運動会や発表会などの行事を嫌がるわが子。欠席する?練習だけ参加?悩むときの対応のポイントは【公認心理師・井上雅彦先生にきく】

ライター:発達障害のキホン
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園や学校では、運動会や学習発表会などさまざまな行事がありますが、慣れない場面での不安などで行事が苦手なお子さんも。行事を嫌がるわが子にどう対応したらいいか悩むご家庭も多いかもしれません。今回は行事を嫌がるときの対応について、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生にお伺いしました。(取材/LITALICO発達ナビ編集部)

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

行事を嫌がるわが子。無理させたくないけれど……

園や学校では、運動会や学習発表会、音楽発表会、参観日、遠足など、さまざまな行事があります。行事に向けて毎日みんなで練習をしたり、日課が変更になるなどのイレギュラーが続いたりすることもあるでしょう。

行事を楽しみにしているお子さんもいれば、慣れない場面での不安などで行事が苦手という場合もあります。行事を嫌がるわが子に、どう対応したらいいか悩んでいるご家庭も多いのではないでしょうか。

発達ナビのQ&Aコーナーでも、行事の参加についての質問が複数寄せられています。
運動会には出たいけど、みんなと一緒にできない&やりたくなくて本人も辛いと思うのですが…私も嫌がる事は無理強いさせたくない反面、嫌な事はやらなくていいと学習させてしまわないか心配です。
本当に苦痛で嫌な事は仕方ありませんが、できるけど面倒な事もサボってしまわないかと。
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/108641
週末、息子が学校行事の中で1番苦手な学習発表会があります。
聴覚過敏があるので体育館での群読、合唱、劇などなど、なかなか耐え難い内容です。
練習して頑張ろうとしていますが、耳触りと口歪め、ダブルチック症が出てます…。
「もうやらなくていいよ、学校休もう」って私が言いたくなってしまいます。

どこまでやらせるかの見極め、皆さんはどうしてますか?
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/77205
伺いたいのですが、本人がいやがる行事など(今回は合同遠足)は嫌がっても行かせたほうが良いでしょうか?
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/165078
今回は、わが子が行事への参加や練習を嫌がるときの対応について、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生にお伺いしました。

園や学校での行事を嫌がるとき、どうしたらいい?

Q:運動会や学習発表会などの行事の参加を嫌がります。少し無理やり参加させてしまっているのが悩みです。

A: 子どもが行事への参加を嫌がっているときに、少し無理やりにでも参加を促したほうがいいのか、無理させないほうがいいのかというお悩みかと思います。

お子さんによっては、自分のペースではなく集団で一斉に動くこと自体が苦手な場合もあります。今回いただいた行事に参加したがらないというご相談は、特に保育園や幼稚園から小学校低学年くらいまでによくある大きな悩みの一つかもしれません。

「本人が嫌がっているのに参加したところで子どもにとって意味があるのだろうか」という保護者のお気持ちをお聞きすることもあります。子どもの背中を押したほうがいいのか、無理せず休んだほうがいいのか、とても悩ましいところだと思います。

お子さんが行事を嫌がる場合の対応ポイントとしては、「行事に参加する・しない」の2択ではなく、行事の一連の流れを次のような3つに分けてみることです。

①本人が自分でできること
②少しサポートがあればできること
③サポートがあっても難しいこと

そのうえで、一番最後の「サポートがあっても難しい」場面については無理をせず、「自分でできる・少しサポートがあればできる」場面で参加できたらまずは十分である、という風に考えていきます。

「少しサポートがあればできる」という場面については、
・スケジュールや手順を見える化する
・タイマーなどを使って“終わり”を明確にする
・待つ時間が苦手なときは休憩スペースを作る、役割を作る
・感覚過敏性に配慮する
・部分的に参加する
・(集団練習ではなく)個別練習の時間を作る
などがよく取り入れられる工夫の例です。

お子さんが部分的にでも参加できた場面については、本人と先生やご家族みんなで喜び合って、お互いの成功体験にしていけるといいですね。

初めから「行事にすべて参加できる」を目指すというよりは、「本人が自分でできる・少しサポートがあればできる」場面を少しずつ増やしていけるといいでしょう。お子さんにとって良い体験で終われることが、次につながっていきます。
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
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行事の練習への拒否感が強いときは?

Q:行事の本番だけでなく、練習も嫌がります。練習にうまく取り組めるコツはありますか?

A: 練習への参加は、本番への参加よりも対応の優先度を下げるのも一つの考え方ですが、練習せずに本番に臨むというのも本人にとって大変ですよね。

そこで練習では、まずはほんの一部分参加する、先生がしっかりサポートする(支援の量を増やす)などから始めるといいかもしれません。どの場面でどんな支援があれば安心して参加できそうかお子さんと一緒に対話をしながら進めていくこともいいと思います。

毎日行事のことばかり話題になったり練習をしすぎたりすると、かえって不安が高まる場合もあります。その子に合わせて、本番に備えて控えめにしておくという対応もあるでしょう。

練習がお子さんにとって嫌な経験になってしまうと、やはり本番にも影響するかもしれません。できるだけ本人にとって楽しく練習できたという経験を積み重ねて、本番に備えられるといいですね。

例えば、まずは一部分、お子さんが現時点でも無理なくできる場面から練習に参加し、参加できたことを認めたり褒めたり一緒に喜んだりしていきます。そこから少しずつ参加できる部分を増やしていけるといいと思います。

毎年の行事については、学年が上がるとともに参加できる幅が広がっていくお子さんも多いものです。毎年経験するうちに、流れの見通しを持てるようになったり、本人がとれる対応の選択肢が増えたり、自分なりの参加の仕方が分かってきたりするためです。その意味では、やはり就学前から小学校低学年くらいが、親子共に大きいお悩みになっていることが多いかもしれませんね。

お子さんも成長していきますので、次につなげるためにも無理をしすぎず「良かった・楽しかった」で終われることを優先してみてもいいのではないでしょうか。
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
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