよくてほめられたのか、どこが成長したのか、子どもに具体的に伝わります。

このように、できるだけ具体的に、はっきりと伝えることが、望ましい行動を着実に強化することにもつながるのだそうです。
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P104より
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P104より
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「『信じていた!』とほめる」という節では、子どもとの信頼関係を築けるほめ方が紹介されています。「君のこと、分かってるよ!」というメッセージを込めてほめるのです。そんなほめ言葉は次の3タイプ。

1.「〇〇さんなら、~できると思っていたよ」(期待していたと伝える。)
2.「〇〇くんは、先月と比べて~がうまくなったね」(前から見ていたと伝える。)
3.「〇〇さん、~できたね。できると信じていたよ!」(信じていたと伝える。)


ほかにも、「ほめないほうがいいタイミングもあること」「ほめ言葉にバリエーションをもたせるためのコツ」なども詳しく解説されていて、どれも具体的なので、すぐにためしてみよう!という気持ちになれます。

騒ぐ、順番が守れない、「勝ち」にこだわる…気になる行動の解決法

第4章以降では具体的な個々の特性や問題行動へのアプローチの仕方が深掘りされています。なかでも特徴的なのが第5章での多種多様な「気になる行動」です。日常よく起こりそうな、それでいてスムーズに解決するのが意外と難しい、いろいろな問題が扱われています。

子どもが騒いでしまう… 無声音「シーッ」が効果的

公共の場で子どもが騒いでいるのをやめさせたいとき、大人が大声で注意したのに効果がなかった、それどころか、注意した大人が悪目立ちしてしまった……という経験はないでしょうか。
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P144より
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P144より
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子どもに黙ってほしいときは、人差し指を唇に当てて、無声音で「シーッ」とやってみましょう。音はだんだん小さくしていき、それに合わせて、手を下げていくと、声量を下げるイメージを視覚的に伝えることができるので効果的です。

遊びの順番を守れない… 「順番を守る必要性」から教える

たとえばブランコや滑り台をどうしてもやりたくて、つい「順番抜かし」をしてしまう子どもを見かけることがありませんか。小嶋先生によると、発達障害がある子どもは、そもそも「順番は守るものだ」ということが分かっていない場合があるそうです。このため、「順番を守らなきゃダメ!」と叱っても意味がないのだとか。

むしろ穏やかに「順番というものがある」ということと、「自分は何番目か」を丁寧に説明してあげることが大切です。必要に応じて、列をつくって待っている絵を見せながら、最後尾に並ぶのが「望ましい行動」なのだと分かりやすく伝えましょう。

「勝ち」こだわる子どもには… ゲームで「負ける経験」をさせる

「何でも一番でないと気が済まない」「勝てないとパニックを起こしてしまう」、そういう子どももよくいます。負けるたびにパニックになっていては、いい人間関係は築けません。友達と遊ぶこともできないでしょう。そのため、小嶋先生は、負けを受け入れられるように支援することがとても大事だと書いています。

では、どうすればいか。著者は、大人がUNOやトランプで子どもと一緒に遊んで、子どもが「負ける寸前」になるまで追い詰めるといいと書いています。そういう状況をつくり、最後には勝たせてあげる、という勝負を何度も繰り返していくと、大人から見て「今日は子どもを負かしても大丈夫」と思えるタイミングが到来します。

そのタイミングを逃さずに子どもを負かして「負ける」経験をさせたうえで、「負けたときは『ま、いっか』といってごらん」と、敗北を受け入れつつ気を楽にするスキルを教えてあげるのがよい、と教えてくれます。

大人に「やって」とせがむ子どもに…本人に行動を「選択」させよう

この項目の初めには、「コップ、自分で片づけようね」と大人が声かけしても、「いやだ」とコップを投げ飛ばしてしまい、結局大人が片づける、というシーンがマンガで描かれています。
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P184より
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P184より
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ここで大人が折れてコップを片づけてしまうのは、よい対応とはいえないそうです。なぜなら、子どもが「暴れれば大人がやってくれる」と誤学習してしまう原因になるからです。

小嶋先生は、教室でこのようなことがあったら、子どもが落ち着いたところでコップを拾って子どもの前に示し、「自分で片づけますか? それとも先生と片づけますか?」と言って選択させるそうです。「片づけなさい」では聞けない子どもでも、選ばせることで望ましい行動へと導くことができるのです。

「どんな特性がある子でも私たちには宝」著者の思いの詰まった声かけ・接し方の工夫の大全集

このように、具体的な100のスキルが1冊の本のなかに、実に288ページにもわたってぎっしり詰まっています。

そのページ数を聞いて「活字が苦手だから、288ページも読めるかな…」と思う方もいるかもしれません。ですが、各章は一つのテーマごとにそれぞれ2~4ページでまとまっており、事例などは漫画家・かなしろにゃんこ。さんのイラストや漫画で分かりやすく描かれています。
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P32-33より
『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』P32-33より
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冒頭から順に読むも良し、知りたいことが書かれているページを好きな順番で読んでも良し、読む側の状況に合わせて知りたい情報を手に入れることができます。

著者の小島先生は、本書で次のように述べています。

「どんな特性がある子も、私たちにとっては宝です。ですが、宝を守り、健やかに育てるのは、そう簡単なことではありません。とりわけ、特性がある子と上手に接するためには、技術が必要です。」

「この本で紹介したのは、子どもの多様なニーズに応えつつ、彼らが他者とともに生き、学び、そして成長するのを支える最も基礎的なスキルです。」


声のかけ方や教え方、接し方を大人が少し工夫することで、子どもの成長を後押しできます。この本「発達障害・グレーゾーンの子がぐっと伸びた 声かけ・接し方大全」(講談社)は、まさにそうした声かけ・接し方の工夫の大全集といえるでしょう。手元に置いて何度も見返して、ご家庭で、学校で、早速試してみませんか。

執筆/竹林美和

著者について

小嶋 悠紀
1982年生まれ、株式会社RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS代表取締役、発達支援コンサルタント、元小学校教諭。信州大学教育学部在学中に発達障害がある人を支援する団体を立ち上げ、代表を務める。卒業後は長野県内で教員を務めながら、特別支援教育の技術などをテーマに全国で講演を実施。県の保育士等キャリアアップ研修や、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の養護教諭むけの研修なども担当する。2023年より現職。直接の指導や支援会議への参加を通じてこれまで2000人をこえる子どもの支援に関わり、センサリーツール「ふみおくん」の開発にも携わった。おもな著作に『発達障がいの子供を教えてほめるトレーニングBOOK』『小嶋悠紀の特別支援教育 究極の指導システム1』(教育技術研究所)などがある。Instagram :@oshietekojit

かなしろにゃんこ。
千葉県生まれ。漫画家。作品に、発達障害のADHDがある息子との日々を描いた『漫画家ママの うちの子はADHD』『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』(いずれも監修・田中康雄)『発達障害 うちの子、将来どーなるのっ!?』『発達障害 うちの子、人づきあいだいじょーぶ!?』(以上、講談社)、『発達障害でもピアノが弾けますか?』(原作・中嶋恵美子、ヤマハミュージックメディア)などがある
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