番外編(より簡単に)

つくるのはハードルが高い!という方向けに、感覚統合遊びに使える市販のグッズもご紹介します。

・家庭用トランポリン
とりあえずコレ!という感じですが、ジャンプは前庭覚と固有受容覚の両方にとても良い刺激になります。
天面に合う形の板を用意するとちょっとしたテーブルにもなるので、わが家では即席プレイテーブルに使ったりもしています。

【注意点】
スプリング式・ゴム式・クッション式など種類があります。スプリング式=運動強度は高いが安全対策が必要で軋む音も大きい、ゴム式=静音性は高いが経年劣化しやすい、クッション式=省スペースかつ安全性は高いが反発力が弱い、などそれぞれに特色があるので家庭の事情に合うものを選ぶと良いでしょう。


・バランスボード
バランスを取る動きは、感覚統合でとても重要です。揺れや傾きに反応することで、前庭覚と固有受容覚が同時に働き、脳が体の位置や動きを把握します。こうした感覚がうまく統合されることで、姿勢を保ち、スムーズに動く力が育つことが期待されます。

【注意点】
フローリング上での横滑りや、床とボードの間に指を挟む事故などを防ぐために、マットの上で安全に使用するようにしてください。うちでは次女が指を挟んで大泣きしてしまったことがあります……。


・バウンシングホース(空気を入れて膨らませる乗用玩具)
前後や上下に揺れる動きは前庭覚を刺激し、バランスを取ろうとする中で体幹や固有受容覚も育ちます。足で地面を蹴る動作は下半身の協調運動にも繋がり、遊びながら自然に「自分の体を思い通りに動かす感覚」を学べる点が魅力です。
わが子たちはバランスボールを使うのがまだ難しく、その点こちらはまたがってピョンピョンできるので、とても重宝しています。

【注意点】
メーカーによって形状や安定感、耐荷重などが大きく異なります。目的に沿うものを選ぶようにしましょう。


・回転するイス
回転する動きは、前庭覚(バランス感覚)を強く刺激します。まゆみがめちゃめちゃ喜ぶので、ついブン回したくなるのですが、速く回すよりも「短時間・ゆっくり・子どもが自分で回す程度」が良いようです。適切に使えば空間認識や姿勢調整力を育てる一助になると考えられます。

【注意点】
感覚統合療法において、回転は特に慎重に扱うべき刺激とされています。苦手な子も多く、人によって刺激の受け取り方が違うため、様子を見ながら行い、決して無理をさせないことが重要です。大人が一方的に回すことのないよう、自分の力で回ってもらうか、子どもが自分でもすぐに止められる程度の速さを心掛けましょう。

まとめ

以上、わが家での取り組みについてご紹介しました。

感覚統合で大事なのは、「個々のニーズに合わせること」だと思います。感覚統合の課題は一人ひとり異なるため、「この子はどんな刺激を欲しているんだろう?」をよく観察するのが重要です。専門的な知識のある方のアドバイスがあると心強いので、療育や病院と繋がっている場合は、信頼できる先生や医師に相談してみると良いかもしれません。

自宅遊具は手づくりならではの柔軟さが魅力です。
わが子に合わせた「感覚の欲求を安全に満たせる場」を日常の中につくったことで、まゆみにとってもあずさにとっても情緒の安定につながっているように思います。
重ね重ねしつこいと思われるかもしれませんが、設置を検討される際は、くれぐれも安全にご注意くださいね。

大物の遊具をつくり終え、やれやれと思っていたら、あずさから「次は滑り台をつくって」と注文が来ました。遊具づくりの道はまだまだ続きそうです……。
執筆/にれ

(監修:室伏先生より)
にれさん、感覚統合の遊具づくりについて、丁寧に共有してくださってありがとうございます。お子さんの感覚欲求や感覚ニーズを観察して、その子に合った遊具を工夫してつくられていること、本当にすごいなと感じました。とても具体的で、実際に取り入れやすいアイデアが詰まっていて、同じように感覚統合を家庭に取り入れたい方にとって、とても参考になる内容だと思います。にれさんも書かれているように、日々のお子さんの行動をよく観察したり、支援してくださっている先生方や療育のスタッフの方に相談しながら、その子に合った遊びや環境を整えていくことは、とても大切で、そしてお子さんにとって心地よい、良い時間になるのだと思います。

※本記事は個人の経験に基づく情報です。制作・利用は保護者の責任のもと、安全に十分ご注意ください。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030473

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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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