「小さな成功体験」を積み重ねて

先生にお見せしたかった一場面
先生にお見せしたかった一場面
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結局のところ、息子は入学後1週間もしないうちにバス通学はほとんど問題なく乗車できるようになりました。もちろん「今日は行きたくない」とぐずる日もありつつ、しばらくすると落ち着いて座っているとのことで、これは本当に驚きでした。特別支援学校では自立支援が主で、繰り返しの丁寧な声掛けや習慣付けの促しが、息子の安心にも繋がったのだと思います。

何より、苦手な野菜の完食という、小さな(息子にとっては大きな)成功体験を着実に積み上げていくことが、彼の自信になってくれました。「楽しかった。また学校行く。先生に会いたい」という言葉もたくさん飛び出したほど。

昨年熱性けいれんによる中度脳症と診断されてから、記憶力に低下が見られた息子でしたが、担任の先生2人の名前を覚えたかったようで、毎朝バス停までの道すがら、名前を繰り返し呪文のように唱えて歩きました。1週間後の連絡帳に「初めて名前で呼んでくれました!」と先生からの言葉を見た時は、息子とハイタッチでした。

そして迎えた、運動会!

息子なりの走りを見せてくれた
息子なりの走りを見せてくれた
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学校生活にもだいぶ慣れた 5月末、運動会がありました。保育園生活最後の運動会では、逃げ惑いほとんどの競技に参加することができず、集合写真にも写ることができなかった息子。毎日の練習では楽しく一生懸命な様子だと連絡帳に記録されていましたし、日々の安定した姿から、楽しみに当日を迎えた私。息子は不安そうにしながらもしっかりと歩いて入場し、かけっこも玉入れも彼なりに楽しんでいる様子が伝わってきて涙でした。

驚くべきことに、ほかの生徒さんたちもそれぞれみんなしっかり参加してかっこいい姿を見せてくれていました。おそらく多くの子は息子と同じく保育園や幼稚園では行事に参加できていなかったのでは……。ここではそれぞれの走りを見せてくれました。みんな自分の居場所を見つけているんだな、と思い胸がいっぱいになった運動会でした。

1歩1歩を味わえる喜び

良い日も悪い日も、明日は来る
良い日も悪い日も、明日は来る
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現在息子は、放課後等デイサービスにも通い始め、また1つ居場所が増えました。自信を積み重ねて頑張る息子の姿に、私も毎日元気と大きな喜びをもらっています。
特別支援学校という場所を、私は自分自身の無知から閉鎖的に感じていたところがありました。今現在ではこの選択にしてよかったなあと毎日実感しています。もちろん息子が成長を続ける中で壁は形を変えて現れ続けるのでしょうが、息子の1歩の重みを感じられることに感謝を忘れないでいたいと思います。

進学は子どもそれぞれの特性や障害の度合いによって多角的に考え判断していかなければならず、親は悩ましいものです。いろいろな専門家の方々の意見も考慮しつつ、親も失敗することを恐れず進んでいけたらいいですよね。
執筆/マミー・マウス子ビッツ

(監修:室伏先生より)
お母様ご自身が、最初は特別支援学校という選択に戸惑いや迷いがあったこと、そして実際に通う中で「この場所でよかった」と思えたことを率直に綴られていて、同じように悩んでいる親御さんにとって、とても励まされる内容だと感じました。特別支援学校の大きな魅力は、先生方の配置が手厚く、また、一人ひとりの特性や状況に合わせたきめ細やかな関わりを積み重ねやすい環境が整っているところにあると思います。そうした環境の中だからこそ、子どもたちも自分のペースで安心して挑戦を重ねることができるのでしょう。こうして着実に自信を積み重ねていける環境と、ご家族の温かなサポートがあれば、きっとまた素敵な「1歩」が見えてくるのだろうなと感じます。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030591
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
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