あの場所があるから学校へ行けた!教室にいられなかった小1の頃、発達障害息子の「安全地帯」

ライター:かなしろにゃんこ。
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ADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の息子リュウ太は、小学1年生の時ずっと教室にいることができませんでした。そこで、担任の先生は「リュウ太専用の特別スペース」を作ってくれました。リュウ太は大きくなってからその特別スペースへの思いを教えてくれました。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

教室にいられなかった小1のリュウ太の特別スペース

ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)のリュウ太は教室にいることができなかった
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)のリュウ太は教室にいることができなかった
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担任の先生に特別スペースを用意してもらい、みんなへのルールも作ってもらいました
担任の先生に特別スペースを用意してもらい、みんなへのルールも作ってもらいました
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ADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の息子リュウ太は小学1年生の時、なかなか教室で授業を受けることができませんでした。そのリュウ太のために担任の先生は、階段がある廊下の一角にリュウ太専用の特別スペースを作ってくれました。

その場所は、リュウ太だけが使えるルールになっていました。周りの人の目が気にならないようにホワイトボードを衝立代わりにしてあり、個室のような空間でした。また「リュウ太くんがこの場所にいるときは、リュウ太くんに話しかけない」というルールも作ってもらっていました。
特別スペースはリュウ太にとってオアシスのような場所だった
特別スペースはリュウ太にとってオアシスのような場所だった
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リュウ太は、みんなと一緒に教室で何の問題もなく勉強していると信じていた母の私は、その特別スペースの存在を最初はよくは思っていませんでした。でも、母の気持ちとは真逆でリュウ太にとってはオアシスそのもの。一畳分の広さしかない場所でしたが、リュウ太はその場所がお気に入りだったと言います。
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17歳になったリュウ太に当時のことを聞いてみると

大きくなったリュウ太に特別スペースについて聞いてみると
大きくなったリュウ太に特別スペースについて聞いてみると
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リュウ太が専修学校の高等課程2年生の時に「あの特別スペースをどう思っていたの?」と聞いたことがありました。

すると「あの場所大好きだったんだよね。教室はいろいろな音がうるさくて落ち着かないし、勉強よりも絵や工作をやりたかったから。その場所では自由に好きなことをやってOKだったから、午前中はだいたいそこにいたよ」と話してくれました。
教室はうるさくてつらい……
教室はうるさくてつらい……
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感覚過敏で光や暑さがつらい……
感覚過敏で光や暑さがつらい……
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私はリュウ太が小学1年生の頃は知らなかったのですが、リュウ太には感覚過敏があり、教室に居られなかった原因はどうも感覚の問題もあったようでした。

教室では「いろいろな音が同時に耳に入ってくる」「みんなの話し声がうるさくて勉強なんて無理」「暑かったり、まぶしかったり、汗で体がかゆくなったり、体の不快感がたくさんあって先生の話に集中なんてできない」……などなど困った状態であったと教えてくれました。

これらの不快な症状があるときにクラスメイトからからかわれたり、ちょっかいを出されると一気に我慢していた心が崩壊してしまい、周りの子に怒鳴ってしまったり大きな声を出してしまったり、イライラしてしまうと教室に居られなくなっていたと言うのです。

「あの場所がある」イヤなことがあっても学校に通えた

学校には「自分専用の特別スペースがある」と思うと学校に行けた
学校には「自分専用の特別スペースがある」と思うと学校に行けた
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そんなときに特別スペースで気持ちを落ち着けることができたそうです。教室が暑くてツライとき廊下は涼しく気持ちがよくてサイコー!そして、一人で好きなことをやってOK!というルールだったから、イヤなことがあっても「僕にはあの場所がある」と学校に通えたみたいです。

落ち着く場所ということ以外にもリュウ太にとっての安全地帯だったのかな?と思います。

小学2年生からはそのスペースはなくなってしまいましたが、廊下の心地よさを知ったリュウ太はその後廊下で過ごすのが大好きになっていきます。そのお話はまた次の機会に書きたいと思います。

執筆/かなしろにゃんこ。
(監修:井上先生より)
教室の環境が合わないお子さんに対して、避難できる場所を作るということはときどき行いますが、階段の下というのはめずらしいですね。こういった場所を作ると“みんなと同じ教室に入れなくなるのでは”という懸念を抱く保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが、その場所があるから学校に行けたり、登校を維持できる場合があり、お子さんにとって大切な場所です。リュウ太さんのように一時的にはこういうスペースにいるけれども、最終的にはみんなと一緒に勉強ができるようになっていくという事例もあります。またそのプロセスもお知らせいただけるとうれしいです。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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