「人生は徒競走ではなくマラソン」NHK発達障害特集へ寄せられた声

ライター:鈴木悠平
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6/22(水)、NHKの「あさイチ」という番組の特集で、子どもの発達障害について取り上げられました。地上波の朝番組で発達障害が取り上げられたことへの感慨の声、実際に発達障害のある子どもを持つ保護者としてのモヤモヤの声…インターネットに寄せられたさまざまな感想をご紹介します。

NHK「あさイチ」での発達障害特集へのさまざまな反応

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10186003889
6/22(水)、NHKの「あさイチ」という番組の特集で、子どもの発達障害について取り上げられました。

「ほめて伸ばす!子どもの発達障害」と題したコーナーで、人間の行動を、その前後の環境との関係のなかで分析する「応用行動分析(ABA)」を用いた支援が紹介されました。
言葉の発達が遅い、コミュニケーションが取りにくいなど、子どもの発達に悩むご家庭が、ABAをベースにした支援プログラムに取り組む様子を紹介。

スタジオのゲストには、タレントの栗原類さん(ご自身も注意欠陥障害ことを公開)、医師の平岩幹男さんを迎え、ABAによる支援の方法や、発達障害のある子どもとその保護者への支援について議論がなされました。

番組を観た人からは、Twitterや発達ナビのQ&Aコーナーでさまざまな感想が寄せられています。
LITALICO発達ナビQ&A, NHKのあさイチ「ほめて伸ばす!子どもの発達障害」ご感想をお寄せください。  
https://h-navi.jp/qa/questions/32019?community_category=trouble
LITALICO発達ナビQ&A, 今NHKで発達障害の特集をやってました
https://h-navi.jp/qa/questions/32020?community_category=worries
LITALICO発達ナビQ&A, 今日(6月22日)にあさイチ(NHK)で発達障害の子供を特集してました。
https://h-navi.jp/qa/questions/32053?community_category=trouble
 
こうして地上波の朝の番組で、発達障害が大きく取り上げられるようになったことへのポジティブな感想もある一方、実際に発達障害のある子どもを持つ保護者にプレッシャーを与える内容ではなかったかと、不安やモヤモヤの声も少なくありませんでした。


保護者の方々が抱いたモヤモヤの正体はいったいどこにあるのでしょう?

・そもそも応用行動分析(ABA)とはどんなものなのか
・番組の構成・伝え方に対して保護者はどんな思いを抱いたのか

の2点を中心に、みなさんのツイートやQ&Aを紹介しながら考えてみたいと思います。

応用行動分析(ABA)=ほめること、ではない

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11032002119
番組への感想・意見のなかには、応用行動分析(ABA)の目的や方法、その伝え方に対する違和感の声も見られました。
応用行動分析(ABA)は、ただ「ほめる」という手法そのものを意味する言葉ではなく、人間の行動の原因を、周囲の環境との関係のなかで考えて対応していく、理論と実践の体系です。

「ほめる」という行為は、望ましい行動の習得や定着をうながすための手法のひとつに過ぎません。
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応用行動分析では、A(先行事象)+B(行動)+C(後続事象)のセットで行動を分析
出典 : https://h-navi.jp/column/article/632
ABA(応用行動分析)とは? 支援はどこで受けられる?家庭でもできる?【専門家監修】のタイトル画像

ABA(応用行動分析)とは? 支援はどこで受けられる?家庭でもできる?【専門家監修】

 
ですが、番組内でのABAの説明そのものは、褒めて伸ばす手法だけに単純化していたわけではありません。

ほめられることで子どもに自信をつけ、適切な行動を促進すること、そのための適切な環境設定や、子どものスキルに合ったスモールステップの組み方なども含めて、ABAによる支援の枠組みが紹介されていたように思います。

それでは、視聴者が抱いたモヤモヤの震源地はいったいどこにあるのでしょう。

決して一様ではない…発達障害児童の保護者を取り巻く環境とジレンマ

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=28057000047
モヤモヤを抱いた視聴者からは、番組の構成に対して、発達障害のある子どもを持つ保護者がどのような気持ちを抱くだろうか…という観点からの意見が多かったようです。

子どもの進学・進級に関する声

我が家の発達障害児は入学から支援学級ですが、通常学級での授業中他のお子さんがたに何らかの形で迷惑をかけてしまうこともあるし、ずっと通常学級にいることは、本人だけでなく、周りの方にも負担になるという面は否めません。幸い、本人自身も取り出しで支援学級で過ごす時間を楽しみにしています。また、支援学級での縦のつながりもできました。

by 和ママ さん
LITALIO発達ナビQ&A, NHKのあさイチ「ほめて伸ばす!子どもの発達障害」ご感想をお寄せください。
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/32019?community_category=trouble
ABAしたら誰もが伸びる。発達凹の部分を矯正してでも通常学級で頑張る。みたいな流れになるのは親もしんどいし、子供にとってもしんどいかもしれません。支援学級や支援学校が悪ではない。大切なのは子供が生き生きと自分を発揮できる場所であるかどうかだと私は思っています。

by くーさん さん
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出典:https://h-navi.jp/qa/questions/32019?community_category=trouble
そして、発達の凸と凹はセットなので、あまりに凹の克服を頑張り過ぎてしまうと、せっかくの素晴らしい凸も消えてしまいます。だから、苦手克服は、本人が最低限生きるのに困らない、人に「大きな」迷惑をかけない、ギリギリのラインで、工夫しながらできればいいと思っています。

凸も凹もどっちも大事、合わせて一人の子です。

by 楽々かあさん さん
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出典:https://h-navi.jp/qa/questions/32019?community_category=trouble
 
大切なのは、子ども自身が過ごしやすく、自分の力を伸ばしていけるような支援や環境づくり。

子ども一人ひとりの特性や発達、地域の環境に応じてそれぞれのご家庭に葛藤や選択があり、通常学級を目指すことだけが「ゴール」ではない。

さまざまなご家庭の経験や意見が寄せられています。

理想通りにはいかない…保護者の気持ち

「2、3歳までが勝負だからがんばらなきゃ」「がんばれば普通学級に入れる」と、親御さんが追いこまれなければいいけれど……それに、早期に発見・療育できなかった親御さんが複雑な気持ちになるのでは? と、もやもやしながら視聴しました。

私自身、息子が就学してから発達障害に気づきました。早期発見・早期療育をしてやれず、悔やんだこともあります。

けれど、発達障害という言葉すら知らなかったころは、幼稚園で多くの子どもたちとはちがう視点を持ち、変わった行動をする息子のことを「大物になる!」と親バカ全開で見ていました。いま思えば、私は視野が狭くなりがちなので、「発達障害」というフィルターを通さずに息子と接していた時期があってよかった。早期発見されていたら、できないことをできるようにすることに躍起になっていて、親子関係がギスギスしていたかもしれません。

by tukihara さん
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出典:https://h-navi.jp/qa/questions/32019?community_category=trouble
褒めて伸ばす、それができてりゃ今こんなに苦労して悩んでないです。
そして、出ておられた親御さんが羨ましかったです。
あんなに余裕を持って笑顔で接することができて。テレビだからという所もあるのでしょうが、いつもイライラして毎日必死に3人の発達障害兄弟と過ごす自分がダメな母親に思えました。

確かに褒めることは大切だと思います。でも、発達障害についてあまり知らない人が、この放送を見て「褒めてあげればできるようになるんだ」と誤解してしまわないか心配です。

変な言い方ですが、キレイな部分ばかりではなく困難な所や苦労している部分も見せて欲しかったです。

by シマナミ さん
LITALIO発達ナビQ&A, NHKのあさイチ「ほめて伸ばす!子どもの発達障害」ご感想をお寄せください。
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/32019?community_category=trouble
 
早期支援の重要性は分かるけれど、何もかも完璧にはできない。

お金や時間、距離や場所、家族やご近所づきあい…さまざまな制約のなかで必死にふんばる保護者の方々。

成功例を取り上げるだけでなく、保護者が抱える苦労やジレンマにも寄り添ってほしい、
子どもへの支援だけでなく、保護者へのケアについてもスポットを当ててほしい、

そんな声も寄せられていました。

「人生は徒競走ではなくマラソン」出来ることに目を向けられるように

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栗原類さんのお母さんの言葉

自身もADD(注意欠陥障害)と呼ばれる発達障害であることを明かしている、ゲストの栗原類さん。お母さんがよく言っていたという言葉をスタジオで紹介しました。

「人生は徒競走ではなくて、長いマラソンなんだから、スタートダッシュでいきなり息切れしてリタイアするよりは、長く続けることが重要だよ」
mixiニュース, 発達障害の栗原類を育てた母の言葉に感動 「人生は長いマラソン。続けることが重要だよ」
https://news.mixi.jp/view_news.pl?id=4057008&media_id=210
皆さん、それぞれに本当に親子で頑張っているのですよね。
周りが何と思おうが、我が子に必要だと思う事をしている、基本的にそれでいいのだと思います。
子どもの事を考えて療育機関に通わない、そういう方々も含めて。
我が家もそうで、
子どもの1歳代から就学前までの療育は、当時死に物狂いでいろんな扉を叩き続けてやっと獲得した大切な学びでした。
当時は本当に何もなかった。情報も全て。
ですからやっとの思いで探した療育の場で受け入れてもらえたのは、本当に救いの手でした。

by hina さん
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出典:https://h-navi.jp/qa/questions/32019?community_category=trouble
子どもを伸ばそうとがんばるあまり、保護者の方々がすり切れてしまっては元も子もありません。

自分のことも大切にしながら、子どものために続けられることを少しずつ。

できないことではなく、できること、できたことに目を向ける。

「人生は徒競走ではなくマラソン」

この言葉は、息子の栗原さんにだけでなく、お母さんご自身にも向けられていた言葉なのかもしれません。

社会を変えていくための長いマラソン

今回の「あさイチ」での発達障害特集。

視聴者のなかには、発達障害やその支援になじみのない方もいれば、
実際に発達障害のある子どもを育てるなかで、さまざまなご経験をされてきた保護者の方々もおられました。

番組の感想の中には、ポジティブなものばかりではなく、上記のようにモヤモヤを表明する声も少なくありませんでした。
 

「成功例を挙げられると、うまくできなかった自分が責められているようで辛い」

そんな悲痛な声が挙がるのは、

これまでの日本社会には、発達障害のある子どもやその保護者、大人の当事者を支える社会資源がまだまだ乏しかったことの象徴なのかもしれません。

これらは決して一度に解決されるものではありません。

ですが、今後もさまざまな場で、発達障害のある人やそのご家庭に寄り添った議論と実践が重ねられることを願いますし、私自身もその一員でありたいと思います。
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