私が「しんどい」のは、環境?視線?制度?頑張りすぎな心を「見える化」する

ーー発達に特性があるお子さんを育てていると、ご家庭の中だけでなく、社会生活の中でも課題に感じることが多くて、限界に達してしまう親御さんもいらっしゃると思うんです。

山口:発達障害があったり、さまざまな困難がある方にとって「しんどくなる要因」って1つじゃないんですよね。
お子さん自身が、例えば音に敏感さがあって、過ごすのがつらい環境がある場合もあります。道行く人のまなざしでつらく落ち込むということもあるかもしれません。学校や放課後等デイサービスなどでもう少しこんな支援があったらなと感じることもあるかもしれません。さらにはその外側にある制度ーーもう少し発達障害がある人に必要な支援や場所があったならとか。

そういうとき、「わー、もう大変!」となると、理由の分からないしんどさに飲み込まれてしまいやすい。なので、自分がこの社会のどこでどんなしんどさを感じているかを小分けにしてみられたらいいのかなと思います。もちろん、元気がないときにはそういう作業も難しいと思うので、お友だちとか、専門家とか、生成AI相手でもいいので、整理をしてみる。

ーーしんどさの理由を「見える化」して、「ここがしんどいんだな、この場面では助けを求めてみようかな」とひとつずつ解決していくということですね。

山口:そうですね。もちろん、急に法律を変えることはできないし、相手を変えることもできないかもしれないですけど、できる部分でブレイクダウンしていく。

ーーこんな場面なら「療育だな」とか「お医者さんだな」とか「学校に相談だな」って整理したうえで助けを求める。

山口:もちろん、しんどい渦中にいるときは俯瞰したり、判断して行動したりするのは難しいので、少し落ち着いているとき や相談しやすいタイミングで大丈夫です。

相談ってそのプロセスにいろいろあるじゃないですか。その場所に自分が行くなり電話をするなりしないといけないし、そこで困りごとを言語化しないといけないし、もしかしたらネガティブな対応をされるかもしれない。だから、今がそのときじゃないのであれば、急がなくても大丈夫ですし、まずはご自身がいちばん話しやすいなって思い浮かぶ人や場所に相談するのがいいと思います。

ーーまずは話しやすい身近な人からでも相談してみるのもいい、ということですね。身近な人以外ですと、どんなところがあるでしょうか。

山口:一般的な相談先としては、地域の子ども家庭センターとか自治体窓口なんかが良いと思います。どうしてかというと、そういう場所の方たちは地域の資源を知っていたり、公的なサービスや制度について教えてくれたり連携してくれたりすることも多いからです。あとは公的なものといろいろ連携ができたり。サービスについて自分で調べるのは大変だけど、子育てのよろず相談として自治体が設置しているという建て付けではあるので。ただ、相談してもいまひとつだなっていうときもあると思うので、そういうときは民間の相談を使っても良いかもしれません。
どんな窓口であっても、期待するものと違うときってありますよね。そのときはがっかりすると思うんですけど、絶望はせずに「次行こ、次!」っていくつかの窓口に当たってみてほしいなと思います。

ーーありがとうございます。そうした窓口について、発達ナビでも情報をお伝えしていきたいと思います。
親子のための相談LINE|子ども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/oyako-line
こども・子育て(行政相談)|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/soudan_n/kyotsucb_tag03.html
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
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