自閉症娘の起床は午前2時。母も眠れず体調不良に…服薬は必要?わが家の選択【医師アドバイスも】

ライター:にれ
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自閉スペクトラム症のある子は睡眠障害を併発することが多いと言われています。長女のまゆみも睡眠リズムが大崩れし、親である私の生活にも影響するようになってしまいました。主治医にはリスパダールの服薬を薦められましたが、療育先の提携病院の漢方外来に行ってみると……。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

自閉スペクトラム症の5歳娘、急に乱れ始めた睡眠。真夜中に起きては大はしゃぎ!

今年の夏から秋にかけ、5歳の長女まゆみの睡眠リズムが乱れに乱れ、親子ともども睡眠不足の日々を送っていました。

何がきっかけだったのかは分かりません。ここ2年ほどは睡眠も安定していて、それなりに寝てくれる子でした。
それがいきなり、真夜中の2時や3時に大笑いしながら起き出して何時間も騒いだり、暗いうちに目覚めたまま眠らないようになったのです。ひどい時には起床が夜中の1時だったこともありました。
自閉症スペクトラム症がある5歳娘は、真夜中に大笑いしながら起き出して大はしゃぎ!
真夜中に大笑いしながら起き出して大はしゃぎ!
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まゆみが起きると、私も眠れない

まゆみは目覚めるとまず、寝ている私の上に乗ってきて頬を寄せ、アゴでゴンゴンして起こそうとしてきます。本人はニコニコして悪気はないのですが、まゆみの繰り出す強烈なアゴ落としで私が悶絶しながら起きるのがルーティンになっていました。
走り回って騒がない限りは夫や次女が起こされることはあまりないのですが、まゆみが起きると私は必ず起こされてしまうのです。

「起きて起きて」と言わんばかりに愛情表現してくれるのは有難い反面、真夜中に起こされるのには参りました。
まゆみは20時半頃眠りに就くことが多いのですが、私はふだん夜中の1時頃まで仕事をしているため、これではほとんど眠れません。

そんな日が1ヶ月ほど続くと私の体調もみるみる悪化……。体重もメンタルもガタ落ちし、口内炎と謎の蕁麻疹に悩まされ、仕事にも生活にも差し支えるように。そんな時、ちょうどまゆみの発達外来の受診日があったので主治医に相談してみました。

主治医の薦めは投薬。けれど……

発達外来で主治医に相談すると、投薬を薦められて……。
発達外来で主治医に相談すると、投薬を薦められて……。
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実は、主治医には以前から服薬を薦められていました。それを固辞していた理由は、対象年齢になったばかりであることと、診察室での姿と普段のまゆみの姿にギャップがあったからです。

広い診察室ではテンションが上がって走り回ってしまうまゆみですが、家庭内や療育先になると、落ち着きのなさはあるものの座って学習にも取り組めているのです。そのため日常生活で「多動のせいで学習機会が減っている」と感じることは少なく、思い出したようにクルクル跳ね回るまゆみのうれしそうな表情を見ていると、「今のこの子の脳と体には必要な動きなんじゃないか」とも思えていました。

服薬に関しては何が正解というのはなく、当事者が納得することが重要なのだと考えています。しかし、まゆみ本人が決めることは難しいためにメリットとデメリットをよくよく考えて慎重になっていました。
しかし……眠れないとなると話は変わってきます。
私もしんどいですし、何より睡眠不足がまゆみの心身に与えるダメージが心配でした。

「持ち帰って夫と相談の上で決めたい」と答えた私に、医師は「睡眠だけに効くメラトベルという薬もあります。リスパダールに抵抗があるようならこちらでも」と提案してくれました。

主治医の薦めるように投薬を始めてみるか、飲まずに様子を見るか。

夫に相談すると、「薬? う~ん、本当に必要? 飲ますしかないなら仕方ないけど……」という返事。
夫婦だけでは答えが出せず、療育先にも相談してみることにしました。

漢方外来に行ってみることに

療育先の提携病院に漢方外来があるとか!
療育先の提携病院に漢方外来があるとか!
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療育先の経営母体の病院が隣町にあるのは知っていましたが、そこに漢方外来があるのだそうです。漢方は効き目もゆるやかで体への負担も少なく、合えば体質改善に繋がるのではないか……私の中での方針が固まりました。

まずは漢方を試してみて、効果がなければ主治医の薦めるように投薬を試そう。そう決めて、漢方を処方してもらうことにしました。

漢方を始めてみて

漢方ってどんなものだろう? 煎じ薬のようなものを貰うんだろうか……。
そんな想像とは違い、きちんと個包装された「抑肝散」という顆粒の薬を処方してもらえました。睡眠だけでなく、神経のたかぶりを全般的にゆるめてくれることが期待できるそうです。

中身を確認してみると、ザ・漢方という色と香り……。偏食でジュースもほとんど飲まないまゆみが飲めるか心配になりましたが、お湯に溶いて飲ませてみました。

最初こそ飲ませるのにとてもとても苦労しましたが、4日目からはまゆみ自ら口をつけるようになりました。そして飲み始めて2週間ほど過ぎると、睡眠が徐々に安定するように……!
睡眠障害が始まってからは日中もハイテンションで昼寝すらしないことが多かったのですが、保育園でも療育でも「落ち着きを取り戻してきた」と報告を受けました。
「抑肝散」を飲み始めて2週間ほどで、睡眠が徐々に安定するように……!
「抑肝散」を飲み始めて2週間ほどで、睡眠が徐々に安定するように……!
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抑肝散はまゆみに合っていたんだ! やった! と大喜びで追加の抑肝散を処方してもらいに行きました。しかし……

「抑肝散」から「甘麦大棗湯」にまさかの変更

「あ、漢方飲める子なんだね。じゃあこっちも試してみて。飲ませやすいと思うよ」

処方されたのは「抑肝散」ではなく「甘麦大棗湯」という漢方薬。一般的には、こちらのほうが癖もなく甘い味で飲みやすいと言われているそうなのですが、持ち帰って一口与えてみると……まゆみが断固拒否!! 薬を見るや布団を頭からかぶって出てこなくなってしまいました。

それでもどうにか頑張って少しずつ飲ませていたのですが、抑肝散をやめたら睡眠障害も再発してしまい、また振り出しに戻ってしまいました。でも漢方は効くまでに時間がかかるし……と2週間ほど頑張ってみましたが、改善の見込みなく心が折れそうだったので、もうムリ‼ と隣町の病院へ車を走らせました。

「すみません、抑肝散に戻したいです!」

今度はすんなりと抑肝散を処方してもらえ、そこから3ヶ月飲み続けて現在に至ります。

わが家に穏やかな夜が帰ってきました

波はあるものの、わが家に穏やかな夜が帰ってきました。

漢方は合う薬を見つけるのが難しいといわれる中で、たまたま最初の薬が合っていたまゆみはとてもラッキーだったのかもしれません。甘麦大棗湯も、まゆみには合いませんでしたが合う人も多いそうです。

私は療育先に相談してみるまで漢方外来という選択肢があることも知りませんでした。

もちろん西洋医学の薬が悪いものとは思っていませんし、効果の高い薬で気持ちや行動が落ち着けば、できることが増えて本人の人生も豊かになるだろうと思います。ただ、現時点で私と夫の考えは「未就学児のうちは、強く作用する薬は最後の手段にしたい」という意見で一致していました。

子どもの服薬については悩まれる方も多いと思います。繰り返しになりますが、一概に正解を示せるものではないので、ご家庭それぞれ、お子さんそれぞれの答えになるのだろうと思います。

わが家もこのままずっと抑肝散に頼っていけるかは分かりませんが、ひとまず漢方のおかげで落ち着いたので、こんな例もあったよとお伝えできていれば幸いです。
執筆/にれ

(監修:藤井先生より)
自閉スペクトラム症と睡眠障害の合併は40〜80%と高く、お子さんの睡眠障害に伴ってご家族も疲弊されることもよくあります。
お薬に抵抗があったかもしれませんが、にれさんが主治医と療育先に相談され、まゆみさんにあう漢方薬が見つかってよかったです。
漢方薬でも、西洋薬でも、副作用と効果のバランスをみながら、主治医と相談しながら、使用の可否についても相談できると良いですね。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35029707
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。


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