「どうして僕は特別支援学級に?」障害のある子どもに聞かれたとき、どう答える?

ライター:立石美津子
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知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の息子は現在23歳です。息子は自分に障害があることを分かっています。自分の障害を説明できることは、就職のときにも重要なことでした。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

特別支援学級にいることを疑問に思っている子どもへどう伝える?

私の息子(現在23歳)は、知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)です。同じく知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の子どもを育てている知人から、こんな相談を受けたことがありました。

「特別支援学級に在籍していることを本人は疑問に感じているようで、なんでみんなと同じクラスに行けないの?と聞かれてしまう。どう説明したらよいのか困ってるので教えてほしい」と……。

特別支援学級とは、障害のある子どもが、学習または生活上に困りごとを克服するために設置されている少人数制の学級のことで、小学校、中学校に設置されています。なかよし学級、わかば学級など、数字ではない学級名だったり、1組~5組が通常学級、6組が特別支援学級としている学校もあったりと、さまざまです。

もちろん特別支援学級と通常学級の違いについて詳しく知らないまま通っている子どもいるでしょう。ですが「通常学級は児童35名に対して担任1名、特別支援学級は8名に対して担任1名の少人数」という状況にだんだんと気づき、自分が通っているクラスはほかのクラスとは違うんだと分かるようになるでしょう。

ですから、曖昧に答えないで「人には得意不得意があるので、個別の学習が得意な子や、少人数の方が適している子は特別支援学級、特別支援学級はスペシャルな教育『特別支援教育』を受けられる場なんだよ」とそのまま答えてあげればいいのではと伝えました。

さらに可能であれば、雑談の中で軽く伝えるのではなく、一対一の面談で第三者(医師や支援者など)から伝えたほうがいいと思っています。この自分に障害があることを理解しているか、またそれを説明できるかは、とても大事なことだからです。

息子の場合は

息子は中度知的障害(知的発達症)があるASD(自閉スペクトラム症)ですので、このようなことを聞かれたことは今までありません。ですが、特別支援学級がない中学校の前を通った時「僕は障害があるからこの学校には行ってない。特別支援学級のある学校に通ってる」と淡々と独り言のように言ってました。

決して自分を卑下しているわけではありません。事実を事実として捉えているようでした。

小学校の頃、放課後等デイサービスのヘルパーさんが毎日学校に迎えにきてくれて、18時までデイで過ごす生活をしていた息子。学校まで迎えに来てもらっているのはもちろん少人数です。息子はそうした状況も理解していたと思います。

就職活動で

息子は現在、一般企業で障害者雇用として働いています。
障害を開示して働く場合、まず面接官に聞かれることがあります。
「あなたの障害名を言ってください」
また
「あなたの得意なこと苦手なことを言ってください」
とも聞かれます。

この質問の意図について聞いたところ、自分の苦手を隠そうとしたり、自分の障害を受け止めていなかったり、変なプライドがあったりすると、アドバイスや指示を受けられなくて困るから、本人が自分のことを分かっているかを聞いているとのことでした。
本人告知という大それたものではなく、特性をきちんと自覚させ、その結果、通常学級に在籍していないとか通級指導教室を利用している理由を分かっておくことはとても大事です。
子どもから質問を受けた時は、いい機会だととらえ、答えたほうが良いと思います。

息子は現在就労していますが「あなたの障害名は?」と聞かれたとき、「自閉症と知的障害と強迫性障害です。不得意なことは計算です」と答えているようです。
これは、聞かれたときに正しく伝わるようにと、特別支援学校高等部卒業後に通っていた就労移行支援事業所での面接練習で、バッチリ訓練してもらった成果です。

就職活動をしないにしろ、自分のことをしっかり認識していることが大切だと思います。
執筆/立石美津子

(監修:鈴木先生より)
デンマークにある自閉スペクトラム症(ASD)専門の学校では、例えば「自分は自閉スペクトラム症であり、感覚に敏感なことから、急に触られることが苦手です」などと自己紹介が言えるようにすることから教育が始まるようです。ASDは、障がいというよりは特性と考えた方がいいようです。自分の特性を理解し、周りにもその特性を理解してもらい、合理的配慮の下で働ければ問題は起きない可能性が高まると思われます。日本の特別支援学校はASDだけではなく、肢体不自由児や重度の知的障がい児なども混在しており、ASDに特化した教育がなされていないのが現状です。これからは診断のついている個々の障がいに向き合った、きめ細かな教育が望まれるのではないでしょうか。
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https://h-navi.jp/column/article/35030086
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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