自閉症息子、高校卒業後どこまで親が支える?就労先は?「本人の意思を尊重」と言うけれど…

ライター:立石美津子
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小学校入学後、18歳まではそこまで大きなトラブルや迷いもなく、自然に進んできたASD(自閉スペクトラム症)の息子の進路。ですが、特別支援学校高等部卒業後はそうもいかないことを痛感しました。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

どの事業所を希望する?情報集めに奮闘する保護者

小学校入学後、18歳まではそこまで大きなトラブルや迷いもなく、自然に進んできたASD(自閉スペクトラム症)の息子の進路。ですが、特別支援学校高等部卒業後はそうもいかないことを痛感しました。

小耳に挟んだところによると、人気があるB型事業所や就労移行支援事業所は希望者が殺到するようです。

私は担任の先生から 「1ヶ所に人数が集中しないように調整をするので、区内での実習先は1ヶ所ではなく2ヶ所以上選んでください」と言われました。

どの事業所が評判がいいのか、子どもに向いているか……。障害児の進路選択は情報集めが大事。私もいろいろと調べまくりました。ある意味お受験戦争と同じような感じがしてしまい、戸惑っていました。

「本人の意思を尊重して」と言われても……

事業所といっても当然保護者が通うわけではありません。

「実習体験をして、本人が『ここに行きたい』と強く希望したところに行くように」と周りからアドバイスをもらったのですが、知的発達症(知的障害)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の息子は、自分の意思をあまり示しません。

例えば「今日は学校休んで遊園地へ行こうか!」と誘っても息子は「学校に行く」と言います。これは、「学校に行きたい」から言っているのではなく、平日は学校に行く予定になっているから「学校に行く」と言っているだけ。決まったスケジュールを厳守することのほうが優先なのです。

幼い頃からずっとこんな感じですから、「本人の意思を優先」というのが難しい……。そうなると、やはり私の出番になります。息子にはここが合ってるかな?ここは嫌がりそうかなと全力で検討しました。

卒業後の人生は長く、子育ても続く

いろいろ悩んだ末、息子は就労移行支援事業所に行くことになりました。
就労移行支援事業所へ行くことになったお話は、ほかの記事でご紹介していますので、よろしければ御覧ください。
特別支援学校高等部卒業後、どんな選択肢がある?自閉症息子は、障害者雇用枠で一般就労へ--障害があるわが子の進路、母の思いのタイトル画像

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特別支援学校卒業後いきなり企業就労を目指さず正解だった!?--自閉症息子、就労移行支援での職業訓練

就労移行事業所のポスターで「就労はゴールではなくスタート!定着率が大切!」と掲げられていたのを見て、私は「本当にその通りだ」と痛感しました。

18歳以降の人生はとてもとても長いのです。就労できたとしても定着できるかなんて分かりません。そして親亡きあとも、とても長く続きます。長い人生からみたら幼児期、学齢期なんてほんの数年……。まだ助走段階?

定型発達の人なら、成人後の人生設計は本人任せになると思いますが、障害児の親の子育ては永遠に続くんだな……と感じました。長い長いマラソンを走っている気持ちです。
執筆/立石美津子

(監修:鈴木先生より)
神経発達症の方の就労支援は各都道府県にある発達障害者支援センターで行っているはずですが、なかなか世間に浸透していません。就労できる方は就労支援を、就労が困難な方は生活支援をどこでどうできるか相談できます。20歳になれば年金の診断書も必要になるため、あわてて主治医を探す方も大勢います。知的発達症を伴ったASDのお子さんは15歳の中学生までは小児科で診てくれますが、それ以降はどこの精神科でお世話になるか保護者が探している場合が多くみられます。本当はかかりつけ医とパイプのある精神科を紹介すべきなのです。特別支援学校高等部など学校に通っている時は小児科でもいいのですが卒業後、就労・年金・知的財産権などの問題になると精神科のほうが得意だからです。小児科から精神科へスムーズに移行できる連携システムが重要なのです。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030005
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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