障害を理由とする差別の解消に向けた取り組み
障害者差別解消法では、各分野において障害を理由とする差別の解消に向けて、「対応要領」と「対応指針」というものを策定することが定められています。
対応要領
国や地方自治体などの行政機関は、それぞれの職員が適切に対応できるために必要な要領を定めるものとされています。これを「対応要領」と言います。
対応要領には、不当な差別的取扱いや合理的配慮の具体例が盛り込まれており、行政機関などの職員が遵守すべきものとして定められています。
対応要領には、不当な差別的取扱いや合理的配慮の具体例が盛り込まれており、行政機関などの職員が遵守すべきものとして定められています。
対応指針
「対応要領」が行政機関などの職員に対しての取り決めであるのに対して、「対応指針」は会社やお店などの事業者に向けられたものです。事業者を所管する国の行政機関によって定められています。主に各省庁ごとに作成されており、不当な差別的取扱いや合理的配慮について詳しく書かれています。
各事業者はこの対応指針を参考に、自主的に差別解消への取り組みを進めていくことが期待されています。法律に反することを何度も行う、もしくは自主的に改善する様子が見受けられない場合には国に報告を求めたり、助言・指導・勧告が行われることがあります。
各事業者はこの対応指針を参考に、自主的に差別解消への取り組みを進めていくことが期待されています。法律に反することを何度も行う、もしくは自主的に改善する様子が見受けられない場合には国に報告を求めたり、助言・指導・勧告が行われることがあります。
対応指針について、今回はこども家庭庁と文部科学省を例に、具体的な内容を紹介します。
子ども家庭庁
こども家庭庁は、児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所やこども園など、こども家庭庁が管轄する事業者に向けて、対応指針を取りまとめました。内容の一部を紹介します。
◇不当な差別的取扱いの例
・人的資源や設備が整っているにもかかわらず、障害があることを理由に教育や保育などの提供を拒否する、あるいは提供するにあたり、正当な理由のない条件を付ける
・教育や保育の提供の際に、障害があることを理由にお試し期間を設けたり、ほかの利用者の同意を求めるなど、ほかの利用者にはない手順を求める
・障害があることを理由に正当な理由なく、日々の活動や行事への参加を制限する、年齢相当ではないクラスに所属させるなど、ほかの利用者とは違う対応をとる
◇合理的配慮の例
・聴覚過敏のある子どものために、机や椅子の脚に緩衝材を付けて音の刺激を減らす
・視覚的な情報が多いと集中しにくい子どものために、掲示物の情報量を減らす
・移動に困難さがある子どものために、通所のための駐車場を確保する、あるいは保育室をアクセスしやすい場所に変更する
・子ども本人や保護者の希望、子どもの特性などを踏まえて、入園の選考を別室で行う
◇不当な差別的取扱いの例
・人的資源や設備が整っているにもかかわらず、障害があることを理由に教育や保育などの提供を拒否する、あるいは提供するにあたり、正当な理由のない条件を付ける
・教育や保育の提供の際に、障害があることを理由にお試し期間を設けたり、ほかの利用者の同意を求めるなど、ほかの利用者にはない手順を求める
・障害があることを理由に正当な理由なく、日々の活動や行事への参加を制限する、年齢相当ではないクラスに所属させるなど、ほかの利用者とは違う対応をとる
◇合理的配慮の例
・聴覚過敏のある子どものために、机や椅子の脚に緩衝材を付けて音の刺激を減らす
・視覚的な情報が多いと集中しにくい子どものために、掲示物の情報量を減らす
・移動に困難さがある子どものために、通所のための駐車場を確保する、あるいは保育室をアクセスしやすい場所に変更する
・子ども本人や保護者の希望、子どもの特性などを踏まえて、入園の選考を別室で行う
文部科学省
文部科学省は主に私立学校を対象に、対応指針を取りまとめました。2024年4月1日から、一部内容を改正したものが施行されています。内容の一部を紹介します。
◇不当な差別的取扱いの例
・一律に受験や入学、その他の学校生活の参加を拒む、または、拒まない代わりの条件を、正当な理由なく求める
・試験などにおいて合理的配慮の提供を受けた場合に、それを理由として本人を評価の対象から外したり、評価に差を付けたりする
◇合理的配慮の例
・施設の敷地内において、車いす利用者のためにキャスター上げなどの補助をしたり、段差に携帯スロープを渡したりする
・疲れを感じやすい人から休憩の申し出があったときは、別室の確保が困難である場合は、本人に理由を説明をした上で臨時の休憩スペースを設ける
◇不当な差別的取扱いの例
・一律に受験や入学、その他の学校生活の参加を拒む、または、拒まない代わりの条件を、正当な理由なく求める
・試験などにおいて合理的配慮の提供を受けた場合に、それを理由として本人を評価の対象から外したり、評価に差を付けたりする
◇合理的配慮の例
・施設の敷地内において、車いす利用者のためにキャスター上げなどの補助をしたり、段差に携帯スロープを渡したりする
・疲れを感じやすい人から休憩の申し出があったときは、別室の確保が困難である場合は、本人に理由を説明をした上で臨時の休憩スペースを設ける
障害者差別解消法に関する相談先
障害者差別解消法では、障害者差別に対応する機関を新たに設置することは定められていません。基本的には、今すでに存在する行政の相談機関などを充実させ、活用することになっています。
具体的には、障害のある人からの相談については、内容に応じて
・各自治体の相談窓口
・法務局、地方法務局
・人権擁護委員による人権相談
など、さまざまな制度により対応されています。
また、地域においてもすでにある期間が相談や紛争解決を進められるよう、地域協議会を組織することもあります。地域全体で主体的に障害のある人への差別の解消に向けた取り組みが進められることが期待されています。
具体的には、障害のある人からの相談については、内容に応じて
・各自治体の相談窓口
・法務局、地方法務局
・人権擁護委員による人権相談
など、さまざまな制度により対応されています。
また、地域においてもすでにある期間が相談や紛争解決を進められるよう、地域協議会を組織することもあります。地域全体で主体的に障害のある人への差別の解消に向けた取り組みが進められることが期待されています。
迷ったら「つなぐ窓口」への相談も
内閣府は2023年10月から、障害のある人への差別に関する相談があったときに、自治体などの適切な窓口を紹介する「つなぐ窓口」の運用を開始しました。この窓口は2025年3月下旬までの試行運用となっています(2024年8月現在)。
・どこに相談したらいいか分からない
・(障害がある立場から)合理的配慮を申し出たいが、どうすればいいか分からない
・(事業者の立場から)合理的配慮の提供をどうすればいいか分からない
という場合は、「つなぐ窓口」の利用も選択肢になるでしょう。
・どこに相談したらいいか分からない
・(障害がある立場から)合理的配慮を申し出たいが、どうすればいいか分からない
・(事業者の立場から)合理的配慮の提供をどうすればいいか分からない
という場合は、「つなぐ窓口」の利用も選択肢になるでしょう。
まとめ
障害者差別解消法とは、障害のある人もない人も互いにその人らしさを認め合いながら共に生きる「共生社会」の実現を目指し、障害の「社会モデル」の考え方を基に制定されました。2024年4月からの改正法では、民間事業者も「合理的配慮の提供」が義務化されました。
合理的配慮は、社会が障害のある人がいることを前提につくられていないために生じる、社会的な障壁を解消するためのものです。一人ひとりの意思を尊重しながら、その人の特徴や場面に応じて合理的配慮を検討し、対話をしていくことが大切です。
障害の「社会モデル」や合理的配慮について、一人ひとりが考えていくことが共生社会の実現にもつながるでしょう。
合理的配慮は、社会が障害のある人がいることを前提につくられていないために生じる、社会的な障壁を解消するためのものです。一人ひとりの意思を尊重しながら、その人の特徴や場面に応じて合理的配慮を検討し、対話をしていくことが大切です。
障害の「社会モデル」や合理的配慮について、一人ひとりが考えていくことが共生社会の実現にもつながるでしょう。
参考資料
合理的配慮、差別的取扱いとは何か ―障害者差別解消法・雇用促進法の使い方
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これならわかる〈スッキリ図解〉障害者差別解消法
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