息子自身が障害を理解することで癇癪を軽減

「ほかの多くの人は声かけや音などで邪魔が入ったとは思わないし、することも忘れない」ということを知ったので、タケルは「意地悪されているわけじゃなかったんだ」と他人に怒りを向けることがなくなりました。学校での「泣き怒り」も、ぴたりと止まりました。
また「中断がこんなにも不愉快なのは障害の特性」ということを、息子自身が理解したことで、集中して考えたり、手順の多い作業をするときは、静かな環境をつくってリスクを減らしてから取り掛かることができるようになりました。
残念ながら、22歳になった今でも「何か邪魔が入ると忘れてしまう」という特性自体がなくなったわけではありません。たまに「あー!考えが飛んでったー!」と言いながらイライラしていることもあります。

それでも子どものころに比べたら、本当にたまにのことになりました。一生解決しない問題なのかもしれませんが、うまく折り合いをつけていって欲しいと祈るばかりです。
執筆/寺島ヒロ
(監修:藤井先生より)
タケルさんの癇癪、泣き怒りの理由が、とても長い時間を経て分かったのですね。2000年生まれだと、今よりも発達障害や発達障害の特性について知る機会が少なかったかもしれません。その状況の中、寺島ヒロさんが毛布にくるんでクールダウンする環境を整えたり、泣き怒りの理由を一緒に探ろうと質問されたことで、対処法を探ることができましたね。
2~3歳ごろの癇癪スタートの年齢では、癇癪の理由をお子さんが言葉にすることは難しいですが、このように実際のエピソードを共有していただくことで、癇癪の対応に苦慮されている親御さんの手立てになりそうですね。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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