「人生は徒競走ではなくマラソン」NHK発達障害特集へ寄せられた声
6/22(水)、NHKの「あさイチ」という番組の特集で、子どもの発達障害について取り上げられました。地上波の朝番組で発達障害が取り上げられたことへの感慨の声、実際に発達障害のある子どもを持つ保護者としてのモヤモヤの声…インターネットに寄せられたさまざまな感想をご紹介します。
NHK「あさイチ」での発達障害特集へのさまざまな反応
「ほめて伸ばす!子どもの発達障害」と題したコーナーで、人間の行動を、その前後の環境との関係のなかで分析する「応用行動分析(ABA)」を用いた支援が紹介されました。
スタジオのゲストには、タレントの栗原類さん(ご自身も注意欠陥障害ことを公開)、医師の平岩幹男さんを迎え、ABAによる支援の方法や、発達障害のある子どもとその保護者への支援について議論がなされました。
番組を観た人からは、Twitterや発達ナビのQ&Aコーナーでさまざまな感想が寄せられています。
夜中や休みの日の昼間とか、あまり視聴者のいない時間帯でやってた発達障害についての詳しい内容の番組を、この朝の時間帯に放送出来るようになったんだなぁと感慨深い。 #あさイチ
— ちきーた (@chquita_) June 21, 2016
今、あさイチで発達障害を特集してるけど
— wasuregusa (@baba_savarin) June 22, 2016
こういう内容を中学高校の保健体育などで扱って欲しい。
発達障害への理解とともに
「ひと」を深く知る根本になると思う。
障害の有無は、「有無」ではなく程度や度合いであって、
同じ土台に育つ「木」の伸び方の自由さの違いだと思う。#あさイチ
ABAの結果、支援学級を勧められていた子供が通常学級に!
— (RAVEN)開梱設置までが引越です! (@6BT9) June 22, 2016
…って”成功例”は他の家庭に与えるプレッシャーが大きそうで心配になる。
テクニック的にはすごいいいこといっぱい入っていたのに・・・普通を目指しているプレッシャーが伝わってすっごい惜しい感じでした。 #あさイチ
— なないお (@Nanaio627) June 22, 2016
家庭内療育が有効なのはよくわかる。でもどう頑張っても出来ない親も存在する。そういう保護者は、つぶれていったり、子供との関わり自体を諦めてしまう。保護者にも、当事者と同等レベルの支援が必要な訳で。
— ひいろ (@hii1701) June 22, 2016
あさイチの子供の発達障害、普通にさせるためにやっているように見えたなど賛否両論なようだけど私は「できたことに目を向けた特集」で良かったと思う。ネガティブな情報は当事者には共感を得られるがそうでない人には分かりにくいと思うからだ。具体的な支援のやり方もありまたやって欲しいと思う。
— ころろ@発達障害さん向け固定ツイ中 (@kororo_mt) June 22, 2016
こうして地上波の朝の番組で、発達障害が大きく取り上げられるようになったことへのポジティブな感想もある一方、実際に発達障害のある子どもを持つ保護者にプレッシャーを与える内容ではなかったかと、不安やモヤモヤの声も少なくありませんでした。
保護者の方々が抱いたモヤモヤの正体はいったいどこにあるのでしょう?
・そもそも応用行動分析(ABA)とはどんなものなのか
・番組の構成・伝え方に対して保護者はどんな思いを抱いたのか
の2点を中心に、みなさんのツイートやQ&Aを紹介しながら考えてみたいと思います。
応用行動分析(ABA)=ほめること、ではない
あさイチのABA特集を観たら、息苦しさを感じる親は多いだろう。親とセラピストが子どもを褒める場面をどれだけ意図的に作れるのかで子どもの発達が決まる。そして、発達しなければ、社会適応できない。もともと「ABA」の方法自体にそんなメッセージはないのだけれど。そう受け取られる。
— lessor (@lessor_tw) June 24, 2016
「ABAセラピー」と「ABA」って分けてほしいよな。
— 大久保 賢一 (@kenichi_ohkubo) June 22, 2016
「ほめる」という行為は、望ましい行動の習得や定着をうながすための手法のひとつに過ぎません。
ABA(応用行動分析)とは? 支援はどこで受けられる?家庭でもできる?【専門家監修】
ABAで伝わって欲しいのは褒めることが大事ってことじゃなくて、行動を三項随伴性で見る視点を持つということ大事ってところ。
— 尾西洋平(Yohei Onishi) (@yohei1115) June 22, 2016
ABAの効果を行動の改善に限ってみてしまうとしんどいよな。むしろABA的なものを真っ当に育児に導入すると、育児観、人生観のパラダイムシフトが起こって、停滞が停滞に見えなくなるのが大きい気がするんだがな。ゴール設定も含めてABAだと思うんだがなあ。
— afcp (@afcp_01) June 22, 2016
「子どもの行動に困ったときは、その『前』と『後』に注目して、環境や接し方を変えてみましょう。それがABAです」っていう番組づくりだったならば、ここまでみんなざわざわしていなかっただろうに。
— lessor (@lessor_tw) June 24, 2016
ですが、番組内でのABAの説明そのものは、褒めて伸ばす手法だけに単純化していたわけではありません。
ほめられることで子どもに自信をつけ、適切な行動を促進すること、そのための適切な環境設定や、子どものスキルに合ったスモールステップの組み方なども含めて、ABAによる支援の枠組みが紹介されていたように思います。
それでは、視聴者が抱いたモヤモヤの震源地はいったいどこにあるのでしょう。
決して一様ではない…発達障害児童の保護者を取り巻く環境とジレンマ
子どもの進学・進級に関する声
皆の意見もザーッと読んで、多分テレビとしてはABAと言う手法を取っ掛かりにこういう子達に発達を促していく方法がありますよ~、という事を伝えたかったのかもしれないけど反対に「こういう子達は特別な訓練をしないと、何も出来ない子になっちゃいます。目指せ、普通級!」に見えてしまって残念。
— あざこ (@azako0310) June 22, 2016
少なくとも言えることは「親が頑張れば発達障害児を通常学級で頑張らせることができる」という流れになってたのは最悪、と思う。そんな簡単な話じゃないよね… #あさイチ
— イシゲスズコ (@suminotiger) June 22, 2016
あさイチ見たけどモヤモヤするなぁ
— るるーら (@rurura_680) June 22, 2016
発達障害の子を社会に合わせさせるんじゃなくて、
社会も発達障害の人が、生きやすくなるように
変わっていけばいいと思うんだけどなあ
発達障害の人が生きにくい部分は変わらないまま
社会に合わせるように訓練するって
なんか気の毒だわ
我が家の発達障害児は入学から支援学級ですが、通常学級での授業中他のお子さんがたに何らかの形で迷惑をかけてしまうこともあるし、ずっと通常学級にいることは、本人だけでなく、周りの方にも負担になるという面は否めません。幸い、本人自身も取り出しで支援学級で過ごす時間を楽しみにしています。また、支援学級での縦のつながりもできました。
by 和ママ さん
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ABAしたら誰もが伸びる。発達凹の部分を矯正してでも通常学級で頑張る。みたいな流れになるのは親もしんどいし、子供にとってもしんどいかもしれません。支援学級や支援学校が悪ではない。大切なのは子供が生き生きと自分を発揮できる場所であるかどうかだと私は思っています。
by くーさん さん
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そして、発達の凸と凹はセットなので、あまりに凹の克服を頑張り過ぎてしまうと、せっかくの素晴らしい凸も消えてしまいます。だから、苦手克服は、本人が最低限生きるのに困らない、人に「大きな」迷惑をかけない、ギリギリのラインで、工夫しながらできればいいと思っています。
凸も凹もどっちも大事、合わせて一人の子です。
by 楽々かあさん さん
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大切なのは、子ども自身が過ごしやすく、自分の力を伸ばしていけるような支援や環境づくり。
子ども一人ひとりの特性や発達、地域の環境に応じてそれぞれのご家庭に葛藤や選択があり、通常学級を目指すことだけが「ゴール」ではない。
さまざまなご家庭の経験や意見が寄せられています。
理想通りにはいかない…保護者の気持ち
「3歳までが勝負」という言葉が、それをすぎた子供たちを抱える親にとってどれほど残酷なものか、想定していないとは思えない。それをあえて放送したのだ。
— なないお (@Nanaio627) June 24, 2016
分かるわ〜。番組に出ている親御さんがものすごく立派に見える。理想通り出来ないことの方が多いよね。RT @YuheiSUZUKI: 番組へのお便り「子どもの自己肯定感を高めるといいますが、私の自己肯定感がボロボロです」と、ADHDのある子どもを持つ親の悩み。#あさイチ #発達障害
— yu_add_yu (@yu_add_yu) June 22, 2016
「2、3歳までが勝負だからがんばらなきゃ」「がんばれば普通学級に入れる」と、親御さんが追いこまれなければいいけれど……それに、早期に発見・療育できなかった親御さんが複雑な気持ちになるのでは? と、もやもやしながら視聴しました。
私自身、息子が就学してから発達障害に気づきました。早期発見・早期療育をしてやれず、悔やんだこともあります。
けれど、発達障害という言葉すら知らなかったころは、幼稚園で多くの子どもたちとはちがう視点を持ち、変わった行動をする息子のことを「大物になる!」と親バカ全開で見ていました。いま思えば、私は視野が狭くなりがちなので、「発達障害」というフィルターを通さずに息子と接していた時期があってよかった。早期発見されていたら、できないことをできるようにすることに躍起になっていて、親子関係がギスギスしていたかもしれません。
by tukihara さん
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褒めて伸ばす、それができてりゃ今こんなに苦労して悩んでないです。
そして、出ておられた親御さんが羨ましかったです。
あんなに余裕を持って笑顔で接することができて。テレビだからという所もあるのでしょうが、いつもイライラして毎日必死に3人の発達障害兄弟と過ごす自分がダメな母親に思えました。
確かに褒めることは大切だと思います。でも、発達障害についてあまり知らない人が、この放送を見て「褒めてあげればできるようになるんだ」と誤解してしまわないか心配です。
変な言い方ですが、キレイな部分ばかりではなく困難な所や苦労している部分も見せて欲しかったです。
by シマナミ さん
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早期支援の重要性は分かるけれど、何もかも完璧にはできない。
お金や時間、距離や場所、家族やご近所づきあい…さまざまな制約のなかで必死にふんばる保護者の方々。
成功例を取り上げるだけでなく、保護者が抱える苦労やジレンマにも寄り添ってほしい、
子どもへの支援だけでなく、保護者へのケアについてもスポットを当ててほしい、
そんな声も寄せられていました。
「人生は徒競走ではなくマラソン」出来ることに目を向けられるように
栗原類さんのお母さんの言葉
「人生は徒競走ではなくて、長いマラソンなんだから、スタートダッシュでいきなり息切れしてリタイアするよりは、長く続けることが重要だよ」
栗原類さんがお母様の話として、長く良い状態を保つために自分の生き方も大事にしないといけないと自分を祖母に預けて自分の時間を作る努力をされていた、と話していらした。親の努力、親の愛、親の頑張り、が強調される特集の息苦しさがそこでちょっと緩んだ気がする。 #あさイチ
— イシゲスズコ (@suminotiger) June 22, 2016
ここにダイス先生の名言を叫びたい。「3割出来ればOK!」ですよ。7割ダメでもOKですよ。保護者も子供も1割でも出来た自分を褒めてね!! #あさイチ
— なないお (@Nanaio627) June 22, 2016
皆さん、それぞれに本当に親子で頑張っているのですよね。
周りが何と思おうが、我が子に必要だと思う事をしている、基本的にそれでいいのだと思います。
子どもの事を考えて療育機関に通わない、そういう方々も含めて。
我が家もそうで、
子どもの1歳代から就学前までの療育は、当時死に物狂いでいろんな扉を叩き続けてやっと獲得した大切な学びでした。
当時は本当に何もなかった。情報も全て。
ですからやっとの思いで探した療育の場で受け入れてもらえたのは、本当に救いの手でした。
by hina さん
LITALIO発達ナビQ&A, NHKのあさイチ「ほめて伸ばす!子どもの発達障害」ご感想をお寄せください。
自分のことも大切にしながら、子どものために続けられることを少しずつ。
できないことではなく、できること、できたことに目を向ける。
「人生は徒競走ではなくマラソン」
この言葉は、息子の栗原さんにだけでなく、お母さんご自身にも向けられていた言葉なのかもしれません。
社会を変えていくための長いマラソン
視聴者のなかには、発達障害やその支援になじみのない方もいれば、
実際に発達障害のある子どもを育てるなかで、さまざまなご経験をされてきた保護者の方々もおられました。
番組の感想の中には、ポジティブなものばかりではなく、上記のようにモヤモヤを表明する声も少なくありませんでした。
「成功例を挙げられると、うまくできなかった自分が責められているようで辛い」
そんな悲痛な声が挙がるのは、
これまでの日本社会には、発達障害のある子どもやその保護者、大人の当事者を支える社会資源がまだまだ乏しかったことの象徴なのかもしれません。
これらは決して一度に解決されるものではありません。
ですが、今後もさまざまな場で、発達障害のある人やそのご家庭に寄り添った議論と実践が重ねられることを願いますし、私自身もその一員でありたいと思います。
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