読み書き計算が苦手な子どもも楽しく遊んで学べる!『ワーキングメモリがぐんぐんのびるカードゲーム』【考案者・湯澤正通さんインタビュー】

ライター:発達ナビBOOKガイド
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読み書き計算が苦手な子どもも楽しく遊んで学べる!『ワーキングメモリがぐんぐんのびるカードゲーム』【考案者・湯澤正通さんインタビュー】のタイトル画像

ワーキングメモリとは、一時的に情報を記憶し、同時に処理する脳の働きのこと。会話や読み書き、計算などあらゆる場面に関わっています。このワーキングメモリを遊びながら育んでいくことができるカードゲームシリーズが誕生しました。遊び方のポイントを、考案者の湯澤正通さんのお話と共にご紹介します。

ゲームで楽しく読み書き計算の基礎づくり

『ワーキングメモリがぐんぐんのびるカード』全3巻
『ワーキングメモリがぐんぐんのびるカード』全3巻
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『ワーキングメモリがぐんぐんのびるカードゲーム』シリーズは、音韻意識を高める『単語メモリカードゲーム』、「ぴょ」「きゃ」などの特殊音をすばやく読む力を育む『単語マッチングカードゲーム』、算数の基礎を育てる『数字マッチングカードゲーム』の全3作。

シンプルで見やすいイラスト、数字のカードで楽しく遊ぶうちに、ワーキングメモリがぐんぐん刺激され、次第に学習の基礎力も培われていくように考案されています。

ワークシートを使ったトレーニングは、机に向かうことに苦手意識を持っている子どもにとって、「お勉強」要素が強くなり苦痛になってしまう場合があります。ですが、このカードゲームは「勉強」と意識することなく遊び感覚で取り組むことができます。
ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム
湯澤 正通 (著、 企画・原案)
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ワーキングメモリがぐんぐんのびる2 単語マッチングカードゲーム
湯澤 正通 (著、 企画・原案)
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ワーキングメモリがぐんぐんのびる3 数字マッチングカードゲーム
湯澤 正通 (著、 企画・原案)
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やりとりのなかで理解が深まる

ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
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学習行動は、子ども(仲間)、教材、教師(大人)という三者の関係があるときに、より深い理解へと結びつくといわれています。黙々と教材に向き合うよりも、ワイワイとやりとりを交えながら取り組むことで、読み書き計算の基礎的な知識やスキルを効果的に身につけやすいお子さんも多いのではないでしょうか。

3つの遊び方で飽きずに楽しめる

ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
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『単語メモリカード』は、55枚の単語カードと、「きゃ」「ちゅ」などの音が書かれた「読み札」33枚がセットになっています。単語カードのおもて面はイラスト、うらはひらがなです。
ワーキングメモリがぐんぐんのびる2 単語マッチングカードゲーム: 特殊音をすばやく読む
ワーキングメモリがぐんぐんのびる2 単語マッチングカードゲーム: 特殊音をすばやく読む
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『単語マッチングカードゲーム』は、2枚1組の単語カードが全部で96枚セットになっています。
ワーキングメモリがぐんぐんのびる3 数字マッチングカードゲーム: 算数の基礎をそだてる
ワーキングメモリがぐんぐんのびる3 数字マッチングカードゲーム: 算数の基礎をそだてる
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『数字マッチングカードゲーム』では、数字カード、2つの数字カード、数字と図形カード、図形カードの4種のカードで、1から13までの数をあらわしています。
写真の上段はすべて「1」を、下段はすべて「13」をあらわすカードです。

これらのカードを使い、それぞれのカードゲームで3つの遊び方で楽しむことができます。
子どもの年齢や経験に合わせて難易度を徐々に上げていくこともでき、飽きずに遊べるのもうれしいポイントです。

著者・湯澤正通さんにインタビュー! カードゲームに込めた思いは?

編集部(以下――):本書で遊ぶことで、ワーキングメモリにはどんな刺激があるのでしょうか。

湯澤正通さん(以下、湯澤):発達障害などがある子どもは、1.記憶、2.切り替え、3.抑制といった実行機能(ワーキングメモリは実行機能のひとつで、1.記憶に対応)に弱さが見られることが少なくありません。
本書では、遊びのなかでこの3つの機能を使うように設計されています。
たとえば、『単語メモリカード』で「きゃ」を含むカードを探すとしましょう。このとき、「きゃ」という音を覚えると共に、カードに書かれた単語の音(きゃべつ)を記憶し、単語のなかに「きゃ」が入っていることを確認する、という作業が行われています。ここでは、ワーキングメモリの1.記憶が使われています。
さらに、「きゃ」が終わったあとに、次は「しゅ」のカードを探すとなったら、今度は「きゃ」から「しゅ」へと頭の情報を切り替える必要があります。また、「きゃ」のカードを探しているとき、「きょうだい」のカードを見つけても、我慢して抑制しなければなりません。
このように、ワーキングメモリの3つの機能を使いながら遊ぶことで、自然とワーキングメモリの容量が大きくなっていく、というわけです。
ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
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ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
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ーーゲームをつくるにあたって工夫されたことを教えてください。

湯澤:『単語メモリカードゲーム』と『単語マッチングカードゲーム』では、「きゃ」「ちゅ」「にょ」などの拗音や「たっ」「はっ」などの促音を含んだ単語を選びました。読み書きにおいて、子どもが最後まで間違いやすいのが拗音と促音だからです。

――保護者や支援者など大人がゲームに参加する際には、どんな工夫やサポートをするとよいですか?

湯澤:たとえば「きゃ」を含むカードを探しているのに、子どもがなんの音のカードを探しているか忘れてしまうこともあるでしょう。そんなときは、読み手の大人が再度読み札を読み、音の記憶を呼び戻す必要があります。また、「きゃ」の音のカードを探しているときに、「きょうだい」のカードを取ってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、子どもと一緒にカードを読み、「きょうだい」には「きょ」が入っているけれど、「きゃ」は入っていないね、ということを確認していきます。
ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
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ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
ワーキングメモリがぐんぐんのびる1 単語メモリカードゲーム:音韻意識を高める
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早めのアプローチで困難を回避!

――読み書き計算は小学校に入学してからというイメージをお持ちの保護者の方も多いかもしれませんが、対象年齢を5歳からとしたことには理由がありますか?

湯澤:発達障害などでワーキングメモリが弱い子どもの場合、小学校入学後に読み書き計算につまずくケースが多く見られます。そこで、できるだけ早期に読み書き計算の基礎を身につけることで、小学校入学後の困難を回避することが期待できます。小さなお子さんにとっては、プリントなどのワークよりもカード遊びのほうが楽しんで取り組めるでしょう。ぜひ、親子や友達との遊びのなかに、ワーキングメモリの働きを促すゲームを取り入れてみてください。

――最後に、「発達ナビ」の読者のみなさんにメッセージをお願いします。

湯澤:子どもの個性は多様で、発達の道筋はさまざまです。子どもによっては、言葉の発達や読み書き算数などの学習に遅れが見られることも。ただ、早めに支援をすることで、遅れや困難を回避したり、軽減したりすることは可能です。子どもの可能性を信じ、一緒に楽しく遊びながら子どもの力を伸ばしていきましょう!

シンプルなデザインで長く遊べる

本書の対象年齢は5歳から大人まで。シンプルで見やすいデザインとかわいいイラストで、幅広い年齢の子どもが遊べるように工夫されています。

さらに、シンプルだからこそ、大人でも夢中で遊べるような普遍性があるのも、本ゲームのポイントです。たとえば、『単語メモリカードゲーム』の遊び方の1つ「Nバックゲーム」は、「きゃ」「ちゅ」「しゅ」「しょ」と読み札を読んでいき、「2つ前の音が入っている札を探す」「3つ前の音が入っている札を探す」というもの。「Nをいくつまで増やせる?」など、親子で限界にチャレンジしながらのゲームは、思わず大人も真剣になってしまうことでしょう。

間違えたり、忘れてしまったりしても大丈夫。笑いながら、遊びながら、親子で一緒に楽しむことで、少しずつお子さんのワーキングメモリを育んでいけると思います。

執筆/浦上藍子

著者について

湯澤正通(ゆざわ・まさみち)
広島大学大学院人間社会科学研究科教授。東京大学文学部心理学科卒業。
ワーキングメモリ理論に基づいた教育支援の第一人者。
ワーキングメモリの特性がわかるアセスメントシステム「HUCRoW」(フクロウ)を開発。
主な著書に『知的発達の理論と支援─ワーキングメモリと教育支援』(金子書房)、『ワーキングメモリを生かす効果的な学習支援―学習困難な子どもの指導方法がわかる!』(共著、学研プラス)など多数。
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湯澤 正通 (著、 企画・原案)
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

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